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天使突抜ッ! ~可憐な運び屋の危険な日常~  作者: JUNA
mission 2 : 疾走!アンダーテイカー ~輸送中の棺桶を取り替えろ~
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21, 佐野の役目と自白

 「そして佐野には、もうひとつの役割があった。

  それは、山村葬祭本社を見張ること」

 「見張られていたんですか!?」


 神田が驚くのも無理はないし、澪も口を開けて絶句している始末。

 自分たちの仕事の不本意さを、自ら暴くことになってしまっているが、今はそれを悔いても始まらない。

 ため息混じりに、彼に言い聞かせた。


 「そう考えれば、納得がいくんですよ。

  なぜ、いきなり電話をかけたのか。

  確たる証拠がないのに、どうして自信満々な態度を取ったのか。

  密葬とは無関係の佐野が、私たちを追いかけるような真似をしたのか。

  すべては彼女が、遺体が別人であることの確証を得るため、そして、確証を得たからこその行動だったんです!」

 「確かに……迂闊だったわ……」


 澪はつぶやきながら、頭を抱えた。

 あの時、彼女は霊柩車が先行したという緊急事態で頭がいっぱいになってしまった。

 周囲に気を配れなかったのである。

 過ぎたことさ、と碧は首だけ振り向いて相棒を慰めると、すぐに目の前のカオルと対峙した。


 「なにせ、舞鶴へ向かってる御遺体が別人なら、本人を乗せた別の霊柩車が、すぐ出発するはずですからね。

  葬儀会社まで、全然気づかないなんてことは、ありえませんから。

  カオルさんは佐野に、そのことを伝え、本社会館に出入りする霊柩車の動向を監視させた。

  父親の遺言を無視するよう要求したのは、別人を乗せた霊柩車を監視するのと同時に、山村葬祭にハッパをかけ、国光氏の棺桶を引っ張り出すため。

  案の定、山村葬祭の本社会館に、私たちの運転する、見たこともない霊柩車が現れた。

  この車で、まず間違いないだろう。

  すべてを見届けた佐野は、あなたに連絡を入れ、取り換え作業の証人となるべく、京都駅へ移動。

  山陰本線の特急まいづる・はしだて5号に乗り込み、私たちの後を追ったんだ」


 と、ここで澪が鉄道知識で、相棒の推理をカバーする。


 「山村葬祭の本社は、竹田駅のちかくにあります。

  私たちが本社会館に到着したのが、正午ごろ。

  12時8分発の地下鉄烏丸線 国際会館行きに乗れば、京都駅着は12時14分。

  25分発のまいづる・はしだて5号には、余裕で間に合いますよ」


 その姿、振る舞いはまさに、西村京太郎作品の登場人物だ。


 「連絡を受けたカオルさんは、時間や入れ替え場所などを総合的に見て、2台の霊柩車が京丹波PAで合流するとにらんだ。

  しかし、佐野が乗る特急列車の停車駅 園部と、PAはかなり離れている。

  そこであなたは、佐野に相談。

  彼は何故か爆弾を持ってきていることを知り、それを利用することにした。

  京都縦貫道と山陰本線が最も接近する、八木西サービスエリア付近を通過するタイミングを見計らって、特急列車を爆破。

  混乱に乗じて逃げ出した佐野をピックアップし、そのまま高速に乗って、私たちの後を追いかけた」


 もう、カオルは反論する力を失っていた。

 唇を噛み、俯いたまま。


 「違いますか?」


 すべてを畳みかける碧の眼光。

 鋭い刃は、彼女の本性を抉り出す!


 「マジで、お見通しかよ。 気持ち悪い」


 カオルは捨て台詞と共に、ギラリと鈍い光を放ちながら、冷血の眼差しで碧を睨みつけた。

 不愉快と、私怨と、悪態と。

 負の感情しか、くみ取れるものがない。

 例えここに高僧がいても、打つ手なしと数珠を投げ捨てるであろうほどの邪悪さだ。


 「その通りだよ。

  もしかしたら、彰も気づいているかもしれない、御遺体をどこかで入れ替えるかもしれないと考えて、ずうっと霊柩車を見張っていたのさ!

  計算違いだったのは、お前らの霊柩車が思っていたよりも早く、ここにやってきたことさ」

 「どうやって、京都巡りを辞めさせたんだ?

  まかりなりにも、彰社長は喪主だ。 簡単に遺言を無碍にはできないはず」


 碧の質問に、彼女は見下しながら話し続ける。


 「彰も弱い男だよ。

  従わなかったら、女子社員を佐野にレイプさせて殺すって言ったら、素直に従ったんだから。

  こっちに向かってるときも、車からケータイで何度も何度も確認させてな」

 「……」

 「クソったれのチキン野郎がよぉ!

  あいつも結局は、下々の者共と変わりのないクソ人間なのさ。

  そんな弱い人間より、私のような国光家を代表する、崇高な人間こそ、社長に相応しいっていうのに……あのクソ親父は、たかが下々の女一人のために、私を国外追放しやがった。

  勝手に壊れて、勝手に死にやがって、いい迷惑だ。 全く」


 高説垂れるカオルに、碧はピシャリと言い放つ!


 「彼は弱い人間じゃない」

 

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