表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使突抜ッ! ~可憐な運び屋の危険な日常~  作者: JUNA
mission3: トーテム・フェーズ ~荷物に隠れた秘密の暴露~
95/95

35, 過去と希望 終

 「澪。 私が運び屋を始めた頃、最初に覚えたテクがJターンだ、って言ったでしょ」

 「ええ」

 「何度も何度も練習して、肩の力を入れずにハンドルとサイドを捌けるようになるまで、二週間はかかった。

  でも、いざ本番ってなった時……今でも鮮明に覚えてる。

  ある荷物をミラノからベネチアまで運ぶって依頼だったけど、ゴール直前、私は本土とベネチアを結ぶリベルタ橋の上で挟み撃ちにあったの。

  分離帯で分けられた二車線の道路で、後ろからはマフィアの車。

  そして当時私は、真っ赤なマツダ ミアータ、ロードスターの初代モデルに乗ってた」


 澪は気づく。


 「それって――」

 「そう。 今回のカーチェイスと、ほとんど同じ状況だよ」

 「どうなったの?」


 興味津々と聞く彼女は、碧が見事に成功させたと思っていた。

 が、意外にも相棒は、ゆっくりと首を無言で振った。 


 「練習と実演は全く違うって、思い知らされたよ。

  後ろを走る車に気を取られて、ハンドルさばきも、サイドを引くタイミングも誤った。

  それどころか、80キロっていう猛スピード。 メーターすら見てなかったんだ。

  吸い込まれるように正面からガードレールにぶつかると、私は車ごと海に落っこちた」

 「!?」

 「無様だったよ。

 その後は必死に泳いでベネチアに辿りついた。

  そこで初めて、右腕が折れていることに気づいたんだ。

  商売道具の車を失った現実にも。

  自分のふがいなさに、泣いた。

  サンマルコ広場で、人目もはばからず」


 そんな過去が……初めて知った、運び屋碧の失態。

 河童の川流れとはよく言ったものだが、まさか、その理由が自分に丁寧に教えてくれたJターンだったなんて。


 「それに比べれば、碧、君のテクニックは見事なもんさ。

  たった数時間しか練習していないのに、私の時とほぼ同じ状況で、君は見事に愛車を乗り回したんだ。

  あのロードスターに、傷は一つもなかった。

  ヘッドライトもミラーも外れてなかったし、目印にしたトラックも無傷だった。

  自分を殺そうとする相手が迫る中、それも橋の上っていう特殊な場所ってことを考えても、初めてにしては上出来だったと思うよ。

  もっと練習したら、私より腕、上達するかも」


 そう褒められて、嬉しかった。

 純粋な幸福。

 こぼれ出そうな笑みを照れ隠し、澪は小声で碧に応える。


 「……ありがと」 


 気づけば2人は、京都市動物園の近くまで歩いていた。

 コインパーキングに停められていたのは、修理から帰ってきた、黄色の三菱 ランサーセレステ。

 整備工場社長の長尾から、普段使いに回せと言われた、あの車だ。

 料金を支払い、車に乗り込むと、碧はキーを回す。

 吹き上がるエンジン音が響く中、澪は指をぱちりと鳴らして、碧に提案した。


 「んじゃ次は、碧の番ね」

 「なんの話?」

 「銃よ。 碧ったら、引き金ひいたら、弾が明後日の方向に飛ぶじゃない?

  サブマシンガンだったら、まあ、一発ぐらいは当たるけど、ハンドガンでそれは、少し心許ないから」

 「あー……っと……」

 「とりあえず、帰ったら銃の練習。 いいわね」


 澪が苦手だった運転技術、これが一歩前進したのだ。

 同じように、碧も射撃が苦手で、これを克服する伸びしろは、充分にあるだろう。

 が、碧はどうにか逃げようと。


 「あ、そう言えば山村葬祭に、こないだの報告書を――」

 「逃げたら、しばらくご飯は、近くのマクドで我慢してもらいます!

  もちろん、おカネは碧持ちで!」

 「トホホ……しゃあねえ、付き合うしかないか」


 天使運輸の胃袋担当に、飯を人質取られては仕方ない。

 すべてを受け入れざるを得なくなり、憂鬱にハンドルを握った碧は、天使突抜の事務所めざして車を走らせる。


 これから、元殺し屋 朝倉澪のハンドガンレクチャーが始まるはずだ。

 碧も澪と同じように、苦手克服へと一歩前進なるか。

 それはまだ、誰にも分からない。


 第三章・シーズン1 終。

 ――Continues to season 2

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