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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第十九章 純白魔法使い 完結編

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エピローグ 後日談

今回で完結です。

『』内の文字はサブタイトルでございます。

 『最強の愛弟子』


「クランツ先生?」

「あっ……はい、なんでしょう?」


 クライゼル大学のライメの教授室にて、

 クランツはライメの相談を聞いていた。


「もしかして体調とか……疲れたりしてます?」


 ライメがボーッとしていたクランツを見て、

 心配するようにそう言ってきた。


「い、いえ……特に疲れたりはしてませんよ。

 この歳になると、ふと昔のことを思い出すのです」

「昔のこと……?」


 ライメはクランツの過去を知らない。

 それ故に少し気になった。


「わたくしは元々、南大陸ゼーレ王国のガレイルで、

 五星級パーティーに所属してまして……

 中々に強く有名なパーティーでした」

「それは聞いたことあるんですけど……

 その前とかって何してたんです?」


 クランツは古びた手帳を取り出した。


「わたくしはガレイルに入る前、

 全大陸を旅してたんですよ」

「フラメナと同じ旅をしてたんですね……」


 クランツは頷きながらも手帳を開く。


「旅のメンバーは七人で皆有名ではありませんが、

 わたくしにとっては今でも色濃く残る大切な人たちなんですよ」


 クランツの表情は少しだけ寂しそうだった。

 その微笑みの裏にある思いをクランツは、

 ライメへと吐露し、自身の過去を話し続ける。


「今はもう全員亡くなってるんですがね……

 皆戦士として働き……亡くなっていきました。

 わたくしがガレイルの時に所属したパーティーメンバーたちも、同じように……もう皆に会えません」


 クランツは少し表情を明るくし、

 ライメに自身の思いを伝える。


「ライメ様たちが旅から無事に戻ってきた際、

 わたくしは心底嬉しかったんですよ。

 大怪我もなく、変わらずいい表情をしてる貴方たちを見て感動した……あの時の感動は今も覚えてます。


 ライメ様もフラメナ様も、わたくしの自慢の教え子です。生きていてくれてありがとうございます」


 クランツがそう言うと、ライメは少し嬉しそうに表情が和らぎ、部屋には二人の小さな笑いがこだましていた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 『バカな二人』


