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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
幕間 恋果ての魔法使い
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第百三話 私は太陽として

 虹剣1689年2月14日。


 フラメナは誕生日を迎え、十八歳となった。

 そしてこの日、結婚記念日でもある。


 結婚式のようなパーティーは午前10時から開始され、多くの知り合いが訪れる。


「ご結婚おめでとうございます」

「二人ともお似合いよ」


 クランツとフリラメは、フラメナとライメへとそう祝いの言葉を投げかける。


「二人ともありがと! 今日は楽しんでってちょうだい!」


 フリラメとクランツが二人から離れると、

 続けてルルスとノルメラがやってくる。


「おめでたいですね〜」

「おめでとうっすフラメナさん。

 それと初めましてっすね。フラメナさんの後輩やらせてもらってるノルメラっす!」


 いつも通りのルルスと、明らかに年上なのにも関わらず、フラメナの後輩と自称するノルメラ。


 ライメは少し違和感を感じながらも挨拶を返す。


「初めまして、遠慮なく楽しんでってくださいね」


 ルルスとノルメラは頷き、二人は奥へと歩いていった。


 すると、少ししてエルトレとラテラがやってくる。


「久しぶりフラメナ、それとライメ。

 おめでと、やっと結婚したんだ」

「フラメナさんとライメさん……

 いつ見てもお似合いですね」


 エルトレは軽くフラメナへとそう言い、

 ラテラは二人の纏う幸せな雰囲気を見てくらくらしていた。


「久しぶりねエルトレ、ラテラは大丈夫なの?」

「あぁ、まぁ大丈夫、あたしがいるし……」


 ライメがラテラを少し支え、エルトレへと問う。


「酒場の方は順調?」

「ふふふっ、超順調、驚くくらい繁盛してるよ」


 エルトレの酒場は店を開いてから一ヶ月。

 この短期間で注目を浴び、料理の美味さと安さから連日人が訪れる。


 常連獲得度が凄まじく、

 早くも愛される酒場となった。


「今日出てくる料理はフラメナとライメの手料理でしょ? 期待してもいいんだよね」

「もちろん! 絶対美味しいからたらふく食べていきなさい!」


 エルトレは口角を上げて嬉しそうにすると、

 ラテラを連れて部屋の奥へと向かう。


 先まで二人ずつ人がやってきていたが、

 ここになって一気に人が増えた。


「ユルダス!」

「よっ、飾りつけは無事に終わったんだな」


 現れたのはガルドンとヨルバ、

 そしてユルダスとレスミアだ。


 ガルドンはフリラメの執事であるが、

 最近はクランツと交代で執事をやってるらしく、

 今日は執事じゃない日のようだ。


 君級剣士のヨルバ、ユルダスの父でありなんとなくだが、顔からクマも消えて今は活力に溢れているように見える。


「フラメナお嬢様、久しいですね。

 ご無事に旅を終えられたことに遅いながらも感激しています」


 ヨルバの気難しい言葉にフラメナは文句を言う。


「もうちょっと柔らかく話せないかしら?

 せっかくのパーティーだし楽しんでって!」

「わ、わかりました……」


 ライメはユルダスが気になっていた。

 ヨルバと再会した際になにかあったはず、それを知るべくライメはユルダスへと問う。


「ユルダス、ヨルバさんとは無事に……?」

「あぁ父さんは許してくれたよ。

 なんなら泣いてくれた」


 するとヨルバが少し声を大きくして言う。


「ユルダス……! その、息子がまさか生きていたら感情が昂るのも仕方ないだろう」

「だそうだ」


 ユルダスは笑いながらそう言えば、ライメとフラメナは二人の関係が良好なことを察し、安心する。


「妻ってだけでパーティーに参加しても大丈夫ですか?」

「気にすることないわ! 楽しんでいきなさい!」


 ユルダスの妻であるレスミア。

 そう言われ安堵の表情を浮かべ、四人は部屋の奥へと向かっていった。


 フラメナは実は他の大陸にも招待状を出している。


「まさか俺を呼んでくれるなんてな。

 常連さんに恵まれたもんだ」


 やってくるは東勢大陸の料理人ダスラトだ。


「あーっ! ダスラト来てくれたのね!」

「誘われたら断れないんでな。

 せっかくここまで来たから楽しませてもらうぞ」


 ダスラトはそう言って部屋の奥へと向かった。

 あっさりとした会話、それが彼の特徴でもある。


 すると久しく会う者たちがやってくる。


「お主たち久しぶりじゃのう!」


 ユマバナとエクワナ、そしてカイメにリクスだ。


「師匠も来てくれたんですね……」

「当たり前じゃ、トヘキじゃなくても妾の愛弟子じゃからな。ちゃぁんと来てやったぞ」


 ユマバナはエルフ族特有の耳を少し動かしながら、

 誇らしそうに言った。


「リクスちょっと身長伸びた?」

「そんな伸びてないぞ……多分」


「フラメナお嬢ちゃん久しぶり!

