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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第三章 少女魔法使い 南大陸編

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第二十六話 魔王軍

 魔城島(まじょうとう)北峰大陸(ほくほうたいりく)の更に上に位置する島。


 そこには大量の邪族が住んでいる。

 君級レベルの戦士であっても考えなしに立ち入れば生きては帰れないだろう。


 三界の中で最も古株の魔王。

 人々からは悪の象徴としても見られている。


 魔王は400年以上音沙汰がない。

 それ故に死亡説などが多く語られている。

 だが魔王の側近と呼ばれる知性を持った魔族達が、

 邪族として今も存在している。


 魔王の右腕、左腕と比喩される二名を筆頭に幹部とも言える者達が五名。

 18年前に幹部の一名が剣塵に討伐されている。


 魔王の側近は以下の七名。


 ーーーーーーーーーーーーー


 憤怒のドラシル・メドメアス

 色欲のエルドレ・メラデウス


 暴食のチラテラ・ベゼドール

 怠惰のフェゴ・ガルステッド

 嫉妬のレアルト・デルデアン

 強欲のユーラル・マルモン

 傲慢のシルティ・ユレイデット


 ーーーーーーーーーーーーーー

 暴食のチラテラ・ベゼドールは死亡している。


 上位の二名は全く情報がなく。

 その戦い方や何属性の魔法を扱うのか

 何の魔法の種類を得意とするのか

 それら全てがわかっていない。


 わかることと言えば、三界の虹帝と剣塵が正面から戦えば、若干憤怒と色欲に軍配が上がる。


 魔城島が未だ邪族の温床となっているのは、この六名の魔族がいるからだろう。


 魔城島には黒い城が存在している。

 その最上階にて魔王側近達は定期的に集まり、会議や報告などを行う。


 この日、黒い城に魔王側近が集まっていた。


「……エルドレはまだなのか?」

「しらなぁい、またどっかで男引っ掛けてるんだよ」


 そう言いながらも机に突っ伏すのは、熊の耳を生やし赤い角を一本生やす子供の魔獣。

 怠惰のフェゴ・ガルステッド。

 容姿は獣人と言えるもので、茶色の髪の毛と真っ黒な瞳、そして常にダルそうにしている。


「全く自己中な奴だ」

「あんたが言えないでしょ、いつも遅刻するのはあんたかエルドレだけさ」

「……我が遅れるのは良いのだ!」

「意味わかんね〜」


 白い虎の顔を持つのは魔族と獣族のハーフ。

 傲慢のシルティ・ユレイデット。


 そして舌が蛇のように常に口から出ていること以外、普通の女性の人族に見える魔人。

 嫉妬のレアルト・デルデアン。


 二人はいつもこのような会話をする。


「ドラシル様ー、チラテラはー?」

「奴は18年前に死んだぞ」

「えー?仲が良かったのに……」

「相変わらず、口先だけだな」


 ドラシルに話しかけたのは、

 狐の耳を生やし尻尾を多く生やす。

 人族と魔族(妖狐(ようこ)族)のハーフ。

 強欲のユーラル・マルモン。


 黄金の瞳に艶のある毛を持ち少女ほどの姿である。


「ごめーん!遅れた!」


 窓から翼を広げて降りてくるのは、

 色欲のエルドレ・メラデウス。

 彼は悪魔のような角と翼を持ち、

 尻尾として(さそり)のようなものを生やしている。

 それ以外は好青年という感じだ。


 ドラシルは慣れたようにエルドレへと言う。


「オマエはいつも遅れる」

「まぁ僕ちゃん忙しいし?」


 それにドラシルが嫌そうな顔で言う。


「気色の悪い趣味を辞めれば暇になるぞ」

「それは無理だよ」


 そうしてその場に六人の魔王側近が揃った。


「んで、今日は何会議?」


 エルドレが頭の後ろで腕を組みながらそう言う。


「会議というよりはただの報告、魔理(まり)様からの伝達だ」


 ドラシルがそう言えば、少し興奮気味にシルティが大声で反応した。


「遂に全面戦争か!!」

「虎がデカい声出すとうるさい、黙って」

「そこまで言わんでも……」


 レアルトがそう言うとシルティは少し落ち込みながらも口を閉じる。


 ドラシルは一息間を置くと内容を話し始めた。


「″天理(てんり)″の欠片を宿す者が現れた。

 見つけ次第殺してここに持って来い、と……」


「天理ってあの天理ー?」


 ユーラルがそう言うとドラシルが頷く。


「それでその者だが、我は一度会ってる」

「え?男?男?」


 ドラシルがそう言った瞬間、エルドレが興奮気味にそう聞くとフェゴが引きながらーー


「はは、キショいなぁ」


 そう言われてエルドレは心外という顔だ。


「エルドレの望みに反して女だ。白髪で真っ赤な瞳、魔法使いとしての強さはまだまだ未熟」


 その発言に一気に気分が悪くなるエルドレ。


「えー……女か、じゃあ良いやすぐ殺そー!」


 ドラシルがその宣言に釘を刺す。


「下手に戦いを仕掛ければ死ぬぞ」

「えぇ?いや流石に負けるわけないじゃん。相手は未熟な魔法使いなんでしょ?」


 ドラシルが言う。


「魔理様が言うにはその者が扱う魔力は我らにとって非常に毒らしい。つまり少しでも隙を見せれば死ぬ」


「だったら攻撃かわせば良いじゃん」

「その者の近くには常に将級魔法使いがいる。前も出会ったがあの程度の強さなら、我たちであろうと隙の一つや二つ生まれる」

「うぇーめんどくさ」


 エルドレはそう言って机に顔をつけて力を抜くと、

 シルティが立ち上がり提案する。


「ならば我ら全員で殺しに向かえば良いではないか」


 それにレアルトが呆れた目で否定する。


「あんたバカなの?

