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天使突抜ッ! ~可憐な運び屋の危険な日常~  作者: JUNA
mission1: 最強最速の天使 ~コトリバコを輸送せよ!~
21/95

21, 拮抗状態


 決め台詞もそこそこに、碧は本題へと話を戻す。

 「さて、これからどうする気?」


 このままずっと、銃を突き付けられ続けるのは、生きた心地がしない。


 「私たちに嘘をつくという、重大な契約違反を犯した。 これ以上、この車を運転する気はありません。

  ということは必然的に、天満橋までアンタが持って行くことになるが……果たして、無事にたどり着けるかどうか」

 「脅す気か?」


 低いドスの利いた声で、万念は碧に詰めた。

 しかし、彼女は怖気づくことなどない。


 「まさか。 事実を言ってるまでですよ。

  この地下駐車場には、私とアンタの2人だけ。

  しかも、車を運転するには、私と場所を交代しないといけないが、そう簡単な話じゃない。

  なんせ、こうやって頭に銃を突きつけられてるわけですし、私も私で、こんなところで死にたくはない」

 「なるほど。 ハンドルを奪うために、お前ともみ合いになるかもしれない……と」

 「そういうことです」


 ――が。

 と、碧は接続詞をくっつけ、万念を更にけん制する。


 「万念、アンタは私に手を出せない」

 「どうして、そう言える?」

 「私たちの背中には、爆弾が置いてある。

  私がアンタに飛び掛かった時、暴発した弾が爆弾に引火しないとも限らない。

  もし私を打ち負かすことに成功したとしても、運転席に飛び散った血や、私の死体をどうするの、って話になるじゃないですか。

  相棒も、私がいなくなれば、依頼の事を警察に話すでしょう。

  人ひとりが死んでるとなれば、警察はありとあらゆる口実を並べて、有珠雅教を調べ上げるはず」

 「なるほど、身の破滅ですねぇ」

 「私たちの置かれた状況を諸々考慮すれば、お互いもう、どうすることもできないのは、火を見るよりも明らか」


 碧の言う通り、現状八方ふさがりだ。

 彼女が動けば死ぬ、万念が動いても後々面倒なことになる。


 「さあ、どうする教祖様?

  ガリラヤの宣教師(イエス・キリスト)よろしく、奇跡でも起こしてみせますか?

  最も、アンタにそれだけの信仰心があればの話だけどね」


 これで万念も終わりだ。

 碧の全身を緊張から、電気がピリリと走り抜ける。

 その時だ。 彼は頭のネジでも外れたかのように、声を上げて笑い始めた。

 

 「確かにそいつぁ、怖いですねぇ~」

 「……え?」

 

 狼狽したのは碧だった。

 チェックメイトじゃなかったのか!?


 「これでは拮抗状態だ。 私もそれだけは、なんとしても避けたい。

  なにせ、私の救済を求めてる、可愛い信者がたくさんいますからね」

 「なら、どうする?」

 「こうします」


 万念は助手席の窓ガラスを下ろすと、空いた左手を差し出し、指を鳴らした。

 パチン!

 響き渡る乾いた音が消えるころ、奥からエンジンの唸り声。

 しかも1台だけじゃない。

 

 「え……っ!!」

 「さっきから言ってたはずです。

  カタストロフィは“我々”の意志で行われる、と」


 エンジン音は大きくなり、その姿を現した。

 白いセダンタイプのメルセデスベンツ。

 碧と澪を尾行した、あの車だ!

 一方通行の通路から現れた4台は、瞬く間にハイエースを取り囲み、中から白スーツを身に纏った男たちが降りてくる。


 「彼らも、信者だったのね」


 その顔に、碧は見覚えがあった。

 ハイエースに向かってお経をあげていた、瑞奉寺の修行僧たちだったからだ。

 手には万念と同じように、オートマチックのハンドガンを携えて。

 形状からして、ロシア拳銃のマカロフか。


 「私も、奇跡を起こせる男なのですよ。

  さあ、降りてもらいましょうか。 神崎碧」

 「あの銃、モデルガンってオチじゃあ、流石にないよね?」

 「フィリピン経由でこしらえた、正真正銘の本物ですよ。

  試しに一発、綺麗な太ももに、穴でもあけときますか?」

 「遠慮しとくわ」

 

 銃を突き付けられ、周りも銃だらけになれば、碧に攻勢のチャンスはない。

 万念の指示に従い、彼女はハイエースを降りた。

 夜の冷たい空気が、一気に体を包み込む。

 それでも、興奮からか、寒さより、恐怖と焦りが勝ってしまう。

 この状況を一気に逆転できるチャンスは、ないのか?


 「!!」


 すると、再び奥からエンジン音が近づいてきた。

 メルセデスとは違う、吹き上がる重低音。

 

 「この音はV8……まさかっ!」

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