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25話 お茶会にて

 だが、主催者への感謝の意を表さないのはマナー違反だろう。

 いくらお茶会に初参加だとしても、他の令嬢は皆ウィンザー嬢へ感謝の意を表している。

 マルエラが、席に座ると最後のハートフォード嬢が立ち上がった。


「皆さま、ご機嫌好う。ハートフォード侯爵家のジェシカですわ。シャーロット嬢、ご招待ありがとうございます」


 この中では彼女が、一番身分が高い。

 ウィンザー嬢もそこは考えたのだろう。

 彼女が一番上座に座っている。

 雰囲気や名前で呼んでいる所を見ると、ハートフォード嬢とウィンザー嬢は親しい仲の様ね。

 それ以外の令嬢は、自分が何故呼ばれたのか分からないというように居心地が悪そうだった。


「皆さん、自己紹介も終えたようですね。本日は、特別なゲストを呼んでおりますの。ご紹介させていただきますわ」


 ウィンザー嬢が、そう言うと一人の男性が姿を現した。


「マシュー・ヘクセンと申します。お招きに預かり光栄です。シャーロット嬢、何かリクエストはございますか?」


 マシュー・ヘクセンと言ったら今大人気の音楽家だ。

 たしか、女性人気が高いと聞いた。

 彼の容姿をみて納得だった。

 スザクほどではないが、かなり整った顔をしていた。


「いえ、私よりもヘクセン様のファンの方にお聞きした方が宜しいですわ。……シェスタール嬢、貴女はヘクセン様のファンとお聞きしましたが、何かリクエストはございますか?」

「私ですか……? それでしたら、『夕暮れ時のアリア』をお願いしたいですわ!」

「喜んで、お受けしましょう!」


 ヘクセンさんはリクエスト通り、『夕暮れ時のアリア』を演奏し始めた。

 『夕暮れ時のアリア』は、たしか彼が作曲したという曲だった気がする。

 マルエラが、マシュー・ヘクセンのファンだなんて意外ね……。

 初めて知ったわ。

 綺麗なヴァイオリンの音がし、自然と会話が始まった。


「噂以上に綺麗な曲調ですわね。生で聞くのはお恥ずかしい事に、初めてですわ」

「まあ、アルセナーリナ嬢程の方が初めてなのですね。私は、何回か聞いたことがありますわ」


 ギルフォード嬢は口を開く度に、私の悪口を言う事しか出来ないのかしら?

 その時、シャーロット・ウィンザーが意外にも私を庇うような発言をした。


「ギルフォード嬢は、聞いたことがありますのね。アルセナーリナ嬢は、最近色々と忙しかったと聞きますわ。ですから、本日ご参席いただけるとは思ってもおりませんでしたの」

「っ……」


 主催者がこう言った以上、彼女はそこについて非難出来ないでしょうね。

 それに、アルセナーリナ嬢と比べて貴女は暇だったのですね。という意味に皆聞こえたことだろう。


「折角の席ですが、急に頭が痛くなってきましたので家に帰らせていただきますわ。ここで、失礼いたします……」


 シャーロット・ウィンザーに言われたことが、相当悔しかったのだろう。

 

「まあ、そうだったのですね。気付かず申し訳ありませんわ」


 ギルフォード嬢は、見送りは結構です。と言いその場を早足で去っていった。

 だが、ウィンザー嬢が何故私を庇うような発言をしたのか、いまいち理解出来ない。

 私たちは、親しい間柄という訳でもない。

 まぁ、でも……普通に考えれば、皆に嫌われているギルフォード嬢よりも私の肩を持った方が良いと分かるか……。


「ウィンザー嬢、このスコーンとても美味しいですわ。それに、この紅茶何の茶葉を使っているのですか?」

「喜んでいただけたようで何よりですわ。茶葉は、ダージリンです」


 暫く、茶葉やお菓子の話をしたあとに綺麗な景色の話しへと移り変わっていった。

 そこで、マルエラはここぞとばかりに口を開いた。


「私は、先日訪れたオベルの街にある、ロイヤルヒルズ公園の景色がとても好きですわ。特に、ロイヤルヒルから眺められるセイ・シュタイン城は今まで観てきた中でも、一番良い景色でした」

「オベルの街ですか……?」

「はい。あ……そうだわ。ロイヤルヒルズ公園といえば、フィオーレ嬢とシュタイン公子様も観光されていらっしゃいましたよね?」

「はい、そうですわね」

「アルセナーリナ嬢は、スザク様とご一緒されていたという事ですか?」


 マルエラは、シャーロット・ウィンザーもスザクに好意を寄せているのだと悟ったようだ。

 スザク様という言葉に少し反応しているように伺えた。

 彼女も、きっと今まで自分がこの席に呼ばれたのか理解していなかったのだろう。

 でも、マルエラも流石に気付いたみたいだった。


「はい、とても仲睦まじそうで……ご挨拶に行くタイミングを探してしまう程でしたわ」

「仲が良いというのは素晴らしい事ですわ。アルセナーリナ嬢は、スザク様と幼馴染というご関係だと伺ったのですが本当のようですわね」

「そうですね……彼と私は、幼少期から仲良くさせていただいておりましたので……その名残でたまに二人で出掛ける事もありますわ」


 ただの、幼馴染であってスザクが私に対し恋愛感情はない。と勘違いしているようなので交際し始めたことは隠す事にした。

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