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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第十一章 恋する魔法使い 魔法学校編
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第九十九話 わたしと私

「ライメ先生?」


 ライメは後ろからそう話しかけられ、

 青あざめながらも振り返る。


 先生と呼ぶ時点で生徒なことは確実。

 ライメとフラメナが恋人関係なことは公表されていない。


 つまり、この状況を見られたということは、

 二人の関係が周囲にバレてしまうのだ。


 だが、なにかマズいかと言われると、

 そういうわけでもない。


 ふとした瞬間に思い出すことだが、

 フラメナは南大陸で最も地位が高い家柄だ。


 そのせいか周りからの視線は変わるだろう。

 フラメナは変わらず王族として、

 ライメは王族の恋人として。


 間違いなく境遇が変わるのだ。


 そうなってくると色々と面倒くさい。

 ライメは注目を浴びたいわけではないので、こう言ったことで注目を浴びるのはごめんなのだ。


「あっ……ぇっと、ホワラルさんこんにちは」

「こんにちは先生、そのなんでフラメナ様と……?」


 ライメは早速そう言われ、少し慌てながら言葉を返す。


「フラメナ様は僕の友人なんだ。

 幼い頃に関わりがあってね……ねっ?」


 フラメナはそう言われると首を傾げ、

 ライメからしたら一番言ってほしくないことを言ってしまう。


「? 友人もなにも、私たち恋人よ!」


 そう言いニコニコとしてライメへと抱きつくフラメナ。ホワラルは手を口に当てながら目を輝かせ、ライメへと詳細を聞いてくる。


「先生フラメナ様と恋人関係だったんですか!?」


 きゃーっと興奮するようにホワラルは反応し、

 ライメは手で目元を隠し、しまったという感じで上を向く。


「ライメもなんではっきり言わないのよ」

「いや、あー……その色々あるからさ」


 フラメナはホワラルへと、魔法学校でのライメの様子を聞く。


「ねぇあなた、ホワラルっていうのよね?

 ライメは学校でちゃんと魔法を教えてくれる?」

「はい! ライメ先生すごいんです!

 魔法で悩んでた子達を次々と救い出して、

 わたしの魔法とも向き合ってくれたんです」

「ホワラルもなにか魔法で悩みがあったの?」


 フラメナがそう聞くとライメが答えた。


「彼女が呼称のみで魔法を放つ子だよ。

 魔法陣は展開出来ないんだけど、魔法は放てるっていう……」


 フラメナはそう聞いてホワラルを意識して見ると、

 黒いオーラが見え、少し驚いた。



 黒いオーラ……君級のユマバナさんが持っていたオーラだ……この子闇属性なの?


「魔法陣は出せないのよね?」

「はい……出せないんですけど魔法は出せるんです」


 フラメナは頷き、ホワラルの頭を撫でる。


「魔法が出るならいいじゃない!

 どんな方法でも魔法が発動できればいいのよ」


 フラメナも魔法のことで、幼い頃悩んだので気持ちはわかる。ホワラルは周りから変な発動法だと言われてきたことだろう。


「あの……わたし、フラメナ様の魔法見てみたいんです! ずっと昔から憧れで!」


 フラメナはそれを聞くと、少し嬉しそうにして返答する。


「私を憧れにするなんてセンスいいわね!

