表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使突抜ッ! ~可憐な運び屋の危険な日常~  作者: JUNA
mission3: トーテム・フェーズ ~荷物に隠れた秘密の暴露~
71/95

11, KSF- カンサイ・ハコスカ・フリークス

 

 澪が出発したのと、ほぼ同時刻――

 大阪府枚方(ひらかた)

 AM11:18


 「京都 533 り 2X- 3T…… ええ、間違いありません」


 差し出されたタブレットを見た中年男性の答えに、鷹村と倉門は顔を見合わせた。

 ここは、ひらかたパーク近くにある、ハコスカ専門の整備工場。

 スカイライン ハコスカが何台も工場内に置かれ、ジャッキアップした車の周りでは、専門の整備士が部品交換や、オイル漏れが無いかなどを、丁寧に見ている。


 2人の刑事の質問に答えていたのが、この工場を経営する柏田(かしわだ)という男だ。

 KSF- カンサイ・ハコスカ・フリークスという、ハコスカオーナーによる愛好家団体の代表でもある。

 無論、彼もハコスカを愛車としており、隣接する事務所に飾られた、レーシングカー仕様の車両がそれである。


 「彼の愛車、72年式のハコスカ 2000 GT-Rですね」


 彼らが見せていたのは、防犯カメラ映像の切り抜き。

 新京極で起きた殺人事件。 女子校生の遺体が遺棄されたのと、同時刻に現場付近を走り去る、ハコスカGT-Rが目撃されていたのは、既に記した通り。

 その後の捜査で、三条京阪駅近くの雑居ビルの防犯カメラが、該当する車の姿を捉えていたのだ。


 ナンバーを調べると、この愛好家団体にぶつかったと、こういう訳だ。


 「間違いありませんか?」

 念を押す倉門に、柏田は画面に映し出されたハコスカの一点を指さして、答える。


 「車の後ろにステッカーが見えるでしょう?

  自作のステッカーだそうで、関西中を探しても、同じ見た目のハコスカは見かけたことがありませんね」


 そう言うと、柏田は2人を事務所へと案内し、一冊のアルバムを見せた。

 イベントに参加した時に撮ったものらしく、写真の中に、問題のハコスカも映っていた。

 映像と同じナンバーで、側面後部、テールランプの近くにホオジロザメのステッカーがタトゥーのように刻まれている。

 現場から逃走したハコスカは、これと同じもので間違いないと見ていいだろう。


 「お仕事は、何をされてるとか聞いてます?」

 「確か助教授だか研究員だか……大学で働いていると言ってましたね。

  入ったころは豊中にある萱野かやの大学で、その後、京都の彩加大学に異動になった、って言ってたかなぁ」


 ようやく事件の手掛かりを掴んだと思った矢先、柏田は頭を掻きながら、こんなことを口にする。


 「でも刑事さん、アイツなら去年クラブを出禁にしましたよ。

  私らが話せることも、そんなにありませんけどねぇ」

 「出禁? なにかあったんですか?」


 鷹村が聞くと、柏田はため息混じりに、このハコスカとオーナーに関わる話をし始めた。


 「3年位前ですかね、彼が入ったのは。

  長年欲しかったハコスカを、その年の暮れにようやく納車したっていう彼は、クラブのSNSを経由して、KSFに加入したんです。

  加盟したての時は、若いのにとても礼儀正しい人だなぁ、っていう印象でした。

  しっかりと交通ルールを守り、ミーティングの時には、いつもコーヒーを差し入れてくれて、メンバーの家族が病気になった時には、心配の声をかけてくれる。

  大学の研究員という経歴に似合う、それはそれは紳士なふるまいだ、と、その時みんなで頷きあっていました。

  あんなことが、起こるまでは」

 「なにか、トラブルでも?」


 倉門が聞くと、柏田は断りを入れて立ち上がると、工場に向かって誰か従業員の前を叫んでいた。

 すぐに、ツナギに身を包んだ、30代くらいの眼鏡の青年がやってくると、柏田は彼を鷹村達に紹介する。


 「ウチで働いている栗生(くりゅう)です。

  申し訳ねぇが、例の事故について、刑事さんたちに話してくれないか?」

 「あの黒歴史ですか?」

 「そうだ。 警察が彼のことについて、調べているそうでね」

 「……分かりました」


 栗生と呼ばれたその男は、帽子を取りながら席に座ると、苦虫を噛み潰したような顔を一瞬浮かべ、鷹村と倉門に、その事故について話し始めた。

 黒歴史と呼ばれるくらいだから、相当なのものだと思うが――


 「去年の冬でしたね。 岡山でクラシックカーイベントが開催されたんですけど、そこに私と例の彼と、同じクラブのメンバーの野際(のぎわ)の3人で参加したんですよ。

  彼とイベントに参加したのは、これが初めてだったんですが、始まって早々、彼異様でした」

 「と、いいますと?」

 「ずうっと、イベントに来た女の子に話しかけていたんです。 それも20代前後の女の子にばっかり。

  確かにここ数年、レトロブームで、ハコスカのような車にあこがれる女の子も増えてきました。

  ですが、イベントというのはあくまで、車を眺め、オーナーやファンと交流する場所で、彼のようにナンパ目的で来るような場所じゃないんです」

 

 まさかナンパしただけで追放か。

 あまりにも厳しすぎるし、それを言うためだけに、彼を呼んだのか?

 訝しみながらも、最後まで聞くために、鷹村と倉門は耳を傾けづづける。


 「それが原因で、出禁に?」

 「いえ、それだけじゃないんです……多分、警察の方なら調べればわかると思いますが、彼、ナンパして振られた女の子を、殺そうとしたんです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