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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第十九章 純白魔法使い 完結編

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最終話 純白につき

 ーーーーーフラメナの日記ーーーーーーーー


 節目の年だし、日記を残しておくわ。


 戦争が終わってゼーレ王国に帰った時、

 お姉様に抱きつかれて地面に倒れたのをまだ覚えてる。


 お姉様が大泣きして抱きついてきたから、

 私もさすがにそこまで心配されてるとは思ってなくて、ちょっと泣きそうになったのよね。


 魔王軍が世界から消えて、

 色んなことが起きた。


 まあ、そんな世界がどうとか言うのは、

 ここではあまり話したくないわ。


 私は魔法が使えなくなってた。

 やっぱり反動とかが大きかったのかもしれない。


 今は治ってるんだけどね。


 その当時は少し焦ったけど、

 生きてられるだけでなんだか幸せだったの。


 ライメは戦争が終わってから、しばらくして教師に戻って、みんなも日常に戻り始めた。


 私はというと、王国騎士団っていうものを立ち上げたわ。


 騎士団っていうけど、あんまり馬なんて使わないし、普通に魔法使いもたくさんいる。


 もちろん私が団長。

 副団長はルルスよ。


 募集を開始したら一気に申し込みが来て、

 ルルスとクランツ、ライメにも手伝わせて色々頑張ってたわ。



 魔法を再び使えるようになるまでには半年かかったかしら? ライメの教え方が上手くてすぐに元の実力まで戻れたのよね。


 さすが私のライメ。

 褒めるところが多すぎて困っちゃうわ。


 邪葬戦争から5年、私たちは邪統大陸奪還戦争に参加して、見事圧勝。


 功績が凄すぎて大陸をもらったとかお姉様が言ってたわね……


 その戦争以降……私は普通の生活をしてる。


 愛する子供の面倒を見ながら働いて、

 みんなで一緒にご飯を食べて……

 暖かい布団に包まれ眠る。


 こんなに幸せだと、

 毎日が楽しくてしょうがないのよね。


 それは邪葬戦争から″10年″経った今も続いてるわ。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 枯白(こはく)1702年9月23日。