 私の魔法は白くて怖い。それでもいいのね?」


 ホワラルは何度も頷くと、フラメナはライメの方を見る。ライメはフラメナ目を見て頷くと、フラメナを戦闘に街の外れまで向かった。


 建物が少なくなり、雪が積もった平原にて、

 フラメナは魔法陣を展開する。


「どうする? せっかくならすごい魔法見たい?」

「見たいです!」


 フラメナはそれを聞くと口角を上げ、

 魔法陣を一気に大きくし、フラメナの足元の雪が溶け始める。


白帝元(ホワルトゾメラ)!」


 次の瞬間、フラメナの手から空へと向けて大量の白い火が溢れ出し、回転しながら昇っていく火は青空を白で埋め尽くした。


「これが私の魔法よ」


 フラメナはそう言って振り返ると、

 目を輝かせ空を見続けるホワラルを見て驚いた。


「……すごい」


 普通ならフラメナの魔法は怖がられる。


 多少知名度で薄れたとしても、

 少しは怖がられるものだ。

 だがホワラルはまったく恐怖を感じていなかった。


「あなた……怖くないの?」

「怖くないです! 綺麗だなって思いと、やっぱりすごいっていう思いしかないです!」


 不思議な子だ。

 フラメナの魔法を見て怖がらないなんて。


「……せっかくだしあなたの魔法も見せてみなさい」

「え……でも」

「いいから見せるのよ!」


 ホワラルはフラメナに言葉で背中を強く押され、

 渋々と杖を取り出して構える。


 魔法陣は展開されない。


水球(アラピル)!」


 そうしてホワラルが呼称のみで魔法を放つと、

 水の球が杖から放たれ、徐々に地面へと近づき落下する。


 お粗末な魔法だが、フラメナとライメは真剣にそれを見ていた。


「えと……そのわたし……」


「ライメもそう思う?」

「フラメナと思ってることは同じだよ」


 二人がそういうと、ホワラルはなにを言われるかと思っていると、フラメナが話し出した。


「魔法陣を展開してないのに出力はちゃんと100%、

 あなた相当強い魔法使いになれるわよ」

「ホワラルさんは他の魔法使いと違って、

 魔法陣なしで100%の魔法を出せる。」


 思わぬ二人の褒め言葉にホワラルは驚きながらも喜んだ。


「でも、ホワラルは適正の属性が特殊よ。

 闇属性。うまく使うのは難しいけど、もしうまく使えるようになったら将級だって夢じゃないわ。

 学校を卒業するまで、私のライメに隅々まで魔法を教えてもらいなさい! 絶対に強くなれるわ!」


 ホワラルは憧れの存在からそう言われ、大きく喜んだ。


 フラメナが言ったことにお世辞はない。

 全てが本音であり、決して励まそうなどという余計な善意ではない。


 本当にホワラルに可能性を感じている。


 フラメナも普通じゃないだけで、魔法の才能を潰されかけた者の一人だ。


 だからこそフラメナは大人となった今、

 あの頃の自分と同じ思いをする魔法使いを救いたい。


 君級はなにも、国を守るだとか人々を守るだけの存在じゃない。たった一人の魔法使いの夢を守る存在でもある皆の憧れの存在なのだ。



 ホワラルと共にフラメナとライメは街に戻り、

 夕暮れ時に街でホワラルと別れた。


「ライメの生徒、いい子じゃない。

 あんな魔法使い中々いないわよ?」

「ホワラルはクラスで一番頑張り屋だよ。

 誰よりも魔法に真剣に向き合ってる。

 フラメナも彼女には頑張ってほしいんだろう?」


 ライメはそう言ってフラメナへと視線を向けると、

 フラメナは人混みに消えていったホワラルを見ながら言葉を返す。


「私もいつまでも生きてるわけじゃないし、

 強くなれそうな子がいたら応援したいわよ。

 ライメは良い仕事に就いたわね。

 魔法教師ってすっごく楽しそうじゃない」


 ライメは視線をフラメナが見る方へと向けると、

 仕事に対しての本音を吐き出す。


「本当はフラメナともっと一緒にいたいし、

 自分の魔法も研究してみたい。

 でも……生きていく上で仕事に就かなければいけないとなるなら、魔法教師ほど僕に向いた職はないかな。毎日楽しくてしょうがないよ」


 フラメナがライメの顔へと視線をやると、

 相変わらずの優しい微笑みが見える。


 そんな表情を見てフラメナはライメの手を握り、歩き始めた。


「ふふっじゃあ休日は絶対に離れないわよ?

 一緒にいたいなら一緒にいてあげるわ。

 覚悟しなさい。私はしつこいわよ?」

「……ははっ光栄です。お嬢様」


 ライメの冗談混じりの笑いに、フラメナも笑みが溢れ、二人はゆっくりとライメの宿へと向かった。


 ーーーーーーーーーーーーーーー


「だいぶ時間がかかったな……

 イグレット様も困った人だ」

「好かれてたもんね……イグレット様別れ際大泣きしてたじゃない」


 パルドシ港へと二人の男女が訪れていた。


 それは西黎大陸でフラメナたちと出会った者たち。

 ユルダス・ドットジャークと、

 レスミア・ドットジャークだ。


 ユルダスはフラメナとライメの旧友であり、

 西黎大陸で三人は再会した。


 半年すれば南大陸に向かうとは言っていたユルダスだが、実際には一年近くかかってしまった。


「また怒られると思うか……?」

「さぁ? あなた次第じゃないの?」

「はは、まぁそうか」


 ユルダスは久々に訪れる南大陸に懐かしさを感じていた。ここパルドシ港はゼーレ王国再建の中心地ともなった場所。


 今でこそここは静かな港となり、

 人々の熱気は再建された王都へと引き継がれた。


「そう言えば、お父さんにはどう説明するの?」

「……父にはどの顔で会えばいいんだろうな。

 普通にぶん殴られる気もするけどな」


 ユルダスは苦笑いしながら今後のことを考える。


 色々今後について考えが膨らむ時ではあるが、

 外で考える必要はない。二人は宿へと向かい、寒い南大陸の気候から逃れる。



 虹剣1689年1月11日。


 フラメナはライメの腕の中で目を覚ます。

 頭からつま先まで温められているおかげで、

 フラメナは南大陸の寒い朝を辛く感じなかった。


 むしろ起きたばかりだというのに、

 二度寝をしてしまいそうな心地良さを感じる。


「んん……っ? っ!? あれ、僕仕事!?」

「んー……? まだ休日でしょぅ……?」


 ライメは急いで枕元にあるカレンダーを見て日付を確認する。


「あっ……なんだ休日か」

「脳みそが仕事に支配されてるわよ……?」


 ライメへと抱きついたままで離れないフラメナ、

 安堵感と共に起きたばかりなのに疲れてしまった。


「……フラメナは今日出かける?」

「んんー、今日は家でゆっくりしましょ」


 フラメナがゆっくりと首を横に振る。


「どうする? 朝食作ろうか?」

「えー……一緒に二度寝しましょ?

 休日なんだし寝れる時に寝るわよ」

「休日だって規則正しく生活しないとダメだよ。

 ほら、顔洗いに行くよ」


 ライメに無理矢理起こされるフラメナ。


 二人の休日は大体こんな感じだ。

 すると、最近部屋につけられた呼び鈴が鳴り、

 ライメは少しぼさっとした髪の状態で玄関へと向かう。


 朝早くから誰だろうか。

 そう思いながら扉を開けると、珍しい顔が見えた。


「おはようございますぅ〜。

 えへへ、フラメナさんも一緒ですかぁ?」

「ルルスさん? こんな朝早くからどうしたんですか?」


 ルルスは紙を広げてライメへと渡す。


「邪族が出たらしいんですよぉ。

 自分的には久しぶりに皆さんと一緒に戦ってみたいと思いまして〜、どうです?」



 それは邪族討伐の依頼書だった。


 ルルスの持ってきたこの依頼書。

 これを機にライメは新しい経験をするのであった。

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