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2話 悪役令嬢と……

「シェスタール嬢が宜しければ家の中を案内させて下さい」


 二人になり気まずい空気になった為、そう提案した。

 マルエラは、気まずそうなのにも関わらず口を開こうとしないのは相変わらずだ。

 マルエラと仲良くなるまでは、彼女が苦手だった事を思い出す。

 彼女は、いつも自分から会話を切り出そうとしない……。

 私も、一緒のタイプであったがここで話し掛けないと何も始まらないだろう。

 嫌々、そう声を掛けるとマルエラもホッとしたように口を開いた。


「良いのですか? では、お言葉に甘えてご案内していただきたいですわ」


 彼女は、私がスザクの幼馴染と知ってから恨みに思っていたと言った。

 私たちが知り合う前から知っていたのかそれとも後に知ったのかを確かめる必要がある。


「実は、シェスタール嬢の話を父に聞いた時からどんな方なのか興味をもっておりましたの」

「あら、そうなのですか?ふふっ……嬉しいですわ」


 彼女は、あまり多くを語らないようにしている。

 大人しぶっていると一部で不評だったことを思い出す。

 だが、これだけは分かる……。

 この時から、性根が腐りきっているのはたしかでしょうね。


「ここは、私の部屋です。中でお茶でもしながらお話しませんか?」

「素敵なご提案ありがとうございます。是非、そうさせていただきたいですわ」


 リリスにお茶を持ってくるように伝える。


「私、シェスタール嬢とはもっと仲良くなりたいです。失礼でなかったらマルエラ嬢とお呼びしても宜しいでしょうか?」


 マルエラは、少し驚いたような表情を浮かべたが直ぐにいつもの笑顔に戻った。


「ええ……はい。もちろん、構いませんわ。それでしたら、私もフィオーレ嬢とお呼びしても良いですか?」


 少し間はあったが了承してくれた。


「はい、構いません。嬉しいですわ。お互いに名前で呼び合う令嬢なんて私にはあまり居ませんので……」

「そうなのですね……私も嬉しいです。その中の一人になれたこと」


 その後、私とマルエラは当たり障りない会話をしていたら彼女の帰る時間となった。

 

「今日は本当に楽しかったです。今度は、私の邸宅にもいらっしゃってください」

「はい。機会がありましたら、是非お招きくださると嬉しいですわ」


 そう言い彼女たちは帰って行った。

 注意深く観察していたが、マルエラからの敵意は全く感じられなかった。

 あの様子であれば、私がスザクと幼馴染だという事をまだ知らないのだろう。

 スザク……か。

 近いうちに会いたいわ。

 彼には、毒殺未遂の容疑を掛けられてから一度も会えて居ない。

 そう考えていると、お父様が話しかけてきた。


「マルエラ嬢とは仲良くなれたか?」

「はい。本当に良い子でしたわ。次に会えるのがとても楽しみです」

「フィオーレがそこまで言うなんて珍しいわね。余程良い子だったのでしょうね」


 お父様とお話をしていたら、お母様も会話に入ってきた。


「はい! マルエラ嬢が今度シェスタール邸へ招待してくださるそうです。だから、この家でパーティを開くときはマルエラ嬢をお誘いしても宜しいですか?」


 それには、お父様もお母様も同意してくれた。


 私は、お父様たちと別れ部屋へ戻った。

 そして、マルエラが来る前にリリスに頼んでおいたことを聞くことにした。


「リリス。マルエラの表情を観察してくれたかしら?」

「はい、もちろんです! ですが、お嬢様の仰ったような不審な点は見受けられなかったですね」


 私だけでは推しはかれない部分があった為、リリスにも観察をお願いしていた。

 だが、私と彼女の意見は一致している。という事は、まだ気付いていないみたいね。

 まだ、どのように復讐するのかプランを立てていないから今気付かれていても困るのだ。

 猶予は10年しかない。

 早急に、プランを立てなければならないと思った……。


――――――――――――――――――――――――


 あれから一週間が経った時、一通の手紙が私に届いた。

 これは、シュタイン公爵家で行われるパーティーの招待状だ。

 たしか、このパーティーにはマルエラも来るはずだったわね。

 過去の私はマルエラと初めて会った日には仲良くなれなかった。

 回帰前は、私もマルエラも両方会話の主導権を握ろうとしなかったのだ。

 けれども、今回は違う。

 彼女とは色々話した為、私がスザクと仲良くしていたら何か聞いてくるかもしれない。

 マルエラには、まだスザクと幼馴染である事はバレたくない。

 その為、スザクに今回のパーティではあまり私に話しかけないでほしいと手紙を書くことにした。


『 スザク・シュタイン 様


 彩り豊かな花々が咲き誇る、美しい季節となりました。  スザク公子様は、いかがお過ごしでしょうか? 私は、この季節となり庭園でお花の鑑賞をし日々過ごしております。

 さて、お話は変わりますが公爵夫人の誕生パーティの招待状をお送りくださりありがとうございます。是非、参加させていただきたいと思います。そこで、公子様にお願いがございます。今回のパーティでは、あまり私に声を掛けないで欲しいのです。詳しい理由は、まだお伝え出来ませんが私にとってとても重要な事というのはお分かりいただけますと幸いです。パーティが、終わりましたら追って手紙をお送りいたします。それまで、何も聞かずにいてくださいますと嬉しいです。


 フィオーレ・アルセナーリナ 』


「リリス、この手紙をシュタイン公爵邸に宛てて出してくれる?」

「はい、お任せください。お嬢様」


 スザクは、この手紙を受け取ったら驚くだろうけれども了承してほしい。

 久しぶりに元気な姿の彼を見られるのだから話したい気持ちはもちろんある。

 けれども、私と彼の安全を考えるとこうするしかないのだ。

 私のお母様とスザクのお母様は昔から仲がいい為、彼にはパーティ以外でだって会うことも出来るのだから……。

 ここは、話したい気持ちを押し殺して我慢するしかない。

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