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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第十二章 純白魔法使い 強欲編
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第百六話 御祭り騒ぎ Ⅰ

 歓喜を司る姿となったユーラル。

 戦い方も魔力量も全て変わっている。


「魔王側近ってのは黄金が好きなのかしら?

 みんなピカピカしてるわよね……」

「意識したことはないんじゃがのう。

 お主は金ピカは嫌いか?」


 フラメナは魔法陣を展開して言う。


「別に嫌いじゃないけど、いい思い出はないわ」

「そうか……残念じゃ。お主にとって金ピカは生涯邪的存在になってしまうのう」


 電撃がユーラルの拳へと纏わりつき始める。


「属性が変わっ……」

「遅いのうゥ!!」


 電撃纏う拳がフラメナの腹部を強く殴り飛ばし、

 一気にフラメナは後方へと吹き飛んでヨルバたちの下に戻される。


 少し震えながらも立ち上がり、鋭い目つきで奥に見える電撃を纏ったユーラルを見つめる。


「フラメナ様! 大丈夫ですか」


 ヨルバが心配そうにそう言うと、フラメナは笑顔を見せて「大丈夫」と言い、ユーラルの情報を伝える。


「あいつ、九回も戦い方が変わるらしいわよ……

 それにさっきまでの強さとは比にならないわ。

 三人とも力を貸してちょうだい」


 フラメナがそう言うと、ヨルバ、ルルス、ユルダスは了承し、四人でユーラルへと向かっていく。


「よくもぶん殴ってくれたわね。百倍返しで泡吹かせてやるわ!」


 ユーラルは違和感を感じていた。


 さっきの殴りであまりダメージが入ってない?

 おかしい。いくらなんでも内臓くらいは破裂してるはずじゃ……再生した様子もない。

 

 ユーラルは自身の拳を見て少し驚いた。


 血……まさか咄嗟に何かを挟んだのじゃ?


「やっと気づいたのね? あなたたちは再生ばっかしてるから痛覚が乏しいのかしら? 殴られた時に咄嗟に拳を土魔法で防いだのよ」


 ユーラルはそう言われ、嬉しそうに口角を上げた。


「あっはははっ! やっぱりだ!

