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8話 思い出したこと

 それから、暫くして食べ終わり部屋へ戻った。


「明日は、何を着て行けば良いかしら?」

「オベルの街ですよね? ドレスでも宜しいかと思いますよ?」

「スザクが平民のような格好をして来たら、不釣り合いな感じになるのよね…………」

「公子様はどちらなのでしょうね?」

「う〜ん、分からないわ。でも、ドレスにしておきましょう! 地味目な物にしておけば、平民が着飾ったように見えると思うわ」

「その手がありましたね! 流石は、お嬢様ですね! とても名案だと思います」


 リリスに洋服の準備をして貰い、明日を待つだけとなった。

 明かりを消し、スザクとのデートに思いを馳せながら眠りに付いた。


――――――――――――――――――――――――


―当日―


「お嬢様! お起きください。もう、6時25分です。今から支度しないと、公子様の到着時間に間に合いませんよ!」

「…………おはよう、リリス。もうそんな時間なのね。直ぐに支度をお願い!」


 それから、30分ほどで支度を全て整えた。

 スザクが来たという報告はまだ受けていない為、今回は時間通りに来てくれるのだろう。

 ちょうど、7時になる頃に窓から庭を眺めていると馬車が入ってくるのが見えた。

 スザクが来たのだと思う。

 直ぐに、玄関まで降りて行くことにした。

 玄関に辿り着くと、スザクが家の中へ入って来るところだった。

 スザクの格好は、私と同じような格好だったため少し安心出来た。

 いつもと比べられないほど、地味な服装であったが高貴なオーラが溢れ出ていた。

 そんな格好でも、おそらく平民には見えないでしょうけれども……。


「おはよう、スザク! 今日は、時間通りに来てくれたのね」

「おはよう、フィオーレ! うん! 今日は、良かったよ。これも、ヘンリーのおかげなんだよ。彼が、懐中時計を持って行った方が良いと言ってくれたからなんだ…………!」


 懐中時計は、とても高価な物だ。

 アルセナーリナ邸にも2つくらいあるが、それをデートのためだけに持ってくるだなんて凄いと思う。


「そんな…………スザク様! 当然の事をしたまででございす。このような事で、お褒めのお言葉をいただき感激で胸が一杯でございます!」

「大袈裟だよ!」

「懐中時計? 凄いわね。そんな高価なものを持ってきて大丈夫なの? 公爵様に許可はいただいたの?」

「あ…………これ、僕のものだから父さんに許可を取る必要はないんだよ。以前、父さんが誕生日にプレゼントしてくれたんだ〜」


 シュタイン公爵家が、とても裕福なのは知っていたが想像以上なのかもしれない。

 懐中時計を息子にあげるだなんて驚きだ。


「そうなのね! 流石は、シュタイン公爵家ね。私の家には2つくらいしかないわよ」

「いや、そんな事ないよ…………アルセナーリナ家にだって2つもあるんだろう?」


 肯定の為、頷いているとお父様達が挨拶しに来た。

 スザクが到着したと聞いたのだろう。


「おはようございます、シュタイン公子様。本日は、娘と出掛けるそうですね」

「おはようございます、伯爵。はい、フィオーレ嬢とお出掛け出来ること大変嬉しく思います。では、ここで失礼いたします。ご挨拶ありがとうございました」


 そう言うと、スザクがこちらを向いて口を開いた。


「フィオーレ、準備は良いかい?」

「ええ、もちろんよ」


 そう言い、スザクと共に外へ出た。


「そう言えば、リリスも連れて行って良いわよね? 貴方もヘンリーさんを連れて行くんでしょう」


 他に聞こえないよう、耳打ちをするとスザクは頷いた。


「うん。もちろん良いよ!」


 リリスとヘンリーは、御者の隣に座る事になった。


「では、お父様、お母様行って参りますわ。帰りは、19時くらいになるかもしれません……」

「分かった。楽しんできなさい」

「僕が、こちらまで送り届けますのでご安心ください。失礼いたします」


 そして、スザクがエスコートをしてくれ馬車に乗った。


「はぁ〜なんだか伯爵の前だと緊張しちゃうな…………」

「スザクでも緊張する事があるのね。それに、見た目では分からなかったわ。きっと、お父様も気付いていないわよ?」

「そうだったら良いんだけど…………そう言えば、フィオーレ」

「何かしら?」

「最近、帝国図書館に多く行ってるみたいだけど調べものかい?」


 何故、スザクが知っているのだろうか?

 私が、気付いていないだけで彼の知り合いに見られていた可能性もある。

 それとも、私のことを一方的に認識している人物がスザクにそう言ったのだろうか?


「ええ…………でも、何故スザクがそんな事を知っているのかしら?」

「うーん。友人に聞いたんだよ。図書館で最近君の姿を良く見るって」

「そういう事だったのね! 帝国図書館は、知識の宝庫じゃない? スザクは、知っていると思うけど私の苦手分野の本も多く置いてあるのよ。最近は、それを調べに行ってたのよ。そのおかげで、エレイシア・アスター嬢とも仲良くなれたのよね…………」

「あ…………そういう事だったんだ! ごめんね、無神経な事を聞いてしまって。今度行く時は僕も行きたいな! あまり、最近は本も読めていないからな〜」

「全然構わないわよ。分かったわ! 次行く時は、誘うわね! 最近、スザクはどうなの? 貴方が、好きな本を読めていないだなんて忙しかったのね」


 この頃のスザクは、本に凝っていた筈だ。

 パーティなどでもよく本の話をされた記憶がある。


「良かった! 嬉しいよ。最近では、剣の練習やエウレカ帝国祭の準備とかで忙しかったんだよ……。それに、半年後には、聖クライヘブン学院の入学試験があるよね? そこに向けて、勉強もしていたんだ。フィオーレも学院に行くだろう?」


 失念していた…………。

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