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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第十一章 恋する魔法使い 魔法学校編
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第百一話 新世代

「フラメナ様、私たちと戦ってください!」


 邪族の討伐が終わり、夕暮れ時の学校前にて、

 フラメナはライメのある生徒四人にそう話しかけられた。


「戦ってどうするの?」


 フラメナがそう聞けば、ピカロト・シクルアという者が返答した。


「私たち勝てない事はわかってます。

 でも、それでも一度戦ってみたいんです!」


 フラメナはそう言われ他三人の顔を見ると、

 満場一致で自身と戦いたがっていることを知る。


 だがフラメナとて自分の力を知らない魔法使いではない。普通に戦ったら殺してしまうかもしれない。


「……なら条件よ!

 あなたたちは魔法、私は素手。

 私の勝利条件は全員を地面に寝かせること、

 そっちの勝利条件は私に魔法を出させること。

 勝ったらそうね……あなたたちが勝ってから決めるわ!」


 圧倒的に不利なハンデを背負うフラメナ、

 生徒四人は嫌でも力の差を理解させられる。


「戦いは明日にしましょ。

 今日はゆっくり休んで明日に備えなさい!」


 フラメナがそう言えば四人とも返事をし、

 生徒四人たちとも別れ、ルルスも途中で家に帰り、

 ライメとフラメナは帰路を行く中、あの四人について話していた。


「ライメ、あの四人の中じゃ誰が一番強いの?」


 フラメナがそう聞けば、夜空へと染まり始める空の下、ライメはそれに答える。


「エクドラ・ハテルマド、今は間違いなくこの子が一番強いね。十四歳で無呼称魔法、イタズラ好きだけど実力は確かな男の子だよ」

「水魔法使いの子? オーラが少し周りより多くて私も目をつけてたのよね」


 ハテルマドはライメの初出勤時に水をぶっかけようとした問題児。だが水魔法をあっさりライメに防がれてからは大人しい。


 彼は間違いなく天才。

 クラスの中でもずば抜けて強く、魔法使いとしては一級ほどの強さは持っている。


「あの子はまだまだ伸びるよ。

 まだ挫折を経験したことがないから、そこら辺はフラメナに任せちゃおうかな」


 微笑みながらそう言うライメ、

 フラメナはそれを聞いて声を大きくして言う。


「任せなさい! ボコボコにして泣かせてやるわ!」

「そこまではしなくても……」


 苦笑いするライメ、その日も二人で宿に帰る。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 虹剣1689年1月19日。


「さぁかかってきなさい!」


 雪が積もる平原の中、ぽっかりと雪が溶けた範囲があった。そこはフラメナと生徒たちが手合わせをするための場所である。


 フラメナの四方に散らばる生徒たち。

 戦いの合図となった言葉に反応し、各々が魔法陣を展開する。


 だが一人だけ発生が異常に早かった。

 そう、ハテルマドだ。


 無呼称による魔法の発動。

 水の槍が大量に空中に作り出され、フラメナへとそれが飛んでいく。


「嘘っ!?」


 ハテルマドが驚きながら後退すると、

 フラメナが水の槍を横へと走って避け、

 そのまま距離を一気に詰めて殴りかかってくる。


 本来、魔法使いはここまで動けないものだ。


 なぜなら中遠距離戦しか行わない魔法使いに、

 近距離での俊敏性はあまり必要ないからだ。


 ハテルマドへとフラメナの拳が迫った瞬間、

 フラメナは死角から腹部に迫る氷柱を片手で掴み、

 そのままそれをピカロトの方へと投げつける。


 ピカロトは高速でこちらへと飛んでくる氷柱を雷魔法で破壊する。ピカロトは内心ドン引きだった。


 なんで今のが見えてるんですか……!

 明らかに死角……フラメナ様は肌で魔力を感じ取るのがうますぎますね。


 ピカロトへと反撃したフラメナ、それにより一瞬隙ができたのでハテルマドは後退する。


 再び距離を離されるフラメナ、するとフラメナは横へとあえて倒れ、地面に手をついて立っていた場所へと放たれる火魔法を避ける。


「発動する瞬間がわかりやすすぎるわ。

 魔力量が一番多いんだから余計バレバレよ!」


 フラメナへと火魔法を放ったのは、マルレキ・ハマエッユ。


 魔力量が上級並の魔法使い。

 魔法の技術はまだ中級ほどだが、魔力量の高さ故に適当に魔法を放っても高威力となる。


 フラメナは地面に手をついた状態で逆立ちし、

 そのまま跳び上がって空中へと身を晒す。


火破血(ヒフラフカ)!」


 中級魔法、爆発するように一気に火を放出するポピュラーな魔法。それを繰り出したのは、呼称のみで魔法を発動するホワラル・ウルムエラ。


 フラメナは空中へと高速で迫る火に対し、

 空中にて体を反らして魔法を避ける。


「タイミングはいいけれど、魔法が散らばりすぎて私に当たってないわよ!」


 フラメナは着地し、体を伸ばして周りを見る。


「……みんな強いけど、そんなの邪族には通用しないわ。魔法使いは剣士に守られ剣士を守る存在。

 でもいつかそれには限界が訪れるの、

 みんな足を動かしなさい! 