 全然弱くない、むしろ脅威的な強さ……

 愉快だっ! もっと妾を喜ばせよ!」


 ユーラルは拳を一瞬で再生し、電撃の跡が残るほどの速度で四人へと突っ込んでくる。


 速度は凄まじく、ヨルバを除いた三人は目で追うのがやっと、拳を弾き返したのはヨルバだった。


「目がいいんじゃのう……」


 ユーラルはヨルバから離れようとした瞬間、

 肩から腰にかけて切り裂かれ、流血しながら後退りする。


「は……?」

「そうやって油断してるから切られるんだぞ」


 いつの間にかユーラルの背後に立っていたユルダス、ユーラルが振り返って電撃を放とうとした瞬間、

 再度その傷口から水の斬撃が生み出され、深傷をその身に受ける。


「っぐう! 小細工が達者なのか!」


 ユーラルがそう言って即座に再生を終えると、

 ユルダスへと攻撃を仕掛ける前に首元へと刃が迫る。


 それを間一髪姿勢を低くして避けると、足へと何かが絡まる感触と共に地面へと転ぶ。


 転ぶ際に見えたルルスの腕から伸びるツタ。

 それが自身を転ばせたと理解する。


「まずっ……!」


 背中を無様に晒すユーラルへと横一文字に斬撃を放つヨルバ、それによって胴が切断され、地面が一直線に割れる。


 思わず血を吐き、再生を行おうとすると、

 ヨルバに再び背中を切りつけられ、再生が途絶え、

 フラメナがこちらへと走ってくる音がする。


「ヨルバ! 退いて!」


 ヨルバがそう言われて後ろに跳ぶと、

 フラメナが白い火を纏った手ユーラルへと向ける。


「まっ!!」


 次の瞬間、背中へとフラメナの手が当たった瞬間、

 巨大な白き火柱が天へと昇り、辺りの召喚体の黄金の輝きが消えて黒色へと戻る。


 フラメナはユーラルから離れると、

 まだ警戒を解かずに煙を見つめる。


「やっぱり生きてるわよね……!」


 先ほどまでとは違い、青い瞳に変わったユーラルが煙から出てくる。


 予想するにまた人格が変わったのだろう。


「あーぁ……悲しいなぁ。

 油断するなって言ったのにぃ……」


 歓喜の雰囲気はパタリと消え、今にも泣きそうな声で話し出すユーラル、暗い雰囲気が辺りに充満する。


「フラメナ様、九回倒せばこちらの勝ちなんでしょうか、見たところ……魔力量が毎度変わってる気が……」

「わからないわ……でもとりあえず倒し続ければいいだけよ。私たちなら勝てる敵だわ!」


 フラメナがそう言うとユーラルは自身の尻尾を三本掴み、無理矢理引きちぎる。


「うへぇいきなり何してるんです〜?」


 ルルスがいきなり自傷行為を始めるユーラルへとそう言うと、ユーラルは語った。


「妾たちは勝ちにきてるんだぁ……

 だからね、少しは策を使わせてもらうよ」


 そうユーラルが言った瞬間、辺りに冷気が漂う。

 背筋を撫でる不快感、ユーラルの持つ尻尾が妙にうねりだし、地面へと置かれる。


「恐怖、歓喜、激怒、出番だよ」


 そう言った瞬間辺りへと一気に充満する強大な魔力。


「まさか……」


 ユルダスが察するこれからの戦況、それは他の三人もある程度理解していた。


「そうだよ……妾たちは何も一体一体でしか出てきてないわけじゃない。四対四、平等に行こう」


 地面に置かれた尻尾たちが人型へと姿を変えていき、赤、黄、緑の体毛に変化したユーラルが現れる。


「増えすぎじゃないかしら……?」


 ユーラルがなぜ序列四位なのか、

 ここで初めてフラメナは理解できた。


 確かに単体での力は魔王側近の中じゃ最弱かもしれない。だが自身の複製が作れるのならば話が変わる。


 いくら弱いとて君級ほどの力は持つユーラル。

 それが四人一気に襲いかかってくれば、地獄絵図など容易く描ける。


 一対一で全員が勝たねばならない。


「もうちょっと休みたかった……怖いよぉ」

「早く殺し合おうぞ、待ち切れぬ」

「あーあ、さっきは喜ばしくない死に方したなぁ」

「悲しいね……妾たちはちっとも弱くない。

 お主たちを本気で殺しにきたんだ。覚悟してね」


 それと同時、一気にユーラルたち四人が動き出して、各々の一人ずつ相手取る。


 ガキンと音を立てて後退するヨルバ、

 相手には激怒がやってきた。


 ルルスへと電撃を放つ歓喜、それを避けながらルルスは皆がいる場所から離れていくと、ルルスと歓喜の姿が見えなくなった。


 フラメナへと放たれる超高速の水の斬撃、

 それは悲嘆を冠するユーラルの攻撃であり、フラメナは脇腹から出血するもすぐに再生を行う。


 固まって戦うのはフラメナからしても不利であり、

 あえてその場から走って悲嘆を別の場所へと誘き出す。


 ユルダスは恐怖を冠する複製体と向き合っており、

 大量の召喚体が目の前に出てきて苦笑いをする。



 こうして戦う相手が全員見つかった。

 これにて戦場へと多くの魔力が散り始める。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 悲嘆と対するフラメナ。

 とてつもない早さで繰り出される水の斬撃に、フラメナは只々苦戦していた。


 今のフラメナではほぼ目視が不可能なほどであり、

 どんどんとフラメナの体が切り裂かれては再生する負のループへと陥る。


「悲しいよね……見えないってのは辛いよね」

「同情してないってことは煽ってるのね……いい度胸だわ。真正面から叩き潰してあげる……っ!」


 そう言った瞬間、フラメナの肩が切り裂かれる。


「でもさ……このままじゃ勝てないよね」

「あーっ本当にイライラするわね!!

