14話 神剣の名前
ポクターは、安心したようにため息をついた。
「シェスタール嬢は、思ったよりも元気な方なのですね! パーティーでは、とても大人しそうにみえましたが……」
「そうですわね……」
「ところで、フィオーレ嬢。お話は変わりますが、エルバスの所持していた神剣の名称をご存知ですか?」
唐突に、全く違う話になったわね……。
でも、ポクターもマルエラに興味がないというのは安心出来た。
「歴史で神剣の名称など出てきていましたか? 私が、学んだ時には書いておりませんでした……」
「教養学として学ぶ歴史書には書いておりませんよ!」
結構、私も知識を深めたい人用の歴史書で学んだけれども書いていなかった。
ポクターは、どの本でそんな知識を得ているのかしら?
「申し訳ありませんが、分かりませんわ」
「そうですか……神剣の名前は、『アリーティア』です!」
「まあ……格好良い名前ですわね! ですが、ポクター令息はどの本でそんなに沢山の知識を得ましたの?」
「私は、『2000年前の真実』という本で学びました! これも、『ルーク・ホワイト』作の本です」
「本当に彼は色々と知っていらっしゃいますのね」
「はい! 聞く所によるとエルバスの大ファンらしいですよ。だから、2000年前の研究ばかりしているのだとか……」
実物を知ってしまった以上複雑な気分になる……。
まぁ……でも、彼の考古学者としての才能は凄いのかもしれないわね。
「彼の本は、新たな知識を与えてくださいますね! 2000年前の事をずっと研究するだなんて凄いと思いますわ! 私には、ずっと同じものを研究する根気なんてありませんもの……『ルーク・ホワイト』のそのような所は、とても尊敬出来ますわね。……ポクター令息は、エルバス以外の時代ですとどの時代がお好きなのですか?」
「そうですね〜。私は、初代皇帝の活躍が好きです! 彼が、エウレカ帝国に統一したようなものですしね!」
「……!」
私もその理由で、レオ・フィリップ・ブルームハルトの時代が好きだ!
もしかしたら、ポクターとは本当に気が合うかもしれない。
ここまで、詳しい人と話せるのは幸運ね。
実の所、彼との懇親会はあまり気が進まなかった。
でも、応じて良かったわ!
悪魔について新たな情報を知れた事もあるのだし……。
「ポクター令息……私も全く同じ意見ですわ!」
「こんなに、意見が合う方は初めてです!」
「ありがとうございます。私もですわ!」
ポクターとここまで楽しく話せるだなんて、想像もしていなかった。
「ポクター令息は、ナーウィッチに行かれたことはありますの?」
「いえ、ないですよ! いつか、行ってみたいと思っておりますが……」
「もし宜しければ、今度一緒に行ってみませんか? ポクター令息は、歴史に詳しいですし会話も弾むと思いますわ」
「……! 嬉しいご提案ありがとうございます! 是非、行きたいです! 日程を決めるのは、エウレカ帝国祭が終わった後でも宜しいでしょうか?」
「はい、分かりましたわ! ですが、エウレカ帝国祭が終わりましたらスザク公子と私の友人に剣の稽古をしてもらう事になっておりますの……稽古の日と被らなければいつでも大丈夫ですわ」
「分かりました! フィオーレ嬢は、剣の練習をされるのですか? 弓がとてもお上手という噂を聞いたことがあります! 剣にもご興味がお有りなのですね!」
「そうですね……」
弓の上手さを知っているのはスザクが教えたのでしょうね……。
そうでなければ、スペンシー男爵領のような田舎にまで噂が広まっているという事になってしまう。
それは、絶対に有り得ないだろうし……。
だけど、スザクはそんなことまで言っているのね……。
遠縁の親戚の割には、とても仲が良いということに驚いてしまう。
「ポクター令息は、剣をお好きなのですか?」
「はい! ですが、誰かに向けるなんて事はしたくありません! 木刀であれば別なのですが……」
なんだか、話が飛躍しているように感じる……。
「そうですわね! 私も真剣を誰かに向けるような行為は好きではありませんわ……」
「そうでしたか! 良かったです……フィオーレ嬢は、何のために剣を?」
「ポクター令息は、聖クライヘブン学院をご存知ですか?」
「はい、もちろんです! 私は、学院に入学したいなと思っております! 入学試験に剣術があるだなんて驚きですよね」
まさか、ポクターも入学を考えていただなんて思いもしなかった……。
「あら……そうなのですね!? 実は、私も学院に入学したいと思っておりますの。それで、スザク公子達に剣の稽古を付けて貰うという事になったのですわ」
「!! フィオーレ嬢が!? では、お互い頑張りましょう! 是非、学院でフィオーレ嬢と学びたいです!」
「はい!」
こんな博識な人と授業を受けられるのは、とても楽しいでしょうね!
その為にも、まずは試験を突破出来るほどの剣術を身に付けなければ……!
「まず、私も学院に入れるか分かりませんが、フィオーレ嬢のことを応援しております!」
「ありがとうございます! 私とポクター令息が、入学出来ることを願っておりますわ!」
お店の掛け時計を確認したら、もうそろそろ帰らなければならない時間のようだった。




