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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第十七章 魔城島 本丸編

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 間話 煌々あまねく人生の色

「ライメ、奢ってもらっちゃっていいの?

 しかも大盛りだからなおさら高いわよ……」

「お腹が空いてるんだろう?

 それにフラメナが遠慮する必要ないよ」


 食堂にて二人は食事を行う。


 フラメナは海鮮丼の大盛りを頼んでおり、

 ライメは相変わらず野菜と魚の刺身だった。


「ふふ……遠慮しなくていいなら遠慮しないわよ?」

「はははっ全然構わないよ」


 そうして二人は箸を持ち、

 その新鮮なる海鮮料理を口へと運び始めた。


「ん……こんな美味しい魚初めてだわっ!」

「魔城島付近で釣ったらしいけど……こんな美味しいなんて……何回でも食べれるね」


 生臭さもなく不快な食感でもない。

 味はほんのり甘く、食感は弾力もあり、

 噛めば噛むほど旨味が溢れ、肉などを超えているのかと思うほどの美味だ。


 光を少し反射しているのか、キラキラと輝くその丼は非常に美しいとも言える。


 食堂を照らす明るい火は、視覚的にも身体的にも暖かさを感じ、結界が崩壊した極寒の魔城島ではその暖かさがとても心地よい。


「フラメナは本当に美味しそうに食べるよね」

「ん″っ……急にどうしたの?」


 ライメは刺身を口に運び、

 ゆっくりと噛んで飲み込んだ後に話す。


「フラメナは貴族の中でも王族出身……

 幼い頃は良いものを食べてきたはずなのに、

 食べ物を残したりとか好き嫌いだとかしないよね」


 そう言われたフラメナは箸を止め、

 それについて話し始める。


「十歳の頃覚えてる? 私とクランツは旅に出て、

 ライメたちとは離れ離れになっちゃった時……

 私は旅でお城での食事とは、天と地ほどの差があるものばかり食べたわ」


 フラメナは続けて話す。


「色んなものを食べて、様々な味に触れたの。

 それに旅じゃ食料は貴重、自然とそう言うのは理解して今に至るってわけね」


 フラメナは椅子の背もたれに寄りかかり、

 ライメを見て口を開いた。


「それと、私は食事が好きよ。

 お腹いっぱいになれるってのもあるけれど、

 仲間との食事ほど楽しいものはないわ。

 それがライメとなれば一番ね!」


 ニコッと笑みを浮かべるフラメナ。

 ライメはそれを見て思わず目を逸らしてしまった。


「いきなり反則だよ……」

「ふふふっ、何照れてるのよ!

 ほら、食べましょ!」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 枯白1692年3月23日、午後10:38。


 ライメとフラメナは一緒のベッドで横になっていた。


「……フラメナ、僕になにか隠してない?」

「……隠してないわよ」


 二人は至近距離で目を合わせると、

 フラメナの足がライメの足を突く。


「そっか……ならいいんだけど……

 悩み事とかあったら僕に言ってよ?」


 フラメナはそれを聞くとライメの手を握り、

 ライメの胸へと耳を当てるようにくっつく。


「えぇ……言うわよ。

 悩み事があったらちゃんと言うわよ……」


 フラメナの頭をそっと撫でるライメ。

 二人の足は絡み合い、温もりを互いに感じていた。


「ライメの手ってなんでこんな冷たいのよ」

「なんでだろう……氷魔法使いだから?」

「ふふ、なによそれ……そんな単純かしら?」


 フラメナはライメの右手を両手で包む。


「でもフラメナの手はあったかいよ。

 案外単純な話かもしれないね」


 ライメは自身の手を包むフラメナの手を、

 少しくすぐりながらもそう言った。


「くすぐったいわね……!」

「ごめんごめん」


 フラメナは少し黙った後、

 ライメへと話し始める。


「私って、なんのために生まれてきたと思う?」

「ど、どうしたの急に?」


 フラメナはライメの手を握るのをやめ、

 背中へと手を回して抱きつく。


「特に理由はないけど……気になるのよ」


 ライメはフラメナの背中をさすりながら考え、

 ある程度纏った後に答え始める。


「世の中色んな人がいるけど、みんな共通して、

 幸せになるために生まれてきたんじゃないかな」


 フラメナはそれを聞いても返事は行わない。


「僕もフラメナも、幸せになるために生まれてきた。

 フラメナは今幸せ?」

「幸せに決まってるじゃない……」 


 ライメはそれを聞いて微笑んだ。


「なんのために生まれてきたか、

 そんなの深く考えなくていいんだよ。

 人生は案外ちっぽけなものって考えるのも、

 僕は良いんじゃないかなって思うよ」


 ライメのその言葉は少しだけ、

 フラメナの気を楽にした。



 決戦の日、フラメナは命を落とす。

 それは運命として決まっており、フラメナも覚悟はできている。


 だが、人の覚悟というのは、

 ふとした時に緩みやすい。


 ライメの背中を掴むフラメナの手は、

 少しだけ力が強まった。

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