 今いる君級魔法使いは七名、君級剣士も五名。

 私たちが一斉に移動すればそいつらがすぐにやって来て、それこそ全面戦争だよ」


「全面戦争か!!いいなぁ!そうしよう!!」

「……魔理様が全面戦争避けてるんだから、起こしたら反逆ってことになるわよ」

「ならしないでおこう……」


 レアルトはため息をつくとドラシルに向けて言う。


「誰か一人がそいつを殺しに行く、

 こうでしょドラシル様?」


 ドラシルは頷く。


「それで誰が行くか決めようと思っていてな」


 ドラシルがそう言えば真っ先に発言するのはエルドレ、非常に興味がないと言った顔で拒否する。


「僕ちゃんはパス〜、忙しいんだもん」

「ならば我が行こう」


 そう言うは傲慢のシルティ・ユレイデット。


「……ならオマエに任せよう。無理に殺すことはしなくていい、オマエが死ぬ方が困る」

「だははは!!我が死ぬ?そんなことあるはずがあるまい、全員まとめて首だけ持って帰ろうではないか」


「傲慢だな」


 ドラシルがそう言えばシルティは大笑いした。




 ーーーーーーーーーー


 虹剣(こうけん)1683年12月3日。


 フラメナは宿のベランダに出て外を眺めていた。


 そろそろ部屋に戻ろうと思った時に、

 フラメナの後ろからルルスが声をかける。


「景色堪能中です~?」

「まぁそんなところよ」


 ルルスはフラメナの隣に立つと話し始める。


「……フラメナさん変わりましたね~」

「……どこがよ」


 日差しが街を照らす中、ルルスは正面に見える海を眺めながら言う。


「フラメナさんは~無理してますよね~」

「別にしてないわよ……」

「うへぇ~?それで無理してないなら怪物ですね~」

「なによその言い方……」


 ルルスはニコニコしながらも、少し落ち着いたように話し始めた。


「自分は昔、村を追い出されて思ったんです~。自分がこれから生きていくのに何の意味があるのかって」

「……ルルスもそんなこと考えるのね」


「自分はそこで生き方を決めたんですよぉ~。

 自分のために生きる。

 少しくらい自己中じゃないと人生、誰かに消費されて終わるだけなんですよ~」

「……そう」


 ルルスはフラメナにニコニコとした顔を見せて言う。


「フラメナさんは~自分のために生きてくださいよ~。フラメナさんの魔法が嫌われたって恐れられたってそれは他人の感情。

 フラメナさんは何のために魔法を使うんです?」


 何のため?

 ……そう言えばなんで魔法を使うんだろう。

 あれから結局目標は決まってない。

 なんでだろう……人を助けるため?


「……人を、助けたいから」


「ダメですね~

 フラメナさんは他人のために動いてます~」


「じゃあ、一体何が答えなのよ」


「……別に答えなんてないですよ〜

 フラメナさんはなんで周りの視線を気にするんです?フラメナさんの魔法を一番拒絶してるのはフラメナさん自身ですよ~。

 決めるのはフラメナさんです」


 昔っから、否定され続けた私の魔法……

 最近になって認めてくれる何人かに出会った。

 私は……


「……確かに、私は自分の魔法が変だと思ってた。

 そうなのね……結局一番嫌ってたのは私……」


 否定されるうちに誰も否定してなくても、

 私が否定するようになってた。

 なんだか……よくわからないわね。


「自分が十二歳の時も周りからの視線は痛かったです。自分は結局追い出されましたが……フラメナさんは違う。

 認めてくれる人が少なくともいるんです~

 そう深く考えることないんですよ〜」


 ……南大陸に帰って来てから私は考えすぎなのかも

 今までは考えなかったことばっかり考えてる。

 考えすぎは私には向いてないのかも……


 クランツのように私は賢くない。

 考えれば考えるほど、うじうじしちゃう。

 ……昔みたいに、がむしゃらに……


 いつしか他人を気にしすぎたのね。


 ……もう誰も失いたくない。

 私はもう帰る場所を奪われたくない。


 昔の私もこんな思いだったのかな?

 言葉に表せないだけで、ゼーレ王国を守りたかったのかもしれない。


「ありがとうルルス、目標見つかったわ」

「聞いてもいいですか~?」


 もう帰る場所を奪われないために……あの爆発を押し返せるくらい強い魔法使いに……


 なれなかったとしてもなろうとしてやるわ……!


「私の帰ってくる場所であるここを守るために、

 誰よりも強い魔法使いになってみせるわ!」


「……うへへ~なってくださいよ~」


 ルルスはそれを聞いて嬉しそうにそう言う。


 フラメナの瞳にようやく輝きが戻った。



 魔城島、海辺にてーーー


「さぁて南大陸、何ヶ月かかるかわからんな。

 一体どんな有様になっているんだろうか」


 傲慢のシルティ・ユレイデットは小さな船を担ぎ海を眺めていた。

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