 煽ってくんじゃないわよっ!」


 フラメナは白い火球を大量に作り出して飛ばすと、

 悲嘆は水の壁を多く作り出し、正面から全て防ぎ切る。


「嘘っ、どんだけ魔力込めてるのよ」


 フラメナの火球は短縮発動であったとしても、

 そこらの将級魔法使い並みの威力は持っている。


「防御は完璧にしないと……痛いのは悲しいから」


 悲しいと言うより辛いの方が正しそうだが、

 フラメナがそう疑問を抱く前に水の斬撃が大量に飛んでくる。


「っ……まだ使いたくなかったけど!」

「あぁ……使うんだ」


 フラメナは腕を横へと突き出すと腕の上を白い火が走り、瞳が桃色に変化して髪の毛の末端が赤く染まり、手足が少しだけ白く染まる。


 瀕死時に見られる完全な状態ではないが、

 自主的に発動できるこの状態の練度も2年で上がり、不完全ながらも非常に強くなっていた。


 この状態で特に強化されるのは視力と魔力。


 魔眼(まがん)魔彩(まさい)の目によりフラメナは相手のオーラを見ることができる。

 そこが強化されれば攻撃の予測が可能となる。

 微かなオーラの動き、それが予測の要なのだ。


 悲嘆は変わらず水の斬撃を放つと、それを避けて走ってくるフラメナに追加で何発も斬撃を放つ。


「それが最高速度なの? それじゃあ遅いわね!」


 それすら避けられ、悲嘆はフラメナから放たれる火球を腕に受けてしまい、自主的に腕を切断して再生する。


「悲しいこと言うなぁ……確かに強いね。

 腕落とす羽目になってるし……でもさ、少し優勢になったと思ってない? それ勘違いだよ」


 次の瞬間、空を切り裂く轟音が響く。

 それと同時に一瞬でフラメナの胸を大きく切り裂く水の斬撃、速度は先ほどのものを容易く超えており、

 何が起きたのかもわからずフラメナは吹き飛んで倒れる。


 本能的な動きで深傷にはならなかったが、

 目視はほとんど出来なかった。

 集中して少し見えるかと言うほどである。


「がっぁ……」

「なんだか勘違いしてるみたいだから言っておくけど……妾たちは君級なんて強さじゃない。

 ″魔王側近っていう別枠の強さなんだ″」


 フラメナ以外の三人も苦戦していた。


 ルルスの剣は見切られ、

 ヨルバの刀は殴打に押し返され、

 ユルダスは湧き出る召喚体に埋もれかけていた。


 歓喜はルルスを凌駕する近接の速度。

 激怒はヨルバの斬撃よりも威力の高い殴打。

 恐怖はユルダスを圧倒する量の召喚体。


 悲嘆はフラメナが認識できない速度の魔法。


「誰一人死なずに終われるわけないよ。

 悲しいよね……でもそれが現実、この世界なんだ」


 フラメナは傷を再生して立ち上がる。


「随分ナメてくれるのね。

 私たちだって簡単に勝てるとは思ってないわ。

 でもね……なにがなんでも勝つ気よ」


 真っ直ぐなフラメナの視線。

 悲嘆は舌打ちをして魔法陣を大量に展開する。


「悲しくないな……死んでもらいたくなったよ。

 何度でも言うけど妾たちは勝ちにきてる」

「ならこっちも言ってやるわ。

 あなたたちなんか負かしてやる」



 魔王側近との乱闘が始まる。

 個々での勝利が全体の勝利へと繋がる戦い、

 だが戦士は彼らだけではない。


 この魔王側近襲来は明確な南大陸の危機。


 集え戦士、守るのだ、この南大陸を。

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