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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第十三章 純白魔法使い 運命編

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第百二十話 訪れる災厄

 虹剣1691年9月13日。


 ライメが教師の仕事により家にいない時間帯にて、

 フラメナからすれば慣れ親しんだ訪問者がやってきた。


「久しぶりよね? 今お時間大丈夫かしら?」


 玄関の扉を開けると顔を見せる運命のシノ。


 相変わらず黄金の瞳に髪を持っている彼女からは、

 普通の生き物のオーラが感じられない。


「全然いいわよ! パフラナのお世話をしながらになるけど大丈夫?」

「えぇもちろん」


 そうして二人は家の中に入り、

 リビングで二人は向かい合ってソファに座る。


 フラメナはパフラナを抱っこしながらで、

 シノはこちらへと視線を向けてくるパフラナへと笑みを返した。


 パフラナはその笑みを見ると嫌そうな顔をして、

 そっぽを向いてしまう。


「あらあら……私ってそんなに愛想悪いかしら?」

「あー……パフラナは結構好き嫌いがハッキリしてるし、渋い人の方が好きだからしょうがないわよ」


 フラメナがそう言うとシノは背もたれに寄りかかり、本題へと入るため間を取って話を始める。


「じゃあ早速本題に入りましょうかしら。

 私が来たのは三つ目の運命を教えるためよ」


「一つ目が魔王側近の襲来で、

 二つ目は邪統大陸での戦いでしょ?」


 シノは人差し指を立てて黄金の球を出現させる。



「三つ目の運命……フラメナさん。

 貴女は魔理との戦いで″命を落とすわ″」



「え……? あぁ元の運命がってことよね!」


 シノは暗い表情を見せた。


「いいえ。確実に貴女は死ぬわ」


 フラメナはそんな言葉に唖然としてしまう。

 理解が追いつかないまま、シノが説明を始めた。


「魔理はこの世の魔力の全てを管理していて、

 奴が死ねば魔力の概念は管理下から外れるわ。

 そうして力が無限に増え続けて最終的に、

 世界はたった一日で無に帰してしまうの。

 大地も海も空も……生命も全てが魔力で出来てる。

 魔理は悪でありながら、この世界を維持するのに欠かせない重要な存在なのよ」


 告げられる一つの終末。


「じゃ……じゃあどうしようもないじゃない!」

「今言った運命は貴女が最善のために死ななかった場合の話よ。ここからが貴女の運命」


 シノはフラメナへと非情すぎる運命を告げる。


「フラメナさんには天理の欠片が染み込んでいるわ。

 その力の本領は他の理の管理。

 言わば支配が可能なの。

 フラメナさんの身に宿る天理の欠片の力を全て使って、魔理を封印する。それが世界が崩壊しない結末」


 シノは一つ間を置いて続けて話す。


「でも……その行為は反動が大きすぎるがゆえに、

 確実にフラメナさんはその命を落とすわ。

 世界諸共死ぬか、自身を犠牲に世界を救って死ぬか……これは貴女の選択よ」


 シノは寄り添うことなく、フラメナに全ての選択を任す。


「そんな……ねぇ。三つ目の運命を教えたらもう教えてくれないのよね?」

「えぇ、私が生涯のうちに運命を他人に漏らせるのは三度だけ。何千年も溜めて貴女に全てを伝えたの」


 フラメナはパフラナが自身の指を握り、

 思わず顔を見てしまう。


「……魔理と和解は?」

「不可能よ。あいつは誰が説得しても曲がらない」


 深くため息をつくフラメナ。


「私は……一体なんのために生まれてきたの?」


 シノはそんな言葉に口を開けない。


「やっと幸せになれた。やっと強くなれた。

 それなのに……全て努力で乗り越えて……

 ここで終わりなんて、認められないわっ……!」


 フラメナは叫んでしまいたくなる気持ちを抑え、

 大きな声を出さずに声を震わせながら話す。


「運命は常に平等……貴女が他よりもずば抜けて魔法の際に溢れているように、どこかで釣り合いが取られるんです」


 シノのそんな言葉にフラメナは唇を噛み締める。


「だったら要らないわよ……こんな運命なら私は魔法なんかの才能に恵まれたくなかった……!」



 フラメナの人生は過酷だ。


 七歳の頃に周囲と違うことに気づき、

 十歳の時に故郷を離れ旅を経験する。


 そして十二歳の頃に両親を亡くし、

 そこから二十歳まで何度も命の危機を身近に感じながらも、未来を信じて生きてきた。


 守りたいものがあるからフラメナは強くあれた。


 守ると言ってもそれは自己中な思いであり、

 フラメナはそう自分に言い聞かせていた。


 いつか訪れる平穏を願い、一時の苦難を乗り越え、

 長く幸せを感じるのが夢だった。


 だがフラメナの運命は死の一色。

 

