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純白魔法 -魔法に拒絶された魔法使い-  作者: ガリガリワン
第十一章 恋する魔法使い 魔法学校編

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第九十八話 欠片

「運命の欠片……?」

「えぇ貴方には運命の欠片が宿っている」


 ライメを尋ねにきた執理政運命のシノ。

 彼女はライメへと本人も知らないことを伝え、

 詳細をこれから話そうとしていた。


「転移魔法って私が考えたのよ。

 今に至るまで転移魔法を扱えた魔法使いは貴方含め四人。その全員と私は接触している」


「その、欠片ってなんなのよ。結局どうやって身に宿るの? 私たち心当たりなんてないわよ」


 フラメナがそう言えば、シノはそれに淡々と答えを返す。


「欠片が宿る原理は私たち執理政も知らない。

 確かに直接欠片を与えることは可能よ。

 でも自然に宿ることについては無知ね」


「執理政って理を管理してるんでしょう?

 だったらわからないってのもおかしいじゃない!」


 フラメナの言う通り、ここまで賢そうな者たちがその点を曖昧な状態で放置するわけがない。


「私たち執理政はあくまで管理者、運命や時空だったり、その理自体の意思を宿す者じゃない。私たちもまた貴方たちと同じように体に欠片を宿している」


 シノは黄金の球体を掴み、二人へと向けて話し始めた。


「もしこの世界の運命がいきなり滅亡だなんてことになったら。それを止めるのが私の仕事。

 私自身に全ての運命を操る力はない。

 なんならほぼゼロと言ってもいいわね」


「だからこそ理の力自身が何を考えているかは、

 私たちも知らないの。自然に欠片が与えられることつまり、力自身に認められたのよ」


 ライメがそれを聞いて話し出す。


「欠片が宿った者に共通点はないんですか?

 過去の欠片を持った人とは接触してるんですよね」


 シノはそう聞かれると満足そうに頷く。


「えぇあるわよ。

 血筋に霊族が入っていて、氷魔法を扱え、

 性別は必ず男性。そして記憶喪失の経験がある」

「まんま僕じゃないですか……」


 共通点はライメを表すかのようなものであり、

 シノもそれに共感していた。


「欠片が自然に宿るには必ず共通点がある。

 なぜならお気に入りと認められたのだから、

 必ず理由がある。多分だけど運命の力自身は不幸な男好きの霊族マニアね」

「そんなふうに言っちゃって大丈夫なの……?」


 そうフラメナに言われるとシノは微笑むだけで、

 特になにも答えなかった。


「……欠片が宿ったってことは、僕もフラメナみたいにすごい強い魔法使いになれるってこと?」

「なれないわよ」


 ライメの期待はあっさりとへし折られた。


「運命や時空の欠片に力はほとんどない。

 運命の欠片を持っていてメリットがあるのは、

 転移魔法だけだと思うわ。

 魔理の欠片と天理の欠片は力に映し出される。

 魔王側近ってすごい強いでしょう?

 あれは魔理の欠片のおかげでもあるの」


 ライメは少し残念そうにしていると、フラメナがシノへと質問した。


「魔理の欠片が強いのはわかるんだけど……

 天理の欠片はなんでこんな強いの?」


 シノはそれを聞かれると丁寧に説明し始めた。


「天理の欠片は魔力に特別干渉するものじゃない。

 けど、フラメナさんの魔法が白いように特異な魔法を形成する。その魔法は魔理の欠片を有する者にとって毒であり脅威。

 まぁ多少の魔力とかの強化はありますけど、

 全体の一割程度しか関係しませんね」


 それが意味することつまり、フラメナはシンプルに元から規格外の強さを持っていたということだ。


「……もしかして私ってすごい?」

「えぇ、ここ何百年貴女より才能に恵まれた魔法使いは見たことがありません」



 長く話をしたので一旦まとめてみよう。


 まずライメは運命の欠片を有している。

 それが故に転移魔法が扱える。


 フラメナは天理の欠片を宿していて、

 魔法自体はフラメナの才能。


 執理政は力を操れるわけではなく、ただ管理するだけの存在で、なんでもできるわけじゃない。


 欠片は自然に宿ることもあり、

 理由はおそらく気に入られたら。


「ますますよくわからないものね……

 欠片って不思議ね」

「フラメナの欠片って自然的なものなのかな?」


 シノは立ち上がり、扉へと向かって歩き出す。


「フラメナさんの欠片は意図的なものですよ。

 6000年前の天理からの贈り物。

 どう言った経緯かはまた後日来ますから、

 その時にでもお話ししましょう」


 そう言って引き止める隙もなく、

 シノは扉を開けて廊下に出て行き、一瞬にして学校内から姿を消してしまった。


「……どうしよう。あんなこと言われた後だと授業できるか不安だよ」

「弱気になっちゃダメよ! もう少し頑張れば明日は休日でしょ? ゆっくり一緒に過ごしましょ」


 フラメナに背中を摩られ、ライメはやる気を取り戻し、二人で一緒に部屋を出た。


「あっやべ!」

「にげろー!」


 二人が部屋から出た瞬間。ライメクラスの生徒たちが逃げるように散っていった。


「……絶対噂になっちゃうよぉ〜」

「? なにが噂になるの?」

「い、いいから早く帰って!

 色々とマズいからさ!」


 そう言ってライメはフラメナを無理矢理学校から追い出すと、少し無下にされたフラメナは不満そうにライメの宿へと向かった。


 今日もライメのためにご飯を作る。


 ーーーーーーーーーーーーーーーー


 虹剣1689年1月10日。


 ライメは教師になってから初めての休日で、

 フラメナと一緒に街をデートしていた。


「こうして一緒に出かけるのも久しぶりね」

「僕が仕事を始めたってのもあるし、

 今日はとことん楽しむよ」


 街でのデートと言えど、やることは大抵食べ歩きだ。


 フラメナとライメの趣味はかなりかけ離れている。


 フラメナは食べ歩きや運動だったりと、

 体を動かしたりすることが特に好きだ。


 対してライメはお店での食事や読書、

 釣りなどが趣味であり、真逆の趣味趣向である。


 それでも二人はいつだって楽しそうに片方の趣味に付き合う。


 食べ歩きでは必ず二人は違う味を頼み、

 食べ比べを行ってライメが食べきれなくなれば、

 フラメナがペロリと二つとも完食する。


 フラメナはかなり大食いだ。

 それにも関わらずかなり痩せ型で、

 筋肉も多少ついており、謎の体質とも言える。


「食べ過ぎじゃない……?」

「そうかしら? 抑えてるつもりだけど……」


 ライメは最近、フラメナの胃袋は底なしなのではないかと疑っている。


 旅をしてる最中はあまり気にしていなかったが、

 こうして一緒に過ごす時間が増えると、フラメナがかなりの大食いなことに気づけた。


「……やっぱ食べ過ぎかしら」


 フラメナはライメに若干引かれたと思い、

 目を伏せてしまう。


「食べ過ぎではあるけど、僕はフラメナが美味しそうに食べるところは好きかな」

「なによ! そうなら早く言いなさい!

 めちゃくちゃに食べまくってやるわ!!」


 ライメがそう言えば、フラメナは歩みを早めて次々と売店へと駆け始める。


 なんというか、制限がなくなった状態じゃ無限に食べていそうな雰囲気もある。


「……ちょっと待ってよフラメナ〜」


 先を行くフラメナを追いかけ、

 手を握るとフラメナはこちらへと振り返り、

 たくさんの食べ物を手に持っていた。


 何気ない日常。

 それを見るある一人の人物が居た。

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