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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第十五章 魔城島 三の丸編

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第百二十七話 四天の戦

 400年前、多くの戦士たちが命を落とし、

 魔王軍という存在を負かした全面戦争。


 戦には勝った。

 それでも完全に魔王軍を滅することはできなかったのだ。それ故にこうして今、魔王軍は再生する。



 今朝の空は少し曇天だ。


「エルトレー!」

「あ、やっと会えた」


 キャンプ地にてエルトレを見つけると、

 フラメナは興奮したように抱きつく。


 少しだるそうにしながらも体を揺さぶられるがままであり、内心少し嬉しそうにも見えた。


「エルトレも戦うのね」

「当たり前じゃん。一応帥級ね」


 すると少し離れたところから、ライメの耳に自分たちの名を呼ぶ声が入る。


「フラメナ、ノルメラさんも来たよ」


 手を振りながら走ってくるノルメラ。

 少し包帯を腕に巻いているが元気そうだ。


「フラメナさんお久しぶりっすね!」

「結構時間経っちゃったものね。

 会えて良かったわ!」


 友人との再会を経たフラメナとライメ。

 この日は城に攻め入る日である。


 ーーー


「城では魔王側近との戦いが予想される。

 分かってると思うが、あいつら全員怪物だ」


 キャンプ内にて、集まる君級戦士と将級上位の戦士たちへと向け、剣塵イグレットがそう伝える。


「この機会を逃せばまた魔王を倒せずに何百年も経ってしまう。だから必ず俺たちで倒すぞ」


 魔王がいるから魔王側近が生まれる。

 ここで討伐できなければまた大勢が死ぬのだ。


 皆の目には覚悟を示すかのような煌めきが瞳に宿る。



 黒城に攻める際、皆は四つの班に分かれる。


 剣塵班

 イグレット・パラトア・ルルス・オルテッド


 虹帝班

 ネル・ユマバナ・クラテオ・レイテン


 純白班

 フラメナ・ライメ・ノルメラ・エルトレ・ゲルトラ


 凍獄班

 エクワナ・レイワレ・メルカト・サルメト


 特筆して明記する戦力はこの程度だ。

 ノルメラやエルトレはフラメナが無理矢理班に入れたので、帥級ながらも主力にされている。


 ここに名がない者も実力は高く、

 それぞれの班が各魔王側近を対策している。


 剣塵班は憤怒 純白班は色欲

 虹帝班は怠惰 凍獄班は嫉妬


 上手くこの通りに戦うことができれば勝機はある。

 


 フラメナは会議のようなものが終わると、同じ班となったゲルトラという剣士と挨拶を交わす。


「ゲルトラさんよね? よろしく!」


 フラメナは手を差し出すと、ゲルトラはその手を握り微笑んで挨拶に答える。


「よろしくお願いします。

 評判は聞いてますよ。ものすごくお強いと……」


 フラメナはそう言われると胸を張って「まぁね」と言う。間を少し取ってゲルトラは自己紹介を始めた。


「ゲルトラ・テルメット。雷将級(らいしょうきゅう)剣士です」


 彼は二十四歳であり将級剣士だ。

 その歳で将級なことからとんでもなく強いはずだ。


「流派とかってなにかしら?」

「少し特殊なんですけど、点流派(てんりゅうは)というものです」


 フラメナはそれを聞いて興味津々に質問する。


「どう言った流派なの? 初めて聞くわ……本にも載ってないはずよ」


 ゲルトラは自身の師について話し始める。


「私の師匠はリルメット・アグラスト。

 3年前に戦死した君級剣士です。

 リルメット様の師匠が扱っていたのが点流派らしく、私はリルメット様の代わりにその流派を継いだのですよ」


 ゲルトラは点流派の戦い方について説明する。


 聞けば突き技が主流であり、

 ほとんどの攻撃が一撃必殺並みの威力らしい。


 もしそれが本当ならば強すぎる流派だ。


「めちゃくちゃ強いのね!」

「苦労しましたよ……師匠を殺した魔王側近を倒すべく、毎日倒れるほどには鍛錬しました。

 私の宿敵は色欲のエルドレ、絶対に奴を倒しましょう」


 なんというか真面目に見える謙虚な彼だが、

 内心は燃え上がる復讐心でいっぱいなのだろう。

 憎しみの強さが言葉の節々から伝わる。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 黒城までの道はすでに出来上がっている。

