24話 伯爵令嬢からのお誘い
「お嬢さん、また来てくれたんだね〜あの時の貴公子様も一緒じゃないか。それに、新顔があるね―」
「彼は、友人です。アップルキャンディを5ついただけますか?」
「友人ね? 銅貨25枚だけど…いつも買ってくれるからまけてあげるよ。10枚で良いよ〜」
「え!? 良いのですか? それだと、半額以下ですわ……エウレカ祭りの時もサービスして貰ったのに……申し訳ないですわ」
「そんな、気にしなくて良いのよ。前にも言ったと思うけど、おばちゃんイケメンに弱いのよー。貴公子さまもかっこいいけど、そちらの坊ちゃんもハンサムよね〜」
「え? あはは……」
リリスが、銅貨10枚を渡す。
「また、縁があったら来てちょうだいね〜」
「ありがとうございます」
「ありがとう。アップルキャンディの魅力には、貴女のおかげで気付けたよ!」
「こんな素敵で格好良い子に言われたら嬉しくなっちゃうわ〜」
アップルキャンディのお店から離れると、スザクが口を開いた。
「う〜ん!! やっぱり美味しいね! アップルキャンディ。前食べた時の味と全然変わらない……あのマダムは、凄いよね!」
「そうね! これで、3度目だけれどもどれも変わらず美味しかったわ。味が変わらないように作るのって大変そうよね〜」
「これが、アップルキャンディか。この、砂糖のコーティングもとてもいい具合だと思う」
「そう、ベルも気に入ってくれたようで良かったわ!」
アップルキャンディを食べ終わると、夕暮れ時になっていた。
「この後は、時間も時間だからベルを宮殿に送って帰りましょう。もう少し色々と周りたい気持ちもあるけれども、これ以上長居すると帰る頃には辺りが真っ暗になってしまうわ……」
「もうこんな時間か……フィーレ、今日は楽しかったぜ。……それに、宮殿までわざわざ送ってくれるなんて本当にお前は優しいんだな」
「そう、良かったじゃない! それで、楽しかったの後に何か言ったかしら? 声が、小さ過ぎて聞き取れなかったわ……」
「いや? 別に。お前には関係ない事だし」
「そう……なら、良かったわ」
私たちは、商店街を出て馬車へ向かった。
「悪いけれども、私は宮殿に入れないわ。門までの送りとなってしまうけれど大丈夫かしら?」
「ああ、十分だ」
スザクは、宮殿へ入れるだろうけれどもベルとの仲を考えれば中まで見送ろうとは思っていないのでしょうね。
馬車へ乗り宮殿へと向かう。
馬車からボウっと外を眺めていると、あっという間に宮殿へと着いてしまった。
「今日は、見送りまでしてくれてありがとう。また、エウレカ帝国祭で会おう!」
「ええ。楽しみにしているわ!」
挨拶を交わした後、ベルナルドは門番に事情を説明し中へ通して貰ったようだ。
中へ完全に入って行くのを見送り、アルセナーリナ邸へと進路を変更した。
暫く沈黙が続き、スザクが口を開いた。
「あれ……? ベルナルド皇子、今エウレカ帝国祭に参加するって言ってた?」
「ええ、そうらしいわよ?」
「あ……そうなんだ……話は変わるんだけど、ベルナルド皇子はどうしてエウレカ帝国に来たんだい?」
内密ではあるがスザクは口が硬い為、教えても良いだろうと思う。
「家出したらしく、皇后陛下のところに匿っていただくのが目的らしいわ。でも、これは秘密よ。公爵さまにも言わないでちょうだいね」
「うん。勿論だよ! でも、次のデートは二人で回ろうね」
「ふふっ…………分かったわ! 約束しましょう」
「約束だよ! はぁ…………思ったんだけど、ベルナルド皇子は、噂より直球で言って来る人なんだね。少し驚いたよ」
「そうね。貴方に対して、あそこまで言う人なんていないものね……」
スザクは、ベルが居たから緊張していたらしい。
話を終えて、10分後には馬車の中で寝てしまっていた。
彼が、人の前でこんなに無防備な感じになるのは珍しいと思う。
寝顔は、とても愛らしいように思える。
いつもは、凛々しく格好良いのに眠ると逆になるのは反則だ……!
彼が、人気になる理由も分かる気がする……。
それに、彼の顔は客観的に見てもとても整っているだろう……。
皆が好意を寄せるというのは、理にかなっている……。
私としては、複雑な気分だけれども……。
スザクの寝顔を見ていると、アルセナーリナ邸へ到着していた。
「スザク! 私の家に着いたわ」
「う〜ん……ヘンリー、もう朝かい?」
「スザク? 私は、ヘンリーさんではないわよ?」
「……はっ……あ……あれ? フィオーレ? いつの間にか寝てしまっていたみたいだね……ありがとう、フィオーレ。起こしてくれて」
「別に良いわよ。送ってくれてありがとう。スザクも気を付けて帰ってちょうだいね」
「うん。伯爵に帰りの挨拶をしたい気持ちは、山々なんだけどそうすると遅くなっちゃうからね。伯爵に宜しく伝えておいてくれるかい?」
「分かったわ。伝えておくわね。また、手紙を送るわ」
「ありがとう! 楽しみにまっているよ」
別れの挨拶をすると、馬車は出発してしまった。
私も疲れたため、自分の部屋へと戻る事にした。
「疲れたわね。リリスは楽しめたかしら?」
「お疲れ様です、お嬢様。はい、楽しかったですよ! お嬢様のご配慮で、こんな思いを出来るだなんて本当に幸せです。ただ、スザク公子様の執事のヘンリーさんは、お嬢様とベルナルドさまの事を終始睨みつけるような目で見ていましたよ。それが、気掛かりです……」
「はぁ…………彼は、いつもそうよ。シュタイン公爵邸でも、行くたびに棘のある視線を向けてきていたもの。今に始まったことではないと思うわ……」
リリスと話していると、机の上に手紙が置いてあるのに気付いた。
何処から送られてきたのか確認すると、ウィンザー伯爵邸からのようだ。
「……ウィンザー伯爵邸から私に手紙が届くだなんて初めてね」
内容を確認するとお茶会の誘いらしい。
ウィンザー嬢とそれほど仲が良いわけでもないのに誘ってくるだなんて……。
マルエラのパーティでの出来事を思い出す。
彼女は、おそらくスザクに好意を寄せているのだと思う。
そこから考えると、この誘いにはなにか意図があるはずよね……。
誘いを受けるか受けないか迷う。
彼女を観察する良い機会だと思えば前者を選ぶだろう。
「リリス、手紙の返事を書くから紙を用意してちょうだい」
「承知いたしました! あの……最近、お嬢様は手紙をお書きになられる頻度が高いですよね? 机の中に、手紙の用紙を入れておきました!」
確認してみると、本当に手紙の束が置いてあった。
「ありがとう、リリス! これで、いつでも書けるわ!」
「お役に立てたようでなによりです!」
紙を出し、返事を書く。
そして、リリスにウィンザー伯爵邸宛に手紙を出すように伝えた……。
ここで、3章は終わりです。
明日からは、4章に突入いたします!




