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天使突抜ッ! ~可憐な運び屋の危険な日常~  作者: JUNA
mission1: 最強最速の天使 ~コトリバコを輸送せよ!~
13/95

13, 保険


 「そんな……兵庫じゃない!?」

 「ああ、そうさ。

  警察のお偉方は、まんまと踊らされてたってこと。

  この予言を紐解くキーは獅子じゃない、その先にあるゴモラの雷さ」

 「聖書に出てくる、堕落と退廃の街よね?

  ソドムと一緒に滅んだって言う」


 そう、予言とゴモラ、この2つを結びつけるのは旧約聖書しかない。

 創世記によると、ゴモラは悪事のはびこる退廃の街であり、神によってソドムと共に、硫黄と炎の雨に打たれ滅亡。

 生き残ったのは、ソドムに住む3人。 予言者アブラハムの甥 ロトと、彼の2人の娘だけであったとされている。


 「そいつが厄介なところで……っと、おしゃべりはここまで。

  私は仕事に備えて、仮眠を取るとするよ。

  あとの謎解きは、仕事が終わってからとしようかねぇ」


 大事なところでもったいぶった碧は、手にしていたコーヒーを一気に飲み干した。


 「何時ぐらいに起こしたらいい?」

 「10時ぐらいかな」

 「10時ね……っと」


 自分のスマホを取り出して、タイマーをセットすると、澪は思い出したように、ああ と声を上げる。


 「それから、碧。

  シャンディ・ガフ・モーターから電話があったわよ。

  預けていた例のマシン、オーバーホールが無事終わったって」

 「さすが大坪おおつぼさんだ。 仕事が早い」


 口笛を吹いて感嘆。

 

 「で、いつ取りに来てって?」

 「いつでもいいそうだけど、できるだけ早く、って」

 「了解……澪っ!」


 碧は自分のデスクの引き出しを開けると、中から何もついてない、タグ状のキーホルダーを取り出し、澪に向かって放り投げた。

 見事にキャッチしたそれを見て、澪はなるほど、と全てを察した。

 オレンジ色のタグに書かれた“75 MCA” の暗号が物語っている。


 「マシンを取りに行ったら、その先は別行動で頼む

  警察と合わせて、こっちにも万が一の保険をかけよう」

 「なるほど、その方が賢明ね」


 受け取ったキーホルダーをポケットに突っ込み、澪は冷え切ったコーヒーを流し込む。

 苦みを殺し、甘ったるさが自己主張する味覚に、一瞬顔をし噛ませて。


 「狂信的な考えを持ってる連中だ。 なにを仕掛けてくるか分からない。

  万が一の時は、首尾よくお願い」

 「お安い御用よ、相棒」

 「そんじゃ、おやすみ」


 澪のぎらついた笑みと敬礼に安堵し、事務所を出た碧は、一直線に自室へ。

 ドアを閉め、ベッドに腰掛けると同時に、無音の部屋に変則的なバイブレーションが鳴り響く。

 鷹村警部からだ。

 スマホ画面の表記を確認すると、通話ボタンをタップした。


 「もしもし……やはり、そうでしたか。

  いえ、そのまま続けてください。 連中に感づかれたら終わりですので」


 碧はしたり顔を浮かべると、空いた左手で製作途中のプラモデルを持ち上げ、眺める。

 ポルシェ独特のシルエットが、夕焼け差し込む部屋に浮かび上がっていた。


  「そうですね……10分前に切り上げていただければ……こっちで揺さぶってみますので。

   はい……では、その塩梅で……失礼します」


 電話を切り、スマホを枕元に放り投げた碧は、左手に持つプラモデルを眺めた。

 パトランプをつけたが、サイレンの差し込み口だけが、ぽっかり空いている。

 白黒パトカーのポルシェ912。

 神奈川県警察のデカールシールを貼っていない、まっさらな側面を右手指でなでながら、つぶやくのだった。


 「こいつを仕上げるのは、全部終わってからか……」


 外からは小学校のチャイムが、もうすぐ日が沈むことを、うるさくも残酷に伝えていた――。

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