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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第十八章 純白魔法使い 決戦編

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第百六十三話 天染めの少女

 ライメたちと離れてからフラメナとトイフェルは、

 およそ10分間戦闘を行っていた。


 この10分間の後、″戦いは決着する″


 フラメナがトイフェルに勝つ方法、

 それは封印のみである。


 トイフェル自体に魔法勝負で勝つことなど不可能で、ましてやその命絶やしてしまえば、世界が崩壊することとなる。


 トイフェルは未だ、フラメナの作戦には気がついていない。気がつくのも難しい話だ。



 フラメナとトイフェルは両者魔法陣を展開し、

 先に魔法を放つのはフラメナだった。


白雷獄(ホルトラフ)!」

水球(アラピル)……!」


 フラメナの手から放たれる電撃纏いし白炎、

 それはうねりながらも一直線にトイフェルへと向かっていき、水球と正面からぶつかって爆発した。


 水飛沫が辺りに飛び散る中、

 フラメナは地面を踏み込んでトイフェルへ接近。


 白炎から剣を作り出し、それを使って斬りかかれば、トイフェルは左腕に岩石を纏わせて防ぐ。


 攻撃後の隙が露わになったフラメナに対し、

 トイフェルは右手から氷の針を作り出し、フラメナの腹部を貫こうとする。


「っぐ!」


 腹部を貫いたと思った矢先、トイフェルはフラメナに顔面を触られてしまった。


 貫かれても尚、

 フラメナはトイフェルへと攻撃を続ける。


「なぁッ!?」

白球(フラホワ)ァッ!!」


 トイフェルの顔面は白炎の球体に呑み込まれ、

 その激痛によりフラメナを蹴り飛ばすトイフェル。


 腹部が再生して立ち上がるフラメナ。


 トイフェルは結界を辺りに張り、

 その白炎を水魔法で消して再生を行う。


「……白帝元(ホワルトゾメラ)!」


 結界とて限界値はある。


 フラメナはそれを考え白帝元という、

 一直線に回転する白炎を放つ強力な魔法を放った。


 それは結界にぶつかった瞬間、

 大きな音を立てて結界を破壊し、トイフェルは再生を終える前に白い炎の接近を許してしまう。



 なぜ私はこの小娘に苦戦しているのだ。

 加減などもしていないのにも関わらず、

 ここまで私が追い詰められる理由はなんなのだ!


 違う……これは私の実力不足ではない。


 天理……あやつの呪いだッ!

 魔力の回復が遅くなったのも……!

 魔法の出力が弱くなったのも……


 全部あやつの呪いのせいだッ!!


 この小娘を私が殺すには……

 ″最大出力の魔法″をキメなければいけない。



 トイフェルは白炎を前に手を伸ばし、

 大量の電撃を放って相殺。


 身体中の魔力を最大まで高め、

 トイフェルから黒いオーラが漏れ出す。


「……簡単に相殺してくるのね」

「今気がついたが、どうやら私はかなり弱体化しているらしい。憤慨極まれり、由々しき事態だ。

 だから私は最善を見つけたのだ」


 トイフェルは魔法陣を展開し、

 右腕をフラメナへと向ける。


「小娘、お前を殺すにはこの魔法しかない」

「……!」


 フラメナはそれを聞いて走り出し、

 急いでトイフェルの魔法を止めようと火球を放つ。


「ありがとう。やはり単純で助かる」


 トイフェルは右腕を引き、

 火球を避けて前のめりのフラメナに対し、

 腹部に向けて紫の電撃を纏わせた拳を放つ。


「ゴファッ!」


 腹部を貫かれ大量に吐血し、

 後方へと地面を転がりながら倒れるフラメナ。


 再生が終わるまでには数秒の時間がかかり、

 腹部を貫かれた反動で身体も動かない。


 つまりは再生一択となったフラメナ。

 しかし、その数秒はあまりにも″致命的″だった。


 魔法陣が展開され、魔法が呼称される。


火球(フライマ)!」


 欠片を有していたとしても、

 身体の細胞が一つも残らず木っ端微塵に吹き飛ばされてしまえば、再生する前に絶命する。


 トイフェルのそれは、フラメナを焼き尽くし、

 塵も残さないほどの威力を持つ火球だった。


 紅に光り輝く小さな火球。


 南大陸を滅ぼした時と同じ魔法だ。

 つまりこれは、トイフェルの″最大火力″である。



「ッ!?」



 純白が極まる。



 接近する火球をフラメナは手で掴み、

 大量の白炎を放出して手の中で相殺。


 それと同時に、髪は赤から白へと染まり、

 瞳が白くなったと思えば、身体中に白い線の模様が刻まれる。


「……まさかそこまでとは思わんだッ!」


 溢れ出すように白炎が辺りを這い始め、

 トイフェルへと波のように迫っていく。


 土壇場でのフラメナの覚醒。

 欠片の全ての力が今、全面へと押し出される。


 これほどまでの圧倒的な力。


 フラメナは魔力を使い切る覚悟ではなく、

 ″命を燃やし尽くす覚悟″によって覚醒したのだ。


 トイフェルは迫る白炎を結界で防ぎ、

 フラメナと目を合わせて一定の距離を保つ。


「小娘、お前はなぜ平穏を求めぬ?

