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天使突抜ッ! ~可憐な運び屋の危険な日常~  作者: JUNA
mission 2 : 疾走!アンダーテイカー ~輸送中の棺桶を取り替えろ~
57/95

27, 深淵より覗く者、終焉。

 「おいおい、まさかと思うけど……」

 「冗談じゃないわよ! 私はずっとタイヤを狙ってたのよ?

  荷室にタマ撃ち込むわけないじゃないっ!」


 怒る澪の様子からして、本当なのだろう。

 第一、彼女の言う通り、棺桶を傷つけかねない車体への銃撃を、あれだけの高等テクで人を撃ち殺せる澪がするはずがないのだ。


 「じゃあ、なんで……」

 「ちゃんと閉まってなかった――」


 のではないか? と、碧に言おうとしたが、その線はすぐに消える。


 「――んだったら、もうとっくの昔に開いてるわよね」

 「なんでもいいけど、早く車止めないと。

  ドリフじゃねえんだ。 滑り落ちたらシャレになんねーぞっ!」


 いつの間にか、碧は蛇行をやめて、アンダーテイカーの後ろにぴったりと貼り付いていた。

 カオルもまた、2人が抵抗することを諦めたとでも思い、車をまっすぐに走らせる。

 そう、何にも状況は変わらないまま、車は遂に舞鶴を目と鼻の先に捉えてしまったのだ。


 どうすれば、この霊柩車は止まるのか。


 緩やかなカーブを抜けると、2台の前にトンネルが現れた。

 ここを抜ければ、すぐ目の前が舞鶴西インターだ。


 非常にまずい。

 ここまでか……。


 「!?」


 お互い、自分の眼が信じられなかった。

 開かれた観音扉の中から、人間の顔が突然に現れたのだ。

 カオル以外に誰か乗っていたのか?

 いや、そんなはずはないし、運転台と荷室の間に入り口なんて全然ない。


 正気のない真っ白い顔を覗かせると、ぎろりと周囲を見回し、やがてマセラティに乗る2人の顔をじいっと見つめる。


 右目下には、小さなほくろ。

 鳥肌が全身を駆け巡り、比喩なしに心臓が止まりかけた。

 こちらを向いている顔の主を、2人は知っていたからだ。


 国光平九郎。

 棺桶の中にいる、もとい、ずうっと前に死んだはずの人間なのだから。

 

 車はトンネルへ。 唐突な明暗に目が一瞬くらむ。

 ナトリウム灯がきらめくオレンジ色の空間に入ると、再び碧たちは驚愕するしかなかった。

 さっきまで開いていたはずの荷室の扉が閉じ、何事もなかったかのよう。

 見間違い?

 ところが直後から、アンダーテイカーの動きがおかしくなった。


 左右に車体を揺らし、何度もトンネルの側壁に車体をこすりつけ始めたのだ。

 気を失ったとか、そういう不安定な動きではない。

 明らかに、車を故意にぶつけている!?

 しかし、この期は逃せない!

 

 アクセルを踏み込み、隙間からアンダーテイカーを追い抜いた次の瞬間!


 ドーン!

 

 エンジンから爆発音が響き、立ち上る真っ白な煙が、車全体を包み込み始めた。

 

 「エンジンブロー!?」

 「まさか……!?」


 ラグジュアリーカー用エンジンだ。 そう簡単に壊れる代物じゃないはず。

 ルームミラー越しに信じられない2人をよそに、アンダーテイカーは徐々に減速しながら、トンネルを抜けた。


 マセラティはその先、緩やかな下り坂のカーブで車体を横滑りさせながら停車。

 相手を待ち受ける。

 空気の抜ける音と共に、ボロボロになった霊柩車が、ようやく沈黙。

 目的地のインターまで残り500メートルという位置であった。

 

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