 その日の昼時、ついに黒城の前にて戦士が集う。


 静寂の中、皆は足を前へと出す。

 それにより城門をくぐり城内へと踏み入った。


 邪族の聖地、至る所に邪族が見える。


「俺たちは上を目指すだけだ。

 そこらへんの邪族は後続に任せるぞ」


 イグレットがそう言えば、四つの班の者たちは走り出して進んでいく。



「ドラシルちゃん。あいつら来たよ」

「……エルドレ、領域を」

「はーい」


 魔城島の黒城は三の丸、二の丸、本丸となっており、三の丸は城門を越えればすぐに見えた。


 三の丸にて魔王側近は集結している。


 エルドレは紫色の魔法陣を展開し、

 領域を展開すると、それは三の丸を中心に半径300を囲う領域となる。


「これで転移魔法も使えない。

 本丸には行けないと思うよ」

「相変わらずすごい領域だなー」


 エルドレの領域は侵入してきたフラメナたちの下にも広がり、皆の警戒度が上がる。


 フラメナたちは薄々察していた。

 三の丸に魔王側近が全員いることを。


 ーーー


「ようこそ、正義の旗の下奴隷ちゃんたち」


 三の丸に入ると、色欲のエルドレがシャンデリアにぶら下りながら話しかけてきた。


 エルドレがゆっくりと翼を広げて降りてくると、

 周りの扉から続々と魔王側近が現れる。


「圧巻の圧だなー」


 怠惰のフェゴは眠そうにして歩いてきた。


「揃いも揃って殺気立ってるのね」


 嫉妬のレアルト、彼女は口から舌を出してフラメナたちを睨んでいる。


 一人だけ別格な存在が現れる。

 憤怒のドラシル。


 凍てつく殺気が辺りに立ち込め、

 緊張感が高まった。


「まあ一人ずつ戦わせてくれるわけないわよね!」


 フラメナはこの領域内から転移魔法で移動することが不可能だと察しており、エルドレへと視線を向けながらそう言い放った。


「君たちが小細工を必死に考えて、僕ちゃんたちを追い抜こうとしてるのは素晴らしい努力だよ。

 でもね、バレちゃったら意味ないよねぇ」


 エルドレのニヤニヤとした表情。

 ネルがそれに対して疑問を投げかける。


「待ちなさい。それってどう言うこと?

 まさか情報が漏らされてるなんて言わないわよね」


 エルドレは上を向いて口を開く。


「残念、裏切りってのはよくあることさ」



 その発言と共に、一人が歩いて前へと進んでいく。


「なんじゃと……」


 思わず困惑の声がユマバナから出る。


「ごめんなさいね〜」


 前へと出ていったのは幻想のレイワレ。


 なぜ?


 そんな思いが皆に集う中、フラメナがその思いを代表してぶつけた。


「なんでそっちにいってるのよ!」

「利害の一致、私はべつに正義のヒーローなんて好きじゃないの。ただ新世界に興味があるだけ……

 そんなに驚くことかしら〜?」


 レイワレはそう言って首を傾げる。


「失望……堕ちるとこまで堕ちたな」


 メルカトがそう言えばレイワレは笑う。


「勝手に失望してていいわよ〜

 私がどう思われようと、私が楽しいと思えることだけに執着する。その方が人生楽しいわよ」



 レイワレは人族である。

 彼女は幼い頃から異常なほど好奇心が強かった。


 虫や小動物の解体、植物の生態、ほとんど全ての魔法などに興味を持ち、周りが一歩退くほどには強い好奇心を持っていた。


 だがしたいことばかりしていると人生はいずれ、

 薄まっていき味気なくなっていく。


 彼女はそんな思いが募り、いっそのこと世界が新しく生まれ変わってほしいと願っていた。


 君級となり富も名声も力も得て、

 初めて経験する圧倒的な強さを持つ敵。


 何年か前に彼女は西黎大陸で怠惰のフェゴと出会い、魔王軍へと入ることになった。


 表では君級魔法使いとして生き、

 裏では巨悪として生きる。


 心地良かった。

 

 楽しくてしょうがない毎日。

 レイワレに立派な正義感なんてものはない。


 常に自己中心的で、自身を楽しませるものだけに執着して生きる。それが彼女の人生だ。



「さぁ……どうする?」

「随分とナメてくれるんですね……

 僕の転移魔法がそんなに何度も……完全に阻害されるわけがないじゃないですか」


 そもそも作戦と言っても正面衝突は避けられない。


 魔理に直接攻撃が仕掛けられなくなっただけで、

 一つの班と一人の魔王側近が戦う構図は実現可能だ。領域内には三の丸と二の丸が存在する。


 十分戦うスペースはある。

 ライメは手筈通り、青い魔法陣を足元に展開する。


「うんざりなんですよ。

 貴方たち邪族はいつだって勝ち誇ったような嫌な笑みを見せる……そんなの悔しいじゃないですか。

 今回、勝つのは僕たちです……転移(エクリプス)!」


 そして怠惰のフェゴと虹帝班を残し、その場の全員が至る所へと転移する。



 怠惰のフェゴはめんどくさそうに壁に寄りかかる。


「勝つって……なんであいつは私たちに勝てると思ってるんだー? 私たちだって負けるつもりはないぞ」


 その発言にユマバナが言い返す。


「なら意地のぶつかり合いじゃな!

 どっちが頑固者か決めようぞ!」


「ちぇ……そういうのめんどくさいな〜」


 魔王側近四名。

 魔理を倒すには四名の討伐が必須だ。


 魔城島にて意地のぶつかり合いが始まる。

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