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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第十八章 純白魔法使い 決戦編

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第百六十二話 求めるなら貪欲に

「またわたしの勝ちよっ!!」


 幼い頃から、僕はフラメナに勝てなかった。


「ぜぇ……はぁっ、フラメナちゃん……足はや」


 足の速さも、魔法も、魔法の知識でも……

 僕は全部彼女には追いつけなかった。


 それでも、不思議と嫌な気分にならなかった。


「わからないの? じゃあ教えてあげるわ!」


 フラメナはいつだって僕を気にかけてくれた。

 元々イジメられてた僕を助けたのもフラメナ、

 僕に魔法使いとしての目標をくれたのもフラメナ。


「ライメ、明日は一緒にクランツと実戦授業よ。

 わたしたちの力、見せつけてやりましょ!」


 フラメナという存在は、幼い僕にとって太陽と言えるほど、大事な存在だった。



 フラメナに魔法ではもう追いつけない。

 住んでる次元が違うんだ。


 でも……寄り添うことはできる。

 魔法じゃなくたって色んなことで支えられるんだ。


 フラメナは強くて脆い……

 一瞬で崩れてしまいそうな不安定さを抱えている。


 フラメナは優しいから常に周りを気にしてる。


 けど……


 僕はもうあの頃とは違うんだ。


 もう、フラメナを不安にさせないために……

 二度とフラメナを一人にしないように――


 僕は魔法を極めるんだ。



 辛勝なんて要らない。

 僕が求めるのは圧勝だけだ。


 魔王に比べたら、目の前のこんなやつどうってことない。やるなら完全勝利……足止めなんてさせない。


 フラメナにはもう追いつけない。

 それでも、後を追うことはできる。


 始めよう……今はただ、思うがままに……



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ライメは深呼吸し、全身に魔力を巡らせ、

 魔法使いとしての完璧と言える隙のない立ち姿を、

 黒魔眼へと魅入らせてみせた。


「ルルスさんたちは自由にやってください。

 僕とクランツ先生がそれに勝手に合わせます」


「うへぇ、良いんです〜?

 お言葉に甘えて……自由にやっちゃいますよぉ」

「自由ってのも少し困るけどな……」


 ルルスとユルダスがそう言う中、

 エルトレはライメのそんな姿を見て言葉を漏らす。


「……まるでフラメナみたいだね。

 ほんと、案外似てるところあるっていうか……

 まぁいいや、自由にやっていいなら任せてよ」


 三人は剣を構えて前へと出ていく。


「自分」           「ですから〜」

「俺」  「そういうの得意」 「だからな」

「あたし」          「だし」


 三人のその動きに対して黒魔眼は黒い光線を放ち、

 それは先の一直線のものとは大きく異なった。


 光線は複雑な軌道を描きながら進み、

 枝分かれするように光線が分裂していく。


 一見避けるのが困難な攻撃だが、

 三人の剣士はそれを感じさせないほど自然に避け、

 黒魔眼はあっという間に接近を許してしまう。


 攻撃が黒魔眼へと当たる瞬間、三人は二つ目の光線が放たれることを予想していなかった。


 攻撃が故に生まれる隙、その光線は三人を難なく捉えてしまうだろう。


 ***


 転移が発動して黒魔眼の背後へと三人は転移した。

 それにより光線の脅威は消え、二つ目の光線は空を裂いて空振る。


極風(フエルント)……!」


 クランツは将級風魔法を放ち、

 黒魔眼へと地面を抉り取るほどの斬撃を纏いし、

 風の衝撃波をぶつけた。


 それに黒魔眼は直撃して抉れるように傷が付くと、

 再生する間に背後にいる三人の斬撃が襲いかかる。


「ッ……斬ってもこいつの再生が早すぎる!」


 ユルダスがそう口にするのも仕方がない。


 黒魔眼に傷を与えても即座に再生される。

 それは魔王側近を超えた速度だ。


 ライメやエルトレはこの速度に見覚えがある。


「まるで虎のあいつみたいだよ!

