文化祭の魔法
文化祭マジック、と言う言葉を知っているだろうか?
簡単に言えば、文化祭の準備や、当日の当番で、一緒にいる時間が長かった男女が、文化祭明けにカップルになっている現象の事だ。
互いに意識し合っていた二人が、キッカケに使う場合もあれば――
全く興味無かった者同士が、それこそ魔法にかけられたように、惹かれ合ったりもする。
……そう。
今までほぼ話す機会も無かったのに、実行委員に選出された事で、会話が増えたり。
報告書なんかの作成に苦戦していると、まとめ方のアドバイスをくれたり。
仲間達が『陰キャのブス』なんて呼んでたけど、ゴツイメガネと前髪で隠されてただけで、実は結構美人だったり。
そんな、今まで見ようとしてなかった一面を、短期間で色々見たからか……
いつの間にか、彼女を目で追うようになっていた。
だから――
文化祭マジック、と言う言葉をご存じでしょうか?
簡単に言えば、文化祭の準備や、当日の当番で、一緒にいる時間が長かった男女が、文化祭明けにカップルになっている現象の事らしいのだけど……
クラスメイト達がヒソヒソと楽しそうに話しているのを、『自分には縁はなさそうだ』と聞き流していた。
……それなのに。
文化祭の実行委員に選出されてしまい、よりによって、明るくて、友達といつも笑い合っているような……クラス内でも、私とは真逆の立ち位置にいるような人と、一緒になってしまった。
一緒に仕事をする中で、自然と話す機会が増えた。
細かい事務作業は苦手なようだけど、力仕事や、備品の保管場所等の記憶力で、たくさん助けてくれた。
仲間達が私の陰口を言ってても、それに参加してないのは知ってた。
なにより――
クラスでも浮き気味な私なんかと、普通に接してくれるのが、何となく嬉しくて。
いつの間にか、彼を目で追うようになっていた。
だから――
気づいたら――
(一緒に回ろうって、誘っていた)
(誘われた時に頷きを返していた)
(いつもは、数人のグループで回ってた)
(毎年一人で、隅の方で本を読んでいた)
(女の子と二人きりなんて初めてだった)
(誰かと二人で回るなんて初めてだった)
(緊張して、彼女の顔が見られなかった)
(緊張して、彼の言葉に頷くだけだった)
自分と回っても、つまらないんじゃないかな……
(そう思って振り返ったら)
(そう思って顔を上げたら)
不安そうな顔がそこにあって……
なぜか、二人揃って笑ってしまった。
文化祭の魔法は、やっぱりあったみたいだ。