「いらっしゃ〜い……ってまたあんた?」


 エルレット・ミシカゴール。

 歳は二十八歳で、ゼーレ王国で酒場を経営している女店主だ。元々戦士であり帥級とされているが、本来の実力は将級ほどと言われている。


 あだ名はエルトレ。

 気の強い店主で街のみんなから人気だ。


「よっ、仕事帰りだし飯も貰おうと思ってな」


 バトアバ・ハマドユーラ。

 騎士団に所属する帥級の剣士で、

 エルトレと仲が良い二十七歳男性である。


「毎日来てたら金なくなるよ」

「そうならないために安いメニューあるんだろ?」


 ニヤニヤしながらそう言う男に、エルトレは予測するようにその男が好きな酒を出す。


「べつにあんたのために安いメニュー作ってるわけじゃないのよ」

「へへ、またまた〜」


 店内は閉店間際なのもあり、

 二人きりであった。


「……エルトレはさ、なんで酒場やってんの」

「好きだから。あたしは、こう言う場所で働いて死んでいきたいからさ」


 それを聞いたバトアバは机に伏せる。


「いいなぁ〜。俺もそう言う夢が欲しかったぜ」

「あんたも騎士団入って、チヤホヤされてるから満足なんじゃないの?」


 バトアバはそれを聞くと顔を少し上げ、

 エルトレを上目遣いで見ながら話す。


「べつにチヤホヤなんて求めてねえよ……

 なんだかな……俺は一体何が夢かってよく考えるんだ。この歳にもなって、ガキかよみたいな悩みだが、

 俺はこのまま生きて何で死ぬかとか、

 何を成して死ぬのか気になってしょうがねえ」


 エルトレはグラスを磨きながらバトアバを見続け、

 少しため息をする。


「なぁエルトレ」

「なに?」


 バトアバは少し黙ったあと、ポツリと呟く。


「俺、エルトレが好きだわ」

「残念だけど、あんたは一人のままがいいよ」

「……じゃあなにしたらいい」

「夢見つけたら、もう一回言ってきなよ」


 バトアバはそれを聞いて顔を上げ、

 酒を一気に飲み干す。


「……俺はしつこいぜ?」

「ナンパには慣れてるからべつにいいわ。

 何十年でも賭けなさいよ。恋はそんくらいバカになるものでしょ?」

「はははっ! 言えてる」


 ーーー


 バトアバはエルトレが知る常連で最も歴が長い。

 老いで身体が動かなくなり始め、店を閉める日にもバトアバはやってきた。


 心底バカなやつだった。


「……エルトレ、俺夢見つけたぜ」

「言ってみな」


「エルトレのそばで死ぬこと」


 互いに何十歳も歳を取り、

 人族の寿命が近くなってきた。


「……何十年もあたしに執着するなんてね。

 とんでもないバカだよ……」


 バトアバはニヤニヤとしながらエルトレを見る。



「まぁ……あたしもそのバカの一人だね」



 エルトレは少し頬を赤らめながら笑った。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 『粛清! 断罪! 邪族根絶!!』


「……西黎大陸の夏暑すぎない?」


 パラトア・シーファ。

 三十六歳の女性の君級剣士。

 不視を冠する彼女は現君級剣士二番目の実力者だ。


「レナセール王国はマシな方じゃないですぅ?」


 オルテッド・ラングトルア。

 三十一歳の彼は6年前に君級剣士となった男性。

 身長はパラトアよりも低い。


 パラトアは元々エテルノ王国に仕える剣士だったが、邪葬戦争後王族のやり方へ溜まっていた不満を解き、契約を勝手に破棄して西黎大陸にやってきた。


 彼女はしたいことがあってここまでやってきた。


「さて……ガレイルを越える組織作るわよ」

「名前はどうするんですぅ?」


「……粛清団(レプレシオン)とかどう?」


「まぁ案出す気ないんでそれでいいです」

「めちゃくちゃ投げやりね」


 パラトアは前を向いて歩きながら話す。


「邪族は根絶する。二度とあそこまで大きな組織を作らせない。オルテッド死ぬほど働いてもらうわよ」

「へへっ、戦えるならご褒美だなぁ」


 粛清団(レプレシオン)は後に、西黎大陸と最西黎大陸に広がる大きな組織となった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 『その五体は絶品のために』