 何をしても死ぬと言われ、

 取り乱さない者はいないだろう。

 それこそ、未来に強く希望を抱いていた者ほどだ。


「フラメナさん。貴女がどちらの選択をしようと、

 私は何も否定しません。終わりは伝えました。これからどう生きるかも貴女次第ですよ」


 シノはそう言って立ち上がる。


「ただ一つだけ……助言するのであれば、

 迷った状態は想像以上に弱いですよ。

 また来ますね。フラメナさん」


 シノは指を鳴らすと青い光に包まれ、

 転移したのかその場から消えた。


 部屋に残るパフラナとフラメナ。

 しばらくフラメナは動くことはできず、

 ただ自身の運命の行末を何度も想像していた。


 気がつけば何時間か経っていた。


 パフラナは寝ており、フラメナはそっとパフラナをソファに寝かせると立ち上がる。


「……よし」


 フラメナは気持ちを入れ替え、いつもと変わらない表情で家事を始める。


 フラメナは自身の運命を皆に伝えないことにした。

 そうして何事もなかったかのように日常を過ごし、

 二ヶ月が経った。


 雪が降り始めた南大陸に中央大陸からの一つの手紙が届く。



 ーーーーーーーーーーーーーーーー


 虹剣1691年11月18日。


 中央大陸から南大陸へと送られた手紙の内容、

 それは以下の内容だった。


『南大陸の戦士、そして女王フリラメへと通告する。

 邪統大陸にて防衛戦争が始まる。

 契約通り、加勢をお願いする。

 戦士の九割を邪統大陸へと向かわせるように』


 研究所にてフリラメはそんな手紙を見て、特に大きく反応することもなく、小さく頷く。


「半月で送ってきたってことは、

 だいぶ急いでるのね」

「すでに戦いが始まっているのでしょうか」


 クランツがそう聞くとフリラメは頷く。


「多分だけど今は弱い邪族たちが攻め始めた頃よ。

 邪統大陸には最低でも三ヶ月……やっぱりあの港を作り直して使うしかないかしら」


 それは今は亡きレーツェル王国に存在したケルエイ港だ。その港は邪統大陸と南大陸を結ぶ航路を持っており、南大陸が滅亡した際に航路を失った。


 だが海自体の環境は変わってないので、

 同じ航路を辿れば安全は確保されている。


 ケルエイ港を使えば、東勢大陸の戦士たちも戦場へと素早く向かうことができるので、一石二鳥だ。


「クランツ、ゼーレ王国全土に招集をかけましょう。

 邪統大陸に参加する戦士は、一級以上の四十歳以下の者のみよ」


 クランツは少しそれに驚いたように話す。


「わたくしは戦争には参加できないと……?」

「四十歳超えの戦士たちは体力が落ちてる。

 クランツが強いことはフラメナからよく聞かされたわ。この前の強欲襲来時も戦ってくれたわよね。

 でも、だからと言って戦う必要もないと思うの。

 ここは若い戦士たちに任せましょ?

 ……それとクランツが戦いに行ったら、

 私の護衛がいなくなっちゃうわ」


 フリラメはそう言って微笑むと、

 クランツも納得したように頷く。


 翌日、ゼーレ王国内に戦士招集の紙がばら撒かれる。


 ついに本格的に全面戦争が近づいてきた。

 フラメナとライメはパフラナをフリラメに預け、

 家を出ようとすると、シノに出会う。


「よく会うわね……」

「あら、私の顔は嫌い?」

「べつに嫌いじゃないわよ」


 シノはどうやら一つ言いたいことがあるようだ。


 助言。


 それが後にフラメナの運命を変えることとなる。

第十三章 純白魔法使い 運命編 ー完ー


次章

第十四章 純白魔法使い 魔城島編

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