3話 心の世界、再び
気がつくと、僕はまたあの草原に立っていた。
夢かもしれない。でも、これはただの夢じゃない。身体が自由に動いて、空気が澄んでて、何より、全然だるくない。
「すごい……走れる、普通に……!」
軽くステップを踏んで、思いきって草原を駆けてみる。病院のベッドの上じゃ考えられないような動きができる。空は青くて、風はやさしくて、太陽は温かい。これが“心の世界”なんだって、なんとなくわかる。
「……なんか、懐かしいな。外に出たの、いつ以来だろ」
風にそよぐ草をかき分けて歩く。見たことのない草も、見たことあるような草も、生き生きと地面に根を張っている。
――そういえば、あの女の子。ユリって名乗ってたっけ。
「あなたの力が強くなれば、異世界の現象が使えるようになる」って言ってたな。
異世界の現象……魔法とか、スキルとか、そういうのも含まれるのかな。
「……鑑定、できたり……する?」
おそるおそる、足元の草に手を伸ばし、集中する。心の中で願うように、ゆっくりと。
「……えーと、“鑑定”!」
瞬間、目の前に透明なウィンドウが浮かび上がった。
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名称:雑草
レア度:1 品質:★7
効果:ただの草。しかし外敵もいないため、品質は、高い
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「……ほんとに出た!」
驚きよりも、ワクワクが勝った。こんなふうに、ただの草にだって情報があるなんて、ゲームの中みたいだ。
――ピロン。
音とともに、新しい通知が表示される。
⸻
スキル《鑑定》を習得しました!
MP:1 → 0(消費)
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「あ、MP使うんだ……でも、すごい。ほんとに使えた」
思わず草の上に寝転がって、空を見上げた。青空が眩しい。嬉しくて、意味もなく笑ってしまう。
「草、ただの草だったけど……品質★7って、やけに高いな。雑草界のエリート……?」
笑いながら、ふと新たなウィンドウが現れた。今度は、自分自身のステータス画面。
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名前:ケンイチ 種族:人間 Lv1
職業:寝人 職業Lv1
称号:寝る人
HP:10/10 MP:0/1
腕力:2 体力:2 敏捷:2
器用:2 知力:30
職業スキル:即睡眠:LvMAX
種族スキル:なし
一般スキル:鑑定:Lv1、精神耐性Lv1
ユニークスキル:ケンイチワールド作成
装備:なし
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「……なんだこの“寝人”って職業……! 称号“寝る人”って!」
思わず吹き出した。けど、どこか嬉しかった。僕は“何者でもない”と思っていたけど、ここではちゃんと“何者か”なんだ。しかも、よくわからないけど《ケンイチワールド作成》なんて、すごそうなスキルもあるし。
「ここで……何かできるのかもしれないな」
そう思ったとき、胸の奥で何かが静かに脈打った。
MPはゼロ。でも、確かに“これから”が始まってる。何もない草原。だけど、それはつまり――僕だけの世界が、今から始まるってことだ。
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