「行ってくるねフラメナ」

「今日は帰り早そう?」

「早く帰ってくるよ」

「ふふっ、急がなくて良いからゆっくり帰るのよ」


 フラメナ・カルレット・エイトール。

 歳は三十歳、史上最強の魔法使いであり、

 ″二児″の母だ。


「いってらっしゃいお父様!」

「ばいばい〜!」


 パフラナ・カルレット・エイトール。

 カフメ・カルレット・エイトール。


 パフラナは十歳の女の子だ。

 そして弟のカフメは七歳の男の子。


 どちらもフラメナと一緒に王国騎士団の本部にて、

 団員と一緒に魔法や剣術を学び、一般的な教養もクランツから学んでいる。


「今日は早く帰ってくるからね。

 お母さんに迷惑かけないように」


 ライメ・カルレット・エイトール。

 歳は二十九歳で、冷宙を冠する君級魔法使いだ。


 彼の現在の職場は、3年前にできたクライゼル魔法大学で魔法学の教授を担当している。


 ライメの授業は有益すぎるもので、

 他の魔法学を持つ教授も見にくるほどだ。


 彼の教え方の巧さは、

 クランツから引き継いだのだろう。



「迷惑かけないわ! だってわたしえらいもの!」

「ぼくだって迷惑かけないっ!」


 二人のその意気込みを聞いてライメは微笑み、

 鞄を持って手を振りながら三人から離れていく。



「さぁて、二人も支度して騎士団のところ行くわよ」


 フラメナはそう言って二人の手を握り、

 家の中へと戻っていった。


 ーーー


 王国騎士団、本部にて。


「フラメナ様おはようございます!」

「おはよう!」


 門を潜れば多くの戦士たちがフラメナに挨拶し、

 後ろをついてくる二人にも一礼してくる。


「ルルスはどこにいるのかしら?」


 フラメナが門番の騎士に聞くと、

 その者はルルスの居場所を話してくれた。


「ルルス様なら武器庫にいるかと……」

「またなの?……ありがと、助かったわ」


 フラメナはそう言って二人の手を引き、

 本部の武器庫へと向かった。


 ーーー


 フラメナたちが武器庫に訪れると、

 何やらある二人が揉めているようだった。


「違いますよぉ……自分はただ武器の手入れに研ぎ石を借りようと思っただけです」


 ルルス・パラメルノ。

 歳は三十八歳の龍刃流剣士であり、

 君級剣士の中で現在最強の位に座している。


「嘘ですっ!! ルルスさんはそうやっていっつも武器を取っていくのです!」


 武器庫番の騎士がそう言って、

 ルルスの腕をがっしりと掴んでいた。


 ルルスの腕を掴む騎士は、カカレナ・レルトルートという女性の剣士であり、等級は上級ほど。

 歳は二十一歳でルルスの弟子でもある


「フラメナ様っ! ルルスさんを叱ってください!

 また勝手に武器持っていこうとしたんですよ!」


 カカレナは少し怒っているようで、

 フラメナはなだめるように話す。


「まぁ……結局給料から引かれてるから良いのよ」

「フラメナ様は甘いんですよ!

 副団長がこれじゃ威厳がないというか……!」


 そう話すカカレナはフラメナの後ろから、

 ひょこっと現れたパフラナとカフメを視界に映してしまった。


「カカレナさん怒らないでー」


 カフメがそう言うと、カカレナは表情を和らげ、

 非常に機嫌が良くなって二人に話しかける。


「二人とも今日も来たんだぁ〜! えらいねぇ〜!

 しかも私の名前覚えてるし……あとでお菓子あげるよ! 私、美味しいお菓子いっぱい知ってるから!」


 フラメナはカカレナの頭を軽くも優しく叩く。


「カカレナはお菓子あげすぎちゃうから、

 私がいるところで渡しなさいよ?」

「うへへ……わかってますよぉ〜」


 ルルスはカカレナから離れようとそっと動き始めれば、いきなり強く腕を強く握られる。


「逃しませんよ……!」

「いだだだっ……わかりましたよ……」


 ルルスは冷や汗をかきながらその場に留まると、

 少し間を取った後、フラメナがルルスを訪ねてきた訳を話し始めた。


「カカレナがルルスを叱るのはいいんだけど、

 その前に伝えたいことがあるからいいかしら?」


 そう言われてカカレナは頷くと、

 フラメナはメモ帳を取り出してページを捲る。


「今日の14時かしら、西の開拓地があるじゃない?

 あそこに将級邪族が出たっていうから、私とルルスで倒しに行くわよ」


 ルルスはそれを聞くと嬉しそうに反応する。


「将級なんて何ヶ月ぶりです?

 どのくらい強いんですかねー」


 その問いに対しフラメナは即答で返した。


「どうせ負けないわ。だって私とルルスよ?

