表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使突抜ッ! ~可憐な運び屋の危険な日常~  作者: JUNA
mission1: 最強最速の天使 ~コトリバコを輸送せよ!~
20/95

20, 万念の正体

 「天満橋駅?」


 旧淀川のそばに立つ天満橋駅は、OMMという複合ビルを有する、北浜の玄関口だ。

 一日の乗降客数は、大阪メトロ谷町線と京阪電鉄合わせて約13万人。

 大阪市内でも比較的大きいターミナルである。

 

 「そこの駅ビル。 地下の業務用搬入エリアの傍には、大きなガス管が埋まっているんですよ。

  ここに引火できれば、駅を吹き飛ばせるだけでなく、周辺のビルや小さいガス管の配置から、連鎖的な爆発を引き起こせるのです」


 碧は青ざめた。

 彼の計画する犯罪が現実になれば、その被害は天満橋駅だけの話じゃなくなる。


 「大阪の街を、地図から消すつもりか!?」

 「それが我々の、いいえ、私の意志だからです」


 その瞬間、彼女の顔は更に蒼白、いや、それを通り越して興奮にも似た感覚が脳内を支配する。

 私の遺志。

 目の前で淡々と語るこの男こそ、警察公安部が血眼になって探していた教祖、張本人なのだから。


 「そう……あなたが謎の教祖Xの正体ってわけ」

 「まさか、と思ったでしょ?」

 「ま、アンタが偽坊主だっていうことは、最初から分かってたけどさ」

 「嘘おっしゃい」


 首をゆっくり横に振って、碧は万念に聞いた。


 「瑞奉寺の本堂。 あの奥に水墨画、飾ってあったでしょ? なんにも思わなかった?」

 「たかが絵ひとつに、何を感じろというのです?」


 鼻で笑い飛ばすが、彼女には感じるものがあった。

 碧は話し続ける。


 「水墨画に描かれていたのは、猿に導かれ歩く僧侶の絵。

  あれは、焼き討ちにあった日蓮上人が、白い猿に命を救われたという伝説を描いたもの。

  彼が開いた日蓮宗はお題目、南無妙法蓮華経なむみょうほうれんげきょうを唱える宗派。 なのに御本尊は、南無阿弥陀仏の阿弥陀如来。

  その時思ったんですよ。

  この寺あべこべなものを置いてあるのに、誰も何も気にしてないんだ、何故なんだろうって。

  で、その後いろいろ話を聞いて、確信したのさ。

  瑞奉寺は、私たちをハメるために作られた見せかけの舞台だったんだって」


 万念は一瞬目を丸くし茫然としていたが、段々と表情を険しくしていく。

 激しく後悔したことだろう。

 自分の計画は、それが実行に移された段階で既に、相手に怪しまれバレていたとは。


 「くっ……」

 「マヌケというか、詰めが甘いというか……私たちをだますなら、もう少し勉強するべきだったねぇ。

  京都で仕事してる以上、寺や神社からも依頼が舞い込む。

  これくらいの知識は、基礎の基礎さ。

  ま、教祖様に対してこんなこと言うのは、文字通りの釈迦に説法かな」


 銃を握る手に力をこめ、万念はあきれ顔でクールを気取る彼女に問うた。

 分かり切ったことであるはずの、クサいセリフで。


 「お前、いったい何者なんだ」

 

 返す碧のセリフもクサかった。

 それでも、深い呼吸と共に微笑む余裕。

 カッコよさでニオイを包み込む。


 「最初に言ったはずだろう?

  私たちは、天下無双の運送屋。

  どんなものでも完璧に運ぶ、とびっきり危険で、とびっきり美しい運び屋(テンシさま)さ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