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天使突抜ッ! ~可憐な運び屋の危険な日常~  作者: JUNA
mission1: 最強最速の天使 ~コトリバコを輸送せよ!~
19/95

19, 教団の企み

 

 ゆっくりと口角を上げて笑みを浮かべる万念。

 腹から離され、ゆっくりと頭に向けられた銃を見て、碧はこれがハッタリでないことを思い知る。

 彼の銃は、ワルサーPPK。 装弾数7発の小型自動拳銃だ。


 「なるほどねぇ、私の推理は全部合ってたって訳か。

  さて、正解した御褒美は、いったいなにかな?」

 「ご所望なら、今すぐにプレゼントしてさしあげますよ。

  ダンテも喜ぶ、楽しい楽しい、地獄めぐりツアーを」

 「そんなチンケなとこより、折角なら、イタリアあたりをめぐりたいなぁ。

  ナポリ湾を臨んでのマルガリータは、絶品だったからねぇ」


 やはり、碧という女性はすごい人物だ。

 拳銃を向けられても、こうして冗談をかませるのだから。

 彼女は肩をすくませながら、胸の前で小さく両手を挙げた。


 「そう、あなたの言う通り、コトリバコなんて、最初から無いんですよ。

  すべては、私の作り上げた、崇高なカタストロフィのため。

  それっぽい話を作り、高額な依頼料をちらつかせて、お二人をだましたのです」

 「爆弾を、私たちに運ばせるために?」


 万念は頷いた。


 「 我々有珠雅教の人間は、警察にマークされてます。

   教団の人間がコレを走らせれば、一発で計画は水の泡になりかねません。

  かと言って正直に話しても、信者でないあなた方が、計画を漏らさないという保証はどこにもない。

  なので、コトリバコという人前には晒せない呪物を口実にして、どんな品物でも引き受けると噂の天使運輸を呼び出したと、こういうことですよ」


 僧侶の化けの皮を剥いでも、万念の饒舌さは変わらない。


 「ただ残念なことに、我々のゴールは、ここ心斎橋ではありません」

 「ああ、でしょうね」


 彼にとってはとっておきの切り札だっただろう。

 ナチュラルに返してきた碧に、ハッタリを感じ眉をしかめた。


 「でしょうねぇ?」

 「聖なる爆破ポイントは北浜周辺、でしょ?」


 図星。 万念の顔が曇る。


 「どうしてそれを……!?」

 「教祖Xがポエった、例の厨二小説よげんさ。

  その中で“獅子の降り立つ不浄の街” ってところがある。

  関西で獅子というと、野球、タイガースが連想されるが、そいつはミスリード。

  その後にある、“ゴモラの雷”という言葉とセットで考えないといけない……ですよね?

  答えは、そう―― 怪獣殿下」


 彼女のしたり顔、四文字熟語に、万念は狼狽する。


 「この予言が示すゴモラは、旧約聖書のゴモラじゃなく、ウルトラマンの怪獣を指していたんだ。

  万博に出品するため、南の島から大阪に連れてこられた古代怪獣。

  この怪獣ゴモラが暴れたのが、丁度、中之島から北浜にかけてのエリア。

  鳴き声も、雷のようですしね」

 「だから、コンビニであんな質問を……っ!」


 唐突にしてきた、テレビ番組の質問。

 万念は、その意図が分からず、下手な世間話程度だろうと思っていたが。

 そんなわけがない。


 「ゴモラが暴れたエリアで、獅子と関わる場所は、ライオンの像が置かれた難波なにわ橋。

  あの辺りにはかつて、大阪証券取引所があり、今も大手企業の本社ビルが立ち並ぶ、正にカネと欲望の動く不浄の街。

  そんな北浜でテロを起こす。 違いますか?」


 何もかもお見通し。

 大きく息を吐いた万念は、それまでの秘密主義を反転、一気に語り始めた。


 「そのとおりですよ。 天使運輸の神崎碧。

  そちらが私を呼び捨てにするなら、こちらも同じようにさせてもらいますよ。

  この車に積まれているのは、約1トンの爆薬とガソリン。

  我々の目的は、これを天満橋駅で爆破させること」

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