7月7日07分
20XX年 7月7日07分 茨城県
学園都市にある。国立大学の天文台にいる木戸根が、覗く天体望遠鏡からの景色は、遥か遠くのおおいぬ座矮小銀河までのおおよそ2万5800光年もの距離を、乳白色に瑠璃色、空色、水色の星々が彩る光り輝く天の川銀河が流転していた。
その流転の美しい宝石のような光の数々にうっとりしていた木戸根だったが……・
流転から一つの赤い星が落ちていく辺りで、木戸根の顔は曇り始めたのは言うまでもない。
暗黒の宇宙に、零れ落ちたかのような赤い星の光点は、徐々にその大きさが際立ち始め。木戸根の天体望遠鏡でも変化が確認できた。
「やっ、これは?! あ、まだまだ大きくなるぞ?!」
赤い星の光点が大きくなることに気が付いた木戸根は、あたふたと天体望遠鏡の傍にある机の上のパソコンを震える手と指で起動した。すぐに、立ち上がったパソコンからネットを調べ始めると……。
「あの赤い星は一体?? アンタレス?? ……赤い星は古代から戦争、天変地異と結びついて考えられていた?! だって?!」
背筋が凍り始めた木戸根は、再び天体望遠鏡を覗くと……。
「これは、一体?? うん? 近づいているのかな? 近づいているから大きく見えているのか?」
更に巨大になっていく赤い星を、木戸根はアンタレスと呼び始めた。
「そうか、アンタレスは、地球に物凄いスピードで近づいているんだ……これから地球に何か起こるのだろう? 前兆? なのかな? って、こうしちゃいられない!!」
木戸根は、階下へ向かうためパイプ式の階段を大急ぎで降りていった。
――――
アンタレスは、その後。地球の空を見上げさえすれば、どこででも観れるようになった。