 ……嫌な思い出蘇っちゃったじゃん!」


 傲慢のシルティ、あの魔王側近と同程度か、

 一個下ほどの再生速度だ。


「痛いと思う! なにですか?」


 黒魔眼は相変わらずな口調で声を発すると、

 辺りが眩しく照らされると、その時だった――


「マズいですね〜……!」


 大量の黒の光線が黒魔眼から放たれ、

 五人へと満遍なく襲いかかる。


 光線が放たれてすぐのこと、

 ライメは杖を上へと向けると魔法を呼称した。


氷迎世(アルスシクル)!」



 光線自体はそう早い攻撃じゃない。

 と言っても速度が遅いわけでもない……


 だけどルルスさんたちの位置は確実に被弾する。

 光線の殺傷力は高いはず……一度だって攻撃を受けたくないし、受けても欲しくない。


 僕が光線を相殺する……

 自由にやらせたなら責任は取らなきゃね。



 ライメはそう思いながら氷魔法を発動し、

 目に見えるほど濃い冷気を固め、光線へと向けてそれを放つと、すべての光線と相殺する。


 圧巻の魔法だった。

 無数に放たれた光線すべてを相殺し、

 ライメは皆を守ってみせたのだ。


「動きやすくて助かっちまうな……!」


 ユルダスはライメへ言葉を向けると、

 地面を踏み込み、接近した後にユルダスは黒魔眼を斬りつけた。


 水を纏いしその剣は、

 一度切りつけてはもう一度斬撃が発生する。


 まさに今の黒魔眼に対する天敵。


 黒魔眼は前述した通り君級邪族である。


 しかし、君級二名・将級二名・帥級一名の前では、

 少し可哀想なくらいの戦力差があった。


 エルトレは帥級と言えどその実力は将級。

 ユルダスやクランツも将級上位の強さだ。


 ライメも非常に強い魔法使いであり、

 ルルスに関しては現存する剣士最強とも言える。



 三人の刃と二人の魔力はあまりにも強く、

 黒魔眼は成す術もなく、ただ死ぬ刻を待つだけだ。


 使役魔法というのは死んだ者の魂を使い、

 再利用するというかなり鬼畜な魔法だ。


 使役された黒魔眼に自我はない。

 だが、自身が置かれている状況の理不尽さは理解できた。


「これはなにですか? 負けるとですね」


 黒魔眼は光線を放ったとしてもライメに相殺され、

 光線が運良く命中しかかかっても、転移やクランツの空間魔法によって避けられ防がれてしまう。


 ルルスは剣を黒魔眼へと投げつけて突き刺し、

 跳び上がってツタを持ち手へと巻き付け手に戻すと、黒魔眼の頭上へと身体を浮かせる。


 ルルスが空中を舞う中、光線がルルスへと放たれると、転移が発動してルルスは黒魔眼の背後へと転移。


 エルトレが剣を変形させながら走り、

 一度斬りつけては武器を変形させ、大小異なる傷をつけていく。


 五人の攻撃の連携は完璧で、常に黒魔眼は傷を再生することとなる。


 それにより黒魔眼の魔力は凄まじい速度で消費されていき、ついには限界が訪れかかる。


 黒魔眼自体にトイフェルは特に期待していない。

 ただの足止めであり、勝てるとは思っていないからだ。


 その上で一つ、

 トイフェルから託されし役目がある。



 突如、黒魔眼から放たれる眩しい黒光。


 クランツは勘により咄嗟に魔法を呼称。


大結界(エンペシュルトス)。旅立ちは一人でどうぞ」


 それは将級空間魔法。

 結界を何枚も重ね、黒魔眼を結界で覆い尽くすと同時に、黒い閃光が走って結界内で大爆発が起きた。

 

「寂しい」


 黒魔眼がそう言えば、身体が塵となって消え、

 使役個体としても死を迎えることとなる。


 一度破壊された使役体は二度と戻らない。

 黒魔眼はついに死を迎えることができたそうだ。


 ーーー


 ライメたちは黒魔眼に圧勝した。

 しかし、まだ戦いは終わっていない。


「……すぐにフラメナのところに行きましょう」


 そう言うとライメを除いた四人は頷き、

 早速動こうとした時だった。


 大地が揺れ、空気が震える。


 フラメナとトイフェルがいるであろう二の丸跡地、

 そこから白い光と紫の光が放たれ、昼間だと言うのに辺りが一気に暗くなり始める。


「また浮島かよ……」

「あれじゃいけないじゃないですか〜」


 ユルダスとルルスがそう言う中、

 クランツは浮き上がる大地を見て言う。


「使役体がやられて加勢を恐れた……?

 それほど拮抗しているのでしょうか……」

「見た感じ……フラメナも負けてなさそうだし、

 結構魔王側もギリギリになってきたんじゃない?」


 クランツの考察にエルトレが少し嬉しそうに反応すると、ライメがクランツへと話しかけてくる。


「クランツ先生……風魔法でこの氷塊をあの浮島まで飛ばしてくれませんか?」

「転移魔法は便利ですね。容易いことですよ」


 ライメは小さな氷塊を媒体とし、

 転移を行って浮島へと向かう。


 クランツもその考えを肯定し、

 ライメの手からクランツの手へと氷塊が渡った。



 クランツは魔法陣を展開した。


「ライメ様、あちらに着きましたら転移をお願い致しますよ」

「もちろん。僕に任せてください……」


 ライメはそうクランツに言われると、

 少し自信を持った表情で言葉を返す。



 そして――


 小さな氷塊はクランツの風に乗って吹き飛び、

 浮島へと一直線に向かっていく。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 一方、移動直後のトイフェルとフラメナへ時を遡ると、二人は移動直後からいきなり魔法の撃ち合いを始めていた。


「全く……扱う者が変われども、厄介なものだな。

 天理の力とはなァッ!!」


 トイフェルは紫の火球を放ち、それに対してフラメナは白染まりし火球を放って相殺。


「ふっー……厄介で結構。

 勝つのは私よっ!」



 天理を宿し魔法使いと魔理。

 戦いはついにフィナーレを迎える。

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