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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第十四章 純白魔法使い 魔城島編

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第百二十六話 上陸

「昔と変わらずバケモノじゃな……!」


 枯星ユマバナの眼前には巨大な波が迫っていた。


 多くの戦士を乗せた五隻の船は魔城島の沿岸部にて、陸地から一人の魔王側近によって上陸を阻害されている。


月破(ルナカゼア)


 怠惰のフェゴ。

 彼女は大きな魔法陣を足元に展開し、

 オリジナルの水魔法である月破を扱っていた。


 その魔法は海を持ち上げ、大きな波を作り上げ、

 それによって船を沈没させようとする。


 そこに向かって船から大量の魔法が放たれ、

 波が少し下がっていくと、そこに向けてユマバナが闇魔法を放った。


 その黒い渦のような闇魔法は水を吸い込み、

 波はだんだんと消えていって再び陸地が姿を現す。


「イグレット行ってくるんじゃ」

「お先」


 ユマバナの横から現れるイグレット。

 彼は剣を抜くと黒い風を纏いながら甲板から走って飛び出し、陸地へと向かって跳んでいく。


 狙いはフェゴ。

 いきなり常軌を逸した上陸方法を行うイグレットに、フェゴは驚いて後退する。


 そんなフェゴを襲う黒い風を纏ったイグレットの刀、フェゴは勢いがよく乗ったその剣を腕で防いだ。


「硬すぎだろう魔王側近ッ!」

「どういう上陸方法だよー……っ!」


 フェゴの腕にだんだんと刀が入っていく最中、

 横からイグレット目掛けて水の斬撃が放たれる。


 それを避けるためにフェゴから離れるイグレット。

 視線を攻撃の方に向けると、獣族の蜂族に分類される男が魔法陣を展開していた。


「いきなり大物は取れんぞい」

「部下なんているんだな」


 イグレットは剣を構え、そう言うとフェゴはイグレットを見ながら下がっていく。


「そういうことだー。私と戦いたいなら城まで来るんだなー」


 イグレットはそう言われ、追うこともなくフェゴの部下と思われる蜂の男へ体を向ける。


「簡単な話、皆殺しでいいんだよな」

「いくら最強の剣士とて、老いれば悲惨なものぞい。

 貴様からはほとんど重圧が感じられんぞ」


 イグレットはこちらを甘く見る相手に、

 口角を上げて楽しそうな表情を見せる。



「かっぁ……?」


 蜂の男は気がつけば首が切り落とされていた。

 彼の等級は帥級程度、だがその実力は将級に近いだろう。


 イグレットは既に蜂の男の背後に立っており、

 後ろに足を出して蜂男の膝裏を蹴って倒す。


「圧がなさすぎて気が付かなかったか?

 ごめんな。ちょっと今急いでるんだ」


 それと同時に船が次々と陸地へと近づき、

 続々と大量の戦士たちが降りてくる。


「あらあら、魔王側近は近くにいないのね〜」

「まずは部下たちなどで消耗させるつもりか?」


 そう言いながら上陸する二人の君級戦士。


 幻想、レイワレ・グラステッド

 海王、クラテオ・カルナルバ


 レイワレは四十歳の魔法使いであり、

 風と雷属性魔法を扱う。彼女の魔法は幻覚を見せる効果が多く、それ故の異名である。

 桃色の髪の毛を持ち、容貌が非常に若く見え、

 まだ二十代かと思わせるほどである。


 そしてクラテオは四十三歳の水魔法使いだ。

 その異名に恥じぬ水魔法の規模の大きさである。

 やろうと思えば島一つを沈めることだって可能だ。

 青い髪を後ろで纏める彼は長年東勢大陸の君級戦士として有名である。


「ユマバナさん……魔王側近はやっぱり城に全員いるんですか」


 不視、パラトア・シーファ。

 二十六歳の君級剣士であり、若い君級剣士だ。

 彼女は3年前の君級襲来によってガルダバという師でもある者を失っており、その時と比べものにならないほど強くなった。


 復讐心、それだけが彼女の原動力。


「まぁ待つんじゃぞ。

 相手側の城にこのメンバーで攻め入っても敗北するだけじゃ、全君級戦士が集うまで妾たちはこの島でなんとか耐えるのが役目じゃ」


 パラトアは少し不機嫌そうにユマバナへと背を向け、吐き捨てるように言う。


「なら雑魚を狩ってきます。

 安全確保は大事ですよね」


 ユマバナはそう言われ頷くと、パラトアは姿を消して戦場へと駆けて行った。


「まだ幼いのに可哀想じゃのう……」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 虹剣1692年3月21日。


 ついに全君級戦士が集った。


 この二ヶ月の間で魔城島の邪族は数を大きく減らしたが、同時にこちら側の戦士も多く数を減らした。


 だが不思議なことに魔王側近の部下などが攻めてくることはあっても、魔王側近自体が攻めてくることはなかった。


「魔理様、良かったんです?

