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天使突抜ッ! ~可憐な運び屋の危険な日常~  作者: JUNA
mission1: 最強最速の天使 ~コトリバコを輸送せよ!~
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4, 天使運輸のルール

 「すみません。 住職は椎間板ヘルニアの手術で、病院に入ってるんです。

  それも四日市と、まあまあ遠いところでして。

  ですので、このお寺の要件は全て、代行の私が取り仕切っています。

  ……とは言うものの、まだ僧侶の資格を得たばかりの、修行中の身ですが」


 山門をくぐり、本堂へと向かう参道。

 碧と澪の前を歩く万念は、口をひらっきぱなしだ。

 僧侶という生き物は、際限なくおしゃべり好きだというのは、今までの寺院関係の仕事で嫌というほど見てきた。

 今更うざったいとも、なんとも思わない。


 むしろ、()()()()喋って貰った方が、こっちも安心する。


 「そうでしたか。

  いえ、かなり立派な車が止まってたもので、そちらに目が行ってしまいました。

  ひょっとしたら、住職さんの御趣味かと思いまして」

 「フェラーリ……でしたっけ? あの車は、うちの檀家さんの車です。

  宇治市内に、個人で内科を開かれてるお医者様でしてね、今ちょうど、ご両親のお墓に手を合わせに来たところです」


 やっぱり、あの車は檀家のものだったか。

 したり顔を向ける澪に、碧は負けました と、軽くベロを出す。

 が、すぐに碧は、一瞬だったが、眉をしかめた。

 いったい、なぜ?


 「ま、いろんな檀家さんがいらっしゃいますよ。

  当時院は江戸末期、天保の世から続く、歴史の長いお寺なのです。

  観光名所から離れてはいますが、古今東西、老若男女、あらゆる人々の心のよりどころとして、門戸を開き続けております」


 彼の言う通り、寺院の建物はどれも年季が入っている。

 その一方で、白い石畳は手入れしていないのか薄汚れており、中庭の庭園も雑草が目立つ。

 これも歴史、いや、住職不在ゆえの結果と言えば、それまでなのだが。

 

 「万念さんは、このお寺に入って、どれくらいなんですか?」

 「2年程でしょうか。 まだまだ修行が足りない未熟者ですが、こうして住職代行を任されております故、毎日が修行、責任重大です」

 「そうですか。 万念さん以外にも、修行僧が?」


 澪がそう聞くと、万念はええ、とだけしか答えなかった。

 お寺について、あれこれ聞かれたくない僧侶もいるのだろう。

 彼女はそう思い、この話題を深く追求することはしなかった。


 「さあ、どうぞ」


 瑞奉寺の本堂は、広く立派だった。

 靴を脱ぎ、正面入り口のガラス戸を開いて入ると、祭壇の奥に、彼女たちと同じくらいの背丈はあるだろう、立派な阿弥陀如来像が鎮座しているではないか。

 黒塗りの柱に真っ赤なじゅうたんが敷き詰められ、奥には仏教画だろうか、僧侶が猿に導かれ山の中を歩いている光景が、水墨画で描かれたものが飾ってある。


 2人は万念に促され、本尊前に置かれた座布団に腰を下ろす。

 早速、碧たちを呼んだ、そもそもの本題へと口を開き切り込んだ。


 「さて、ご依頼の件ですけど ……お二人は、どんなものでも完璧に運んでいただける、天下無双の運送屋とお聞きしましたが」


 碧は背筋をピンと伸ばして答えた。 


 「ええ、その通りです。

  ラブレターから御法に触れる代物まで、どんな荷物もご指定の場所に、ご指定の時間、ご指定の方法で運びますよ。

  それが私たち、天使運輸のモットーです。

  最も、私たちのルール、つまり運び屋としての決まりを守れば……の話ですがね」

 「決まり…… とは、具体的にどういうことでしょうか?」

 

 そう聞かれると、碧は指を折り、数を刻みながら答えた。


 「ひとつ、意思疎通をちゃんと取ること。

  なにをして欲しいのか、どう運んでほしいのか、お互いの誤解を解き、オーダーを完璧なものにするためにも、私たちとの会話をしっかりとして欲しいということです。

  無言を貫いたり、全てを察して動け、というような態度を見せた段階で、我々は無条件で依頼を断ります。

  ふたつ、依頼料をしっかり丁寧に渡すこと。

  依頼料をきちんと支払うだけではありません。 小銭や札束を投げるように渡す行為や、昔の依頼を持ち出して、依頼料をマケるよう要求する行為。

  おカネとヒトの心は紙一重。

  これらお金に関して敬意を見せない行為や考え方を、こちらが見聞きした場合でも無条件に依頼を断ります。

  無論、これによる金銭的な損失は、一切責任を負いかねます」


 ここまで話すと、碧は、これが一番大事なのですが、と念をおして話し続ける。


 「みっつ、絶対に嘘はつかない。

  天使運輸の決まりの中では、ここに一番重きを置いています。

  嘘はお互いの信頼を一瞬で崩す毒薬です。 どれだけコミュニケーションを取っていても、どれだけお金に敬意を払っても、嘘はその全てを無き者にします。

  シンヨウ掛けるウソの答えが、ゼロであるように。

  もし依頼内容に嘘があった場合、こちらはケースバイケースですが、ことによってはキャンセルだけでは済みません。

  最悪、こちらから《《制裁》》を加える場合もあります。

  以上のことをお約束できますか?」


 ふんわりとしたリップサービスとは打って変わって、碧の鋭い視線が彼に向けられる。

 回答次第で、彼女らは席を立つ。

 仕事は成立しない。

 が、万念はゆっくりと、そして確実に頷いた。

 合意の合図。


 「了解いたしました。

  先ほどの相槌を合意と見なして、話を進めさせていただきます。

  早速ですが、今回運ぶ荷物について、お聞きしても宜しいでしょうか」


 澪が切り出すと、万念は軽く息を吸い、話始める。

 今回のミッション――それは。


 「お二人は、コトリバコと呼ばれる呪われた箱をご存じでしょうか?」

 

 予想外のワード。

 万念の言葉に、碧も澪も、お互いに顔を見合わせ、表情が固まった。

 空耳であってほしい。 否、そんなはずは無い。


 「コトリバコって、あの?」

 「そうです、朝倉さん。 インターネットで一時期話題になった、あのコトリバコです」

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