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1話 ふと気付いたら……

――――――――――――――――――――――――


 その瞬間、私はベッドから飛び起きた。


 「夢?」


 私は、首が繋がっていることを確認しながらそう呟いた。

 夢にしては、やけにリアルで生々しい感覚があった。

 そして、首をなぞる手を見て違和感を覚える。

 本来の自分の手よりも小さいことに気が付いた。

 その状況に驚きつつも、備え付けの鏡の前で自分の姿を確認した。

 そこで、現実だとは思えないような事が起こっていることに気が付いた。

 私の姿は、なんと子供の姿であった。

 私の長かった金髪の髪も、今は背中くらいの長さとなっていた。

 だが、これは他の人間という訳でもなく昔の姿そのものであった。

 自分の姿を見てふと思い返してみることにした。

 切断される刹那の間に、ピッグ様のお姿を見たような気がした。

 もしかすると、私の願いを汲み取ってくれてもう一度だけ人生をやり直せるチャンスを与えてくださったのかもしれない。

 その時、懐かしい声が聞こえた。

 その声を聞き涙が溢れ出そうになるのを必死に堪えた。


「おはようございます、お嬢様。今日は、私が起こさずとも起きられたのですね!」


 彼女は、私の専属侍女・リリスだ。

 最後まで、アルセナーリナ家の無実を証言して断頭台の露と消え去ってしまった者のうちの一人だ。


「おはよう、リリス。私だっていつまでも一人で起きられないだなんて恥ずかしいもの」


 そう言いつつハッと気が付いた。

 私は、処刑からどのくらい前に戻って来たのか確認をしていなかった。

 だから、今が何年のいつなのかを確認しなければならなかった。


「ところでリリス。今日って何年の何月何日だったかしら?」

「今日は紅暦2201年の4月28日ですが……どうされたのですか?日にちを忘れてしまうだなんてお嬢様らしくないですよ」


 紅暦2201年……私が処刑される10年前という事……になる。

 それならば、現在私の歳は12歳という事になる。

この日は、たしか初めてマルエラ・シェスタールと出会う日だった気がする……。

 昔のこと過ぎて記憶は曖昧であるが……。

 

 「あははは……私だってうっかりする事くらいあるわよ!」

 「そうですか? それならば、良いのですが……」


 リリスとそんな他愛のない会話をしながら食堂へ向かった。

 食堂の扉を開くとそこにはお父様が既に座っていた。


 「おはようございますお父様」

 「おはよう、フィオーレ。今日は朝早く起きられたのだな」


 お父様とは、斬首刑に処される前に少し顔を見れた程度で会話など出来なかった。

 お父様とまた会え、こうやって会話出来る日が来るなんて思ってもみなかった。

 込み上げるものがあるけれどもそれを必至に抑える。

 昨日も会ったという感じを装い、なんとか言葉を紡ぐことに成功した。


 「私だって起きようと思えばこのくらい余裕です。ところでお母様は?まだ起きていらっしゃらないのですか?」

 「いや、今日はお客さんが来るからね。先に食べて今は迎える準備しているよ」

 「あら? そうなのですね! お母様が迎える準備をするだなんて……お相手は何方なのですか?」


 今日、家に来るのはシェスタール伯爵一家に決まっている。

 うろ覚えであるが、昔を思い出しながら出来るだけ過去と相違ない会話を心掛ける。


 「シェスタール伯爵一家だ。今日は娘のマルエラ嬢も来るらしい。フィオーレ、お前と同じ年の令嬢だから仲良くしてあげると良い」

 「まあ! 私と同じ年なのですね? もちろん、仲良くします! 楽しみですわ〜どんな子なのかしら……」


 スザクに毒を飲ませアルセナーリナ家に汚名を着せ滅門に追い込んだあの女には、それ以上の苦痛を与え断頭台に送り込まないと気がすまない。

 お父様は、そんな私の気持ちに気付くはずもなく笑顔で答えた。


 「フィオーレならきっと仲良くなれるさ」


 そう言いお父様は席を後にした。

 私は、久しぶりに食べる豪華な食事を味わいお母様を手伝いシェスタール一家を迎え入れる準備をする事にした。



――――――――――――――――――――――――


 そして、待ちに待っていたシェスタール伯爵家が到着する時刻となった。


 私たちが外へ出た時ちょうど馬車が来た。

 御者が馬車の扉を開けた時あの忌々しい顔が見え顔を顰めそうになったが我慢した。

 お父様は、シェスタール伯爵の姿を観て直ぐに挨拶をした。


 「ようこそ、いらっしゃいました。お待ちしておりましたよ。シェスタール伯爵」

 「こちらこそ、お招きいただき感謝申し上げます」


 そう社交辞令を言い終えた後、シェスタール伯爵が娘の紹介を始めた。


 「娘のマルエラです。マルエラ、アルセナーリナ伯爵に御挨拶を……」

 「はい、お父様! 本日はお招きいただきました事誠に光栄に思います。シェスタール家のマルエラで御座います」

 「初めまして、マルエラ嬢。こちらこそ、遠方からわざわざ来てくれてありがとう。マルエラ嬢はしっかりしているのですね。娘にも見習って貰いたいくらいです。紹介が遅れました。こちらは私の娘フィオーレです」


 お父様は、おそらく私がちゃんとした挨拶が出来ないだろうと思い挨拶をさせてくれなかった。

 仕方がないから挨拶がわりにお辞儀で挨拶を行った。

 マルエラの挨拶は完璧のように見えるが礼儀作法がまるでなっていない。

 お辞儀の角度も違うしスカートを上げ過ぎている為下品な感じに見える。

 12歳にまでなって、まだこんな挨拶の仕方だなんて笑い者にされても文句は言えないでしょうね。


 「そんな事ないですよ。私の娘もまだまだですよ。」


 その返答に困ったのか、伯爵は思ってもいなさそうな事を口にしていた。

 そんな会話をしながら応接室へ誘導した。

 本題に入るようなので私とマルエラは外で遊んでいるように言われ追い出されてしまった。


――――――――――――――――――――――――


フィオーレは、本当にピッグ様に回帰させて貰ったのでしょうか!?

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