 あいつら戦力を十分補充して準備満タンですよ」


 色欲のエルドレは紫の結晶の中に入る魔理、トイフェルにそう言う。


「君級戦士が集ってなにかマズいのか?

 お前たちが仮に攻め入ったとして、返り討ちにあってしまえば私はどうなる?」


 エルドレは苦笑いしながら反論した。


「でも……僕ちゃんたちめちゃくちゃ強いですし、

 初期の段階じゃ全員で攻めて勝てたんじゃ……」


「はっきり言ってやる。お前たちが勝てたとしても、

 君級戦士を全滅させるには至らない。

 それに私が一人になるリスクを考えろ。

 質も数も備えた敵というのは脅威だ」


 色欲は少し不機嫌なトイフェルを見ると、

 ニコニコとして頷く。


「そうなんですねぇ……申し訳ないですぅ」

「……いいから持ち場についていろ……作戦実行時に不在はドラシルが激怒するぞ」


 ーーー


 フラメナとライメは魔城島へと上陸した。

 少し整備された砂浜は一体も邪族は見えない。


「……なんだか重い雰囲気ね」


 フラメナとライメが砂浜を歩いていると、

 後ろから「あっーー!!」っという声が聞こえる。


「純白と冷宙さん!! 

 なんで邪統大陸から消えたんですか!」


 水将級魔法使い、レイテン・ユランドア。

 邪統大陸から何も言わずに去ってしまったので、

 彼女は二人を心配していたようだ。


「いやぁ……南大陸に敵がいて〜」


 フラメナの言い方じゃなにも伝わらない。

 ライメが代わりに南大陸での出来事を説明する。


「なるほど……まぁ……去るならなにか一つは言ってくださいネ。めっちゃ心配したんで!」


 二人は頭を下げて謝ると、ライメがレイテンへと現場を聞く。


「戦況ってどんな感じですか……?

 まだ僕たち来たばかりで」


 レイテンはそう言われると戦況を伝え始める。


「それもそのはずネ。純白・冷宙・笑死・凍獄の四人が最後の君級だからさ。

 あと戦況だけど、低等級の邪族はほとんど狩られてる。もう残ってるのは城付近に残る高等級の邪族と魔王側近のみだネ。

 こっちの戦士も結構やられたけど、君級たちはまだ重傷なし、将級戦士たちも多く残ってるヨ」


 まとめるとフラメナたちが最後の君級戦士であり、

 今は大きく戦場での戦いが起こっていない状況。

 主力の戦士たちは重傷なし。


 大きな問題は一つもないようだ。


「それで……作戦とかってあるの?」


 フラメナが聞くとレイテンは頷く。


「作戦はある程度決まってるネ。

 魔王側近とは城に入った瞬間確実に戦うことになるネ。そこで君級戦士たちが足止めされるんだけど、

 ライメさんは転移魔法が使えるみたいだから、

 フラメナさんとライメさんは魔王へと攻撃を仕掛けてほしいみたいヨ」


 ライメはそれに対して不安を吐露する。


「僕たち二人で魔王を倒すのはさすがに……」

「大丈夫って言いたけど……あれを私たち二人じゃキツいわ」


 レイテンはそう言われると、手を振って笑いながらそれについて詳しく話し始める。


「もちろんガッツリ戦ってもらうわけじゃないヨ!

 ちょっかいをかけるだけでいいらしいネ」

「それって意味あるんです……?」


 ライメがそう聞くとレイテンは答える。


「意味はある。

 この作戦の一番大事なところを話し忘れてたネ。

 幻想のレイワレさんは幻覚を見せることが出来る。

 魔王に幻覚を見せるためにはちょっかいが必要なんだ。そこで二人が必要なんだヨ

 幻覚を見せれば確実に魔王に隙が出来る。

 そこをフラメナさんがトドメを刺すんだヨ!」


 そう言われてフラメナとライメは顔を合わせ、

 上手くいくのかと不安を共有する。


「まぁ……とりあえず戦えばいいのね!!」


 作戦も戦況も知れた。

 決戦の日は近い。



 全面戦争がついにクライマックスを迎える。

 討つべきは魔王、踏み入るは邪族の巣窟。


 虹剣1692年3月22日。

 黒城へと侵攻がついに始まる。


 これは400年間の魔王軍の動きに対しての、

 多くの者たちが行う反撃だ。

第十四章 純白魔法使い 魔城島編 ー完ー


次章

第十五章 魔城島 三の丸編

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