16話 お礼
「お嬢様! お起きください。到着いたしましたよ!」
「…………ありがとう」
眠ってもあまり疲れがとれていないことに気が付いた。
でも、まだ私には今日やらなければならない事が二つあった。
料理長にお礼を言うのとベルに手紙を書くこと……。
馬車を降車してからリリスに伝えることにした。
「起こしてくれてありがとう。部屋に戻る前に料理長のところに行きましょう」
「はい、承知いたしました!」
厨房へ向かう前にルカ卿にお礼をしようと思い、そちらの方を向いた。
「ルカ卿、本日もありがとうございました。貴方に付いてきて貰えたからこそ、安心してポクター令息ともお話出来ましたわ」
「お褒めに預かり光栄です。お嬢様のお役にたてたようでなによりでございます! また、いつでも護衛が必要な時はお声掛けください」
「ふふっ……ありがとうございます。心強いですわ」
「では、私はまだ夜の練習がございますので……失礼いたします」
ルカ卿はそう言い、練習場へ行ってしまった。
自主練ということなのかしら……?
今日は、練習に参加しなくても良いということになっている筈。
彼は、本当に真面目なのね……。
ルカ卿も行ってしまったようだし、取り敢えず厨房へ向かうことにした。
お父様たちは、もう夕食を済ませた時間だけれども……。
料理長は明日の朝食の仕込みをしているようで、まだ厨房にいるようで良かった。
無駄足にならなくて良かったなと思う……。
「料理長、サンドウィッチとても美味しかったわ」
「お嬢様!? 直接お伝えくださるだなんてありがとうございます。これからも、美味しいお料理を提供出来るよう努めて参ります」
「ええ、期待しているわね! それと、馬車の中で食べやすいものを選んでくれてありがとう。貴方の心遣いには感謝しているわ」
「いえ……料理しか能のない私でもお嬢様のお役にたてたようで幸いでございます」
「料理しか能がないなんて大袈裟よ……! 貴方は、いつも私の練習に付き合ってくれるじゃない。人に教えるセンスもあると思うわ」
「……!!」
少し料理長は、何かを考えていたようだが直ぐに口を開いた。
「そのように、私のことを褒めてくださったのはお嬢様が初めてです……これからも、分からないことがございましたらお申し付けください」
「ええ、分かったわ」
こうやって、少しずつでも仲良くなっていったらマルエラに買収される確率も低くなるわよね……。
料理長だけでなく、他の使用人にも努めて優しく振る舞わなければ!
信用を得るには、仲良くなるのが一番だもの。
「料理の仕込みの途中だったのよね? お邪魔して悪かったわね。明日の料理も楽しみにしておくわ」
「ありがとうございます!」
料理長に別れを告げ部屋に戻ることにした。
部屋へ戻りベルに手紙を書く準備をする。
『 ベルナルド=アレッシオ・カリーニ 皇太子殿下
日を追うごとに夏らしくなるこの頃、いかがお過ごしでしょうか?
最近、外は暑いため私は歴史書を読むのにはまっております。
ベルナルド様は、もう宮中での生活に慣れましたか?
近頃、私は料理を作ることに凝っております。次に、アルセナーリナ邸へ訪れることがありましたら、事前にお知らせいただけると幸いです。もし、嫌でなかったら是非ベルにも手料理を振る舞わせてください!
そして、お話は変わりますがまた『オオカミ』についての情報を得ました。
手紙で書くことはあまりしたくありませんので次会う時にお伝えします。
長々と長文失礼いたしました。
お返事お待ちしております
フィオーレ・アルセナーリナ 』
こんな感じで良いかしら。
手紙で書くよりも、久しぶりに直接会ってベルと話したいと思う。
おかしな点がないか確認し、リリスに声をかける。
「リリス、これを明日宮殿に宛てて出してちょうだい」
「承知いたしました! 明日で宜しいのですね?」
「ええ、問題ないわ」
リリスは、それを聞き頷いた。
「はぁ……今日は、もう夜も遅いし寝ることにするわ」
「はい! では、灯りは消しますね。本日は、色々大変でしたのでゆっくりとお休みなさいませ!」
「ええ、ありがとう。おやすみなさい」
リリスは、灯りを消して部屋をあとにした。
彼女も、長く馬車に乗っていた為、疲れていると思う。
今日は、私に付いて来てくれた人達は疲労が溜まっているわよね……。
明日、もう一度お礼を言いに行こうかしら?
……今日は、色々な情報を得たおかげで頭がパンクしそうだわ。
ローミスオペジスクは、リリスから聞いた感じ本当に恐ろしい街ね……。
自分の体感でも恐怖しかなかった。
謎しかないけれども、今度行く機会があったとしても常に警戒しておかなければならないわね。
今度、リリスのお母様に直接会って聞かなければならないかもしれない……。
あの街は危険よね……。
街に入らないと見えない銅像の塔だなんておかしい。
それに、塔の外側に鳥のようで鳥でない謎の彫刻が壁から突き出すように装飾されていた。
その装飾が、不気味さを増しているように感じる。
『ルーク・ホワイト』と名乗る青年も、ポクターと歴史について語り合っていたら、ここでは辞めたほうが良いと言ってきたのよね……。
まず、あれが本当に『ルーク・ホワイト』なのかも定かではないけれども……。
あれが本物であるのならばあの街には何かがあるのでしょうね。
彼は、街の人のことを警戒するようにというニュアンスの言葉を言っていた……。
街については、また今度調べることにしましょう。
今日は、視察中のマルエラに会ったのは良くないかもしれないわね。
パーティーで、スペンシー令息と仲睦まじそうだったと広める可能性が高い。
そんなことを広められたら、私の人格が疑われるわよね……。
今日は、タイミングがとても悪い日だったのかもしれない。
ポクターが、どんな人物か知れたのは良かったけれども……。
彼は、新しい情報をくれた。
悪魔のこと、神剣のこと、歴史について……今日は、本当に有益な日となった。
でも、エルバスが現スペンシー男爵領で暮らしていたとは驚きね。
だから、村には色々と残っているのかしら?
その知識と『ルーク・ホワイト』の本で深めていったのかもしれないわね。
彼とは、今後も仲良くしよう。
帝国祭に来ると言っていたしそこでまた話そうと思う。
スザクにも友人になったことを伝えないと……!
考えていると眠くなってきた。
情報は、明日纏めるとしましょう……。
このお話で6章は終わりとなります。
次の話からは、7章に突入します!