 この私を倒すには足を使うしかないわよ!」


 四人はそれを聞いてつくづく思った。


 足を使うってどうやって?

 なんでそんなに魔法がどこにくるかわかるの?

 近接特化の魔法使いなんて……

 真似できない……これが、これが……


 ″君級魔法使い″


 フラメナと四人の戦いはフラメナの圧勝だった。

 全員魔力切れで地面に寝かせられたのだ。


「もう少し手加減くらいしてあげなよ」


 ライメがやってきた。


 フラメナは戦いが終わる頃を予想し、

 この時間に来てほしいと頼んでおいたのだ。


「これでも手加減したほうよ」

「はぁ……皆さん立てますか?」


 生徒四人が首を横に振る。


 ライメはフラメナへと鋭い視線を向けると、

 フラメナは目を逸らした。


 ライメは再びため息をつき、転移魔法陣を展開して帰路を用意する。


「さっ、帰りますよ」



 すると突如、フラメナの背筋に悪寒が走った。

 それはライメも同じであり、二人は咄嗟に身を屈めた。


 次の瞬間、二人が立っていれば顔が吹き飛んでいたであろう位置を、真っ黒な光線が通っていく。


「なに!?」

「フラメナ! 前方から邪族だ!」


 ライメが見る方向へと見える邪族。


「目玉……?」


 フラメナが思わずそう言葉を漏らすと、

 その邪族は目玉が体の全てであり、手も足も胴もない。目玉がただ空に浮かびこちらを見ている。


 フラメナは魔眼でオーラを見ると、

 目玉は真っ黒なオーラを纏っており、オーラの大きさ自体は小さかった。


「ライメ、生徒たちを守りなさい!」

「あの邪族は任せるよ!」


 フラメナはその言葉に頷くと、地面を踏み込んで一気に目玉へと接近し、手へと纏わせた白い火を放つ。



「ライメ先生、あれってなんですか……?」


 不思議そうに聞いてくるピカロト。

 ライメはその言葉にうまく答えを返せなかった。


「僕もわからない……あんなの初めてだよ。

 魔族……なのかな?」



 一方フラメナが放った白炎は直撃し、呆気なく目玉は塵となり消滅した。


「えぇ?」


 呆気なさすぎてそんな声が思わず出てしまう。

 一体なんだったのだろうか、それがひたすらに気になる。


 フラメナは辺りを見渡しながらライメの下に駆け寄る。


「なんだったのかしら」

「わからない……とりあえず早く帰ろう」


 フラメナが頷くとライメは転移魔法陣を展開し直し、そのまま魔法学校前に転移した。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「てかさー、よかったの?

 ユーラルちゃん南大陸に行かせてさぁ」


 魔城島、黒城最上階にて。


 魔王側近が集まる中、雑談が交わされていた。


「魔理様の決定でしょ? いいんじゃないの」


 色欲のエルドレにそう返す嫉妬のレアルト。

 そんな二人へと怠惰のフェゴが話しかける。


「多分だけど監視役だろー。

 天理の欠片が今どれだけ強いかはわからない。

 もしかしたら予想よりも強くなってる可能性だってあるしな〜」


 憤怒のドラシルが三人へと話す。


「魔理様がなにを思って、南大陸へとユーラルを向かわせたのかは我にもわからない。リスクが大きい行為であることは確かだ。

 だが、ユーラルとて強くはある。

 うまくやれば南大陸を滅ぼすことも可能だ」


 エルドレがドラシルへと馴れ馴れしく問う。


「随分とユーラルちゃんのことを好評するじゃん。

 結構お気に入りなの?」

「まだ120年ほどしか生きていない者が、

 あれほどまでに強いのが目に留まるだけだ」


 エルドレは顎に手を当て、肘を立てて言う。


「まさに新世代って感じだね」



 フラメナ達が去った後の平原にて、

 魔王側近、強欲のユーラルはその場に立って魔力を肌で感じていた。


「……天理の欠片かぁ」


 強欲のユーラル。

 彼女の一番の特徴は強大な召喚魔法。

 たった一人から大量の軍勢が生み出される。


 過去にそれで西黎大陸の王都が消えたことがある。

 強さでは四番目のユーラル。


 その強さは傲慢とは比較にならないほど厄介。

 なんとしてでも勝とうとする彼女に、復興後の南大陸へと初めて危機が訪れる。


 だがその話はまだ先の話である。

 迫る影は着実と大きくなり続けているのだ。

第十一章 恋する魔法使い 魔法学校編 ー完ー


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