 ついに結婚とは驚きだよ〜」


 エクワナはそう言って近づいてきて、

 フラメナの肩をポンポンと叩いてくる。


 四人はフラメナとライメの横を通り過ぎて、

 部屋の奥へと向かっていく。


 これにて全員だろうか。

 フラメナとライメが玄関から去ろうとした時、

 一人の女性が彼らを呼び止めた。


「参加ってできるかしら?」

「「っ!?」」


 二人が振り返ると、視界に映る姿に驚いた。


 執理政、運命のシノ。

 この前会った時以来、彼女は姿を現さなかった。


 何やら研究をするだとか言っていたが、

 結局音信不通だったので何がしたいのかわからない。


「なんの用事……?」


 少しフラメナが緊張したようにそう聞くと、

 シノは微笑んで意外な答えを返してきた。


「ただ祝いに来ただけよ。

 それ以外に用事なんてないわ。それとも今すぐにでもライメさんを借りていってもいいのかしら?」


 シノは冗談混じりにそう言う。


「本当に祝いに来ただけなの……?

 正直、なんかあるとしか思えないのだけれど……」

「かなり疑うのね。私の服装をよく見なさい。

 こんなに普通の人らしい服装なんだから、本当にただお祝いしに来ただけよ。

 それに長居するつもりはないわ」


 シノはそう言ってその場から立ち去ろうとすると、

 フラメナが咄嗟に手を掴んで止める。


「待ちなさいよ。せっかく来たんだからどうせなら楽しんでいって。服だってこのために用意したんでしょ? その……歓迎するわ」


 シノは少し驚いたような顔をした後に、

 フラメナの方へと近づいて、そのまま手を離されると部屋の奥へと向かって歩いていった。


 彼女の横顔は少し嬉しそうなものであり、

 妙に冷たい手に反して心があることがわかった。



 誕生日&結婚式のパーティーは一日中続いた。

 もちろん主役はフラメナとライメだが、

 それ以外の者たちも非常に楽しんでおり、まさに幸せ空間。


 パーティーのクライマックスとして、ライメがフラメナの指へと指輪を嵌めるイベントがあった。


 ライメが頭を悩ませ、長い間決められずに迷い続けた指輪、それは南大陸で取れる非常に希少な鉱石。


 それは真紅の宝石とも呼ばれるネッガート。

 火属性が多く込められている宝石でもあり、

 ライメはそんな指輪を選んだ。


 石に込められる言葉は、一途な愛・生命力。



 フラメナの前にて膝をつき、指輪をゆっくりとフラメナの細くも温かく、燃えるような魔力が宿ったその指へ嵌める


 キラキラと輝く赤き宝石、フラメナはそんな指輪をとても気に入り、無理矢理ライメを立たせて思いっきり抱きついた。


「気に入ってもらえた……?」

「すっごく気に入ったわ! 大好きよライメ!」


 二人は間違いなく長続きするだろう。

 あまりにも互いのことを思っている。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 私はこうして結婚を果たした。

 まだあの日の心のざわめきは忘れられないし、

 指輪のことは大切にしてるわ。


 ライメが私を必要とすれば私はそれに応える。

 その代わり私もライメを必要とする。


 どちらかが欠けてしまったらなんて想像したくない。私は死ぬまでライメと一緒にいたいから。


 それにしてもこの宝石綺麗ね……


 私は太陽だなんて言われてるけど、みんなを照らすのはお姉様だけで十分だわ。


 私は集中して照らしたい人がいるの。


 この19年間、たくさんのことを経験してきた。

 魔法を拒絶されたり、格上すぎる邪族と戦ったり、

 思いのすれ違いを起こしたり……別れを経験したりしたわ。


 決して幸せなことばっかじゃなかった。

 でも、かなり今は幸せだと思う。


 だってこんなにも私たちの結婚を祝ってくれる人がいて、私を一番に考えてくれる人がすぐそばにいる。


 っふー……強くなった理由。

 それはこの状態を守るため……大丈夫。

 私は一人じゃないし、私は強い。


 奪わせない。

 なにがなんでも私が守る。


 ーーー


 襲いかかる運命。

 それへと争う純白魔法使いフラメナ。


 彼女は天理を身に宿し、守りたいものを守りきれるのだろうか、残酷にも世界はここから黒い渦へと呑み込まれていく。

幕間 恋果ての魔法使い ー完ー


次章

第十二章 純白魔法使い 強欲編

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