 君級邪族でも敵じゃないわ」

「それもそうですねー」


 ルルスはそれに微笑みを見せる。


 そうしてフラメナは伝えることを伝え終わると、

 パフラナとカフメを連れてその場から去っていく。


 去り際にルルスがつねられて少し痛がる声が聞こえたが、日常茶飯事なので気のすることじゃない。


 あの二人は師弟の関係ながらも、

 カカレナの方が立場が上に見える。


 ーーー


 フラメナは騎士団にパフラナとカフメを預けた。

 その足で街に建てられている研究室に向かう。

 そこではよくフリラメとクランツが研究に没頭しており、二人は日夜魔法学の研究ばかりだ。


 研究室の扉を開け、廊下を進んで奥へと行くと、

 フリラメとクランツ、それにユルダスがいた。


「あら、ユルダスがいるなんて珍しいわね」

「頼まれてたものを届け終わってな、

 少しゆっくりさせてもらってる」


 ユルダス・ドットジャーク。

 歳は三十三歳の隻腕将級剣士だ。

 彼は一人の息子を持っており、剣術を学ばせながら学校に行かせているようだ。


「ユルダスさんに頼むと毎回、色々な研究材料を買ってきてくれて助かるのよね〜」


 フリラメ・カルレット・エイトール。

 ゼーレ王国の王女であり、歳は三十五歳。

 優秀な魔法学者でありながら王女としても民から支持されており、フラメナのお姉さんだ。


「ガルダバ様などに頼んでも良いのですが、

 なにせ最近は人手が足りなくてですね……」


 クランツ・ヘクアメール。

 歳は五十歳の将級魔法使い。

 フラメナとライメ、そしてユルダスの師匠であり、

 かなり長生きな方で今も元気ピンピンである。


「俺は案外暇だからな〜。

 老後まで金はあるし……特にやりたいこともないから、今はただタグルタの成長が生き甲斐だぜ」


 タグルタ・ドットジャークはユルダスの息子だ。


 フラメナはそれを聞いて思い出したように、

 ユルダスへと頼み事をする。


「あー、今度カフメにタグルタから剣術教えるように言っておいてくれないかしら」

「まぁいいけどよ……俺が教えた方が早くないか?」

「教え合いが一番成長するのよ?」


 ユルダスはそう言われると、確かにと納得する。


「それよりも、クランツ。

 魔法書借りてきてくれたかしら?」

「えぇフラメナ様、今日取りに来ると思いまして、

 机の上に置いてありますよ」


 クランツはフラメナの行動を予測し、

 頼まれていた本を机に置いていた。


「……クランツって未来予知とか使えるの?」

「はははっ使えませんよ」


 その魔法書は、帥級以上の魔法使いが扱う魔法が載っている本であり、フラメナは手に取り鞄に入れた。


「ありがとねクランツ。

 お礼に明日、果物持ってきてあげるわよ!」

「それは豪華な恩返しで心躍りますね」


 クランツが少し嬉しそうにそう言えば、

 フラメナは鞄を持ってそのまま研究室を去る。


 ーーー


 その日の午後14:09。

 フラメナとルルスはたった二人で、

 西の開拓地へと集まっていた。


「魔力のオーラはどうです?」

「まぁ中々ね。隠れてるけどまるで隠しきれてない」


 フラメナは魔眼にて場所を把握し、

 ルルスと共に歩き出す。


「ルルス、相手は多分知性なしの邪族だわ。

 だから思う存分好きに動いていいわよ」

「いいですね〜自分は自由な方が得意ですから」

 

 ーーー


 私だけ……


 この世界で一番強い魔法使いは私だけ。


 最近はいつだってそう思う。


 私の魔法は、″白い″


 ……まあ、それは過去の話。

 本当はもう白くないけど、純白っていう名を持ってて火が赤なのは気に喰わないわ。


 だから無理矢理温度を上げて白くしてる。


 一応……白いってことでいいわよね?



 まぁ……この世界はある程度戦えないと、

 幸せを継続し続けるのは難しい。


 そんな不平等な世界で、私は今、幸せだわ。


 守りたい人、場所、思い。

 全部私は守れる。死ぬまで自惚れて生きるつもり。


 だって私は、フラメナ・カルレット・エイトール。

 魔法使いの頂点……一番強い魔法使いなんだから。


 一度咲いた花がすぐ枯れるなんて私は嫌だ。


 できるだけ長く、色鮮やかな花を咲かせていたい。


 私の人生は色で溢れている。

 白一色じゃない。


 私は生きている。

 これからも……長い間生きていきたい。



「明日は何をしようかしら……」



 フラメナはそう呟いて一気に大量の白い火を纏うと、辺りに熱気が満ちる。


 真っ白な火は揺めき、フラメナの表情は途切れ途切れとなるが、微かに見える表情は自信満々なもの。


 フラメナ・カルレット・エイトール。

 純白という魔法の時代を作り上げた魔法使い。


 今は彼女を異質だと言う人はいない。



 一人の魔法使い、純白につき最強――


 一人の少女が世界を否定する物語は終わり、

 一人の魔法使いが世界となる物語が始まる。


 新しい時代がやってきた。

第十九章 純白魔法使い 完結編  ー完ー


次回 エピローグ

14時に投稿されます。

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