間話 傑物・新時代・天
傑物――
それは歴史の中でも特に、
世界に影響を与えた者たちの総称である。
過去の傑物には、その時代ごとの三界や、
素晴らしき発明などをした者などが記されている。
1600年代後期。
その時代は長く続く魔法史の中でも、
最も多く強い魔法使いがいた時代とされており、
傑物として記されている者たちが多く存在する。
フラメナ・カルレット・エイトール。
純白を冠する君級魔法使い。
史上最強の魔法使いとされており、
火属性と雷属性を扱う女性の魔法使いだ。
その名に対する印象を聞けば、
皆が口を揃えてこう言う。
「最強」
憧れにすることすら烏滸がましい。
誰も追いつけないほど強い。
住んでる次元が違う。
一体どれだけの才能を持っているんだ。
そんな言葉ばかりが聞こえてくる。
太陽のように明るく史上最強の魔法使いと言われる彼女は、魔法史として新たな時代に名を刻む。
魔法の時代が魔王から″純白″へと変わったのだ。
ライメ・カルレット・エイトール。
冷宙を冠する君級魔法使い。
彼は氷魔法を扱い、最も優れた魔法教師でもある。
彼を語る上でなによりも注目すべき特徴は、
転移魔法使いであるということだろう。
転移魔法使いは長い魔法史の中でもライメを含み、
四人しか扱えた者がいない魔法だ。
加えて彼は名の通り、フラメナとは恋仲であり、
正式に婚約も果たした状態だ。
二人は共に戦うことが多く、
フラメナとライメが揃った際の強さは、
まさに天下無双。負ける気など感じさせない。
ルルス・パラメルノ
笑死を冠する君級剣士。
龍刃流に所属しながらも、非常に自由な動きをするのが彼の特徴だ。魔法が全盛の時代といえど、彼に敵う者はほとんどいなかっただろう。
彼は常にニコニコしていることが多く、
戦闘時も笑顔は絶やさない。
これは戦う相手からすればただの恐怖であり、
傷を受けてもお構いなしに突っ込んでくる姿は、
笑う死神とでも言おうか、それほどの剣士だ。
彼は今まで莫大な数の邪族を狩っている。
故に邪族狩りのエキスパートとでも言える存在だ。
ユマバナ・アルマレット
枯星を冠する君級魔法使い。
魔族の中でもエルフ族であり、長年生きる彼女だが、その魔法の技術は他を圧倒している。
闇属性という難解な属性を極め、
自分なりのやり方で魔法を愛した彼女は、
幼い頃から魔法にのめり込むように夢中である。
そんな彼女だが、フラメナを除けば世界二番目の強さを誇る魔法使いだろう。
傑物は他にも多く存在する。
史上最強の剣士、剣塵イグレットだったり、
元世界最強の魔法使い、虹帝のネル。
正直に言ってしまえばその時代の君級戦士たちは、
全員が傑物として数えられている。
なぜならば――
魔王軍を壊滅させたのは、その時代の戦士たちであり、君級戦士たちはその筆頭だからだ。
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新時代――
1692年以降、世界は大きく変わった。
魔王軍が壊滅した関係により、
様々なことが起きたのだ。
魔王軍に関わりを持つ邪族が一気に姿を消し、
知性がある邪族の動きもかなり静まった。
やはり、強大な邪族の敗北は、
邪族側からすれば絶望の一色なのだろう。
魔王軍壊滅から5年後。
再び世界中の戦士は邪統大陸に集まり、
邪族を滅ぼして大陸を取り返す奪還戦争を行った。
これほどまでに強い戦士がいるのならば、
魔王軍のいない邪統大陸は攻め落とせる。
指揮を取るのはユマバナ・アルマレット。
最前線にはフラメナ・カルレット・エイトール。
戦争は圧勝。邪族は一方的に敗北し、
邪統大陸中での長く続いた邪族による統治は、
たった一ヶ月ほどの戦争で歴史を終えたのだ。
邪統大陸は邪族の統治から外れ、
一番の功績を残したゼーレ王国が、
大陸の全土を領地として持つことになった。
それから少しして邪統大陸は、
最西黎大陸と名を変えることとなる。
そして大陸の名が変わり、
それ以外にも変化が世界中で起きていた。
まず、中央大陸の勢力が落ち始めたのである。
元来、中央大陸のエテルノ王国は、
長い間権力も財力も武力も、一切落ちなかった世界の中心とも言える国だった。
だが、邪葬戦争で多くの戦士が死に、
中央大陸も数多い戦士を失った。
それにより現在、君級戦士たちは南大陸ゼーレ王国が一番多く、世界最強の魔法使いフラメナはゼーレ王国の王族でもある。
そして女王のフリラメ・カルレット・エイトールの人格や、政策の巧さもあり、大量に人が南大陸へと流れ始めたのだ。
現在南大陸はゼーレ王国が大陸を管理しており、
有り余る土地の多さから住民も増やすことが容易く、人口は数年経たずして元の二倍ほどとなる。
それと同時期、北峰大陸の霊族たちに対する差別が、少しだけ収まりつつあった。
君級魔法使いのライメの活躍や、
フラメナが大陸新聞の質問に答えた際の――
『差別なんてくだらないわ。
他人よりまずは自分のことを見るべきよ』
以上の発言などもあり、
認識が改まった人もいるのだろう。
そして最後、邪葬戦争から数十年。
魔法陣の紙を永続的に使うことを可能とし、
水と火の魔法で蒸気を発生させ、その蒸気を利用する蒸気機関なる発明が生まれた。
この発明により一気に文明が進んだ。
そして、後にこの発明は歴史上での転換期とも言えるほど、大事な発明となっていく。
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うん、良い感じに文明が発展してるじゃない。
まぁな。だが、まだあそこほどではないんだろう?
そうね……まぁあそこはみんな本気だし、
力の入れようが私たちとは違うから、しょうがないわね。
……しかし、かなりに好きにやらせていたが、
よかったのか?
困難はその世界に住む者が乗り越えなくてはいけませんし、ちゃんと調和は取れてるから大丈夫よ。
それより……今は私たちの仕事をしましょう。
結構忙しいんですから。
それもそうだな。とりあえず、
世界が滅びるようなことにならなくて一安心だ。
この世界はこれからは大丈夫。
一度乗り越えたのだから、次も大丈夫。
……先に行くぞ。
えぇ、先に行っててちょうだい。
にしても……美しい世界ね。
本日19時に最終話が投稿されます。
エピローグは番外編のような扱いでもあるので、
本編のお話は次で最後です。
残り二話、最後までお楽しみください
明日14時完結でございます。