 ダスラト・バルテニア。

 五十八歳の男性で、東勢大陸にレストランを持ち、

 人はいつも少ないが毎月フラメナがやってくる。


「ダスラトさん! 今月も来たわよ!」

「水はたくさんだな」


 近頃は船も進化し、東勢大陸と南大陸はおよそ二日で行き来できるようになった。


 ダスラトもこの歳だ。

 死期が遠いわけではないが、

 できることならまだまだ料理をしていたい。


 常連という存在が彼は大好きだった。

 店にやってくる人は色々な悩みを抱えていて、

 そんな人たちが自分の料理で笑顔になる瞬間が大好きだった。


 なんのために生まれてきたかと言われると、

 彼は必ず自信を持ってこう答えるだろう。


 美味い飯を作るために生まれてきた。


 彼の料理は絶品で、フラメナたちはいつも笑みが溢れる食事となる。


 身体は鉛のように重くなった。

 手だって震えるようになったし、

 重いものだって持ちにくくなった。


 愛した相手もいなければ子供もいない。

 自分が死ねば店は潰れる。


 だが、ダスラトは寂しさも後悔も感じなかった。


 愛した存在は料理ただ一つ。

 客の見せる笑顔で生きてきた。


 料理が作れないなら死んでもいい。


 ダスラト・バルテニアは料理を愛し、

 自身の腕に惚れ続けた漢だ。


「相変わらず美味しいわね!」

「おいしー!」

「おいしい!」


 フラメナに続いてそう言うパフラナとカフメ。

 ダスラトはそれを聞いて背を向ける。


「当たり前だ」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 『目覚めの眠り姫』


「リクスー!! 女の子目覚ました!!」


 エクワナ・ヒョルドシア。

 四十二歳で凍獄を冠する君級魔法使いだ。

 右腕を失って隻腕の彼女は、自身の祖父がやっていた宿を継ぎ、ハルドラ村でのんびり過ごしている。


 エクワナの祖父であるカイメは、7年前に亡くなっており、八十三歳でその人生に幕を閉じた。


「っ!? 本当に起きたんですかっ!?」


 リクス・テルマドール。

 二十九歳の彼は現在、将級魔法使いである。


「マジマジ!! 早く来て!!」


 リクスは走ってエクワナの言う方へ行くと、

 宿の一室に二人で入り、窓の外を見つめる女性がそこにいた。


「やっと目覚ました……」


 リクスがそう言うと、

 今まで眠っていた女性は一つ問うてきた。


「ここはどこですか……?」



 リクスたちは状況を説明し、

 その女性に自身のことについて話してもらった。


 人族の彼女は二十二歳。

 北峰大陸を旅している最中にパーティーとはぐれ、

 雪原で意識を失った。そして目を覚ますとここにいたと言うのだ。


「最後に覚えてる年っていつです?」


 リクスがそう聞くと、その女性は答える。


「1652年……?」

「その、今……1702年です……」


 50年も眠っていたのだ。


「……そうですか」


 人族の女性はそう言うと顔を俯かせた。


「でも……まあ安心しなよ。

 あんたのことはウチで面倒見るからさ!」


 エクワナがそんなことを言うと、

 その女性は頷く。


「私……ルテラ・ラドルドって言います。

 その……あなたたちは?」


 そう聞かれ、エクワナとリクスは名を乗った。


「……感謝します……一生感謝します」


 彼女の身には異常が起きている。

 しかし、それを知るのはかなり後のことだった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 『長生きエルフと時代の流れ』


 枯華(こか)1778年、エテルノ王国にて。


「一週間後に南大陸に行かんとな〜」


 ユマバナ・アルマレット。

 エルフ族の歳が二百七十を越える大魔法使いだ。


 エルフ族は長寿で1000年ほどは生きられる。


 ユマバナは様々な魔法を研究しており、

 学者としても魔法使いとしても有名だ。


「まだ100年も経っとらんのに……

 随分と外の景色は見違えるのう」


 1710年付近に蒸気機関が発明され、

 世界の文明は一気に発展した。


 ユマバナはいつの時代も友人の死を先に見てきた。


 毎度大泣きし精神がすり減るが、

 明日も生きねばならない。


「妾が死ぬ時に看取ってくれる者はおるのかのう」



「妾も独り言が増えたの……よしっ!!」


 ユマバナは立ち上がって玄関へと向かう。


「誰かにダル絡みするに限るんじゃ!」


 ユマバナ・アルマレット。

 かなり自由な生き様をしているエルフの魔法使い。

 そんな彼女は今日楽しもうと生きていく。


 いつかくる命の終わり際まで――


純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い- ー完ー

2025/11/22完結致しました。


ここまで読んでくださった方々、ありがとうございます


是非、感想や評価の方をお願い致します。

もらえると本当に嬉しくてたまりません。




さて、純白魔法自体、勢いだけで始めた物語でしたが、

7月から11月の終わりまでと、ほぼ毎日投稿でやって来ました。連載の日々は非常に楽しくも辛かったです。


毎日3500字を書くというのは楽なのですが、

展開を面白くしながら書くのは難しかったです。


色々と純白魔法は無計画にやっていたので回収できてない伏線も多く、完璧とは言えない作品ですが、僕自身かなり満足した作品でした。


フラメナと主要キャラたち全員が大好きですし、

喋らせるのが楽しかったです。そして敵側のキャラなどもかなり手を凝っており、愛情が湧く勢いでした。


最初らへんは少し自分が好きなようにというよりは、

注目されたいという気持ちでしたが、後半は完全にやりたい放題で、読者様を置いていった感がすごいです。


僕の初めての投稿作品は無事に完結。



そして、次は何をするかと言われますと、

本気でランキング入りや賞入りを目指します。


はっきり言って文章力はかなり上がりましたし、

後半の戦闘描写は満足して書けました。


僕は将来的に作家として生きていくつもりです。

まだまだ未熟ながらもかなり経験を積めました。



次回作を12月1日。

14時から2時間刻みで三話投稿します。

次の物語では純白魔法の未来の世界が舞台、科学と魔法が両立するダークファンタジーとして書いていきます。

一話の文字量は2500~3000。

純白魔法より読みやすいかなと思います。



最後に。

純白魔法を追ってくれた皆様ありがとうございます。


最初期の頃、リアクションで泣き絵文字をくれたりブクマが増えたりで狂喜乱舞していました。今もそのモチベは続いています。


次回作、練りに練って投稿します。

読みに来てくださるとめちゃくちゃ嬉しいです!


それでは、またお会いしましょう。

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― 新着の感想 ―
最初から最後まで読ませて頂きました! 100話を優に超える大作の執筆、お疲れ様でした!! フラメナの子供の頃から大人になるまで見てきたので、ほぼクランツ先生目線でした笑 なので、最終話は本当にウルッと…
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