 私の世界は常に平穏、争いも不平等も生まれぬ理想郷なのだ。その世界で暮らせば良いではないか。

 お前の仲間たちだってその世界で暮らせる。

 私は滅亡を望んでいるのではない……

 私とお前たち、世界の平穏を望んでいるのだ」


 トイフェルは諭すように話してくるが、

 フラメナはそれを真っ向から否定する。


「じゃあ聞くけど、なんで南大陸を滅ぼしたのよ」

「小娘、お前が平穏を脅かす存在だからだ。

 本当は南大陸にいる時期を狙ったが……

 邪魔が入り始末できなかった」


 フラメナはトイフェルへ指をさして言う。


「それがあなたの本心よ。

 世界の平穏のためなら犠牲を伴わないそのやり方!

 そんなやり方で平穏な世界が維持できるわけないじゃない! この世に平等なんてものはないの……!


 運命は平等だって言うけど、そうは思わない。

 争いも格差も消えない。消えるわけがない……

 だって私たちは生きてるから……!


 みんな何かを求めて生きてる。

 その上で衝突することなんて当たり前なの……

 お腹が空く限り、争いは絶えず行われるし、

 知性を持ったからには幸せを求めてしまう。


 そんな貪欲な生物なの、私たちはッ!

 ……あなたの世界は確かに平穏かもしれないけど、

 本当にその世界で私たちは生きてるって言えるの?


 悪いけど、綺麗事ばっかり夢見てるあなたと違って、私はこの世界の醜いところもたくさん見てきた。


 だからこそ言える。平等は生命への冒涜よ……!」


 フラメナは息を少し切らしながら肩を震わせ、

 深呼吸した後にトイフェルへと言い放つ。



「……ところで魔理、あなたは何を幸せだと思う?」



 トイフェルは目を見開き、口を震わせては唇を噛み締め、全身の血管が隆起し、激しい怒りに呑まれた。


 思わず口角が上がってトイフェルは言い返す。


「この世界の安泰こそ私の幸せ……

 はっはっはっ!! しかし驚いた。

 私はここまで怒れるのだな。言っておくがその諦めた考えこそが、平穏を脅かす存在だと言うのだ……」


 トイフェルの紫のオーラが強まる。



「だからこそ……小娘よ……ここで死ねェィ!!」

「うっさいのよバーカ!!

 かかってきなさいよお花畑野郎!!」



 空が二つに割れ、白い世界と紫の世界がぶつかり合い、空気が揺れて大地が揺れると、戦場は浮島へと移行する。


 トイフェルは地面を踏み込んでフラメナへと接近すると、水の剣を作り出しフラメナへと斬りかかる。


 それを避けるフラメナもまた白炎の剣を作り上げ、

 二人はそこから剣術を嗜んだことのない者同士の、

 非常に大振りな斬り合いへと発展する。


 両者大量の傷を受けながらも腕を振り上げ、

 先に大きなダメージを与えたのはトイフェル。


 水の剣がフラメナを袈裟に切りつけると、

 攻撃が当たったことでトイフェルは一瞬の油断をしてしまった。


「!」


 フラメナは再生しながらもトイフェルの肩を掴み、

 全身全霊で頭突きをした後剣を捨て、頬をビンタすれば、そのままトイフェルを蹴って後方へ追いやる。


「ぐぅっぉ」


 トイフェルはふらつく中、

 フラメナの白炎が迫るのを目にし、

 横へと飛んで避ければ召喚体を召喚。


 その召喚体は大きな口を持っており、

 フラメナをバクっと食べてしまった。


 しかし、召喚体の全身から白い閃光が漏れ、

 中から爆発してフラメナが出てくる。


白月針(ホニフラト)!」


 フラメナの手から放たれた白炎は鋭く、

 豪速で放たれたそれはトイフェルの左肩を貫いた。


 トイフェルは再生を行いながらも顔を前へ向けると、フラメナの拳を正面から直でもらってしまう。


 怯むトイフェルの首を掴んだフラメナは、

 再度勢いをつけて頭突きを行い、鼻血を吹き出したトイフェルの頬を殴り、続けて顎を殴る。


 白目を剥いた状態のトイフェルを、

 ひたすらに殴ったりビンタしたりするフラメナ。


 これは彼女なりの復讐でもある。


「小娘ェエッ!!」


 トイフェルは全身から電撃を放つと、

 目や鼻、耳から出血しながらも、

 拳をこちらへと向けるフラメナが目に映る。


「!?」


 フラメナは攻撃を受けながらも、

 拳をトイフェルの顔面に直撃させ、

 一気に白炎を放出して空へと吹き飛ばした。


「はぁっ……はぁっぁ」


 フラメナの魔力が底を尽きかけている。

 対してトイフェルはまだ四割以上。



 どう考えたってこのままじゃフラメナが負ける。



 だが、彼女の表情に曇りはない。


 楽しくも清々しい表情。


 地面へと落下したトイフェル。

 再生を終えて立ち上がると、フラメナは自信満々の表情でトイフェルへと指を向けて言った。


「次の攻撃で私が勝つから……!!」

「……どこまで私をおちょくれば気が済むのだッ!」


 二人の戦いの下へと迫る氷塊。

 決着がすぐそこまで迫っていた。

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