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4話 神との遭遇

「なんだかこういうのを観るのは初めてだからドキドキしてきたよ!」

「出店のこと? その気持ち分かるわ。準備ってあんな細かい所から始めるのね!」


 未知の世界に来た気分で、私とスザクは周りを見回していた。

 出店も話に聞いたことはあったが、実際に見るのと話で聞くのとでは全然違うと思う。

 話に聞くだけであれば準備の作業を省略して話すだろう。

 けれども、実際に見てみると準備という苦労の上で出店という物が完成するのだと改めて思う。


「今日は、初のデートなんだからフィオーレと沢山思い出を作って胸に刻みたいな!」

「ありがとう、スザク。その気持ちは私も同じよ。精一杯楽しみましょう!」


 そう二人で話していると、何処からともなく法螺貝を吹く音が聞こえた。

 もしかしたら、ピッグ様が関門を出発する合図かもしれない。


「この音……スザク、前に行きましょう! ピッグ様がお通りになるかもしれないわ!」

「え? よく分かったね! フィオーレ。今の音が合図だったのかな」

「昔から法螺貝は合図だって言うじゃない?」

「たしかに! その通りだね」

 

 そう言い、前に進み出てピッグ様がお通りになるのを待った。

 暫くすると、神殿へ先導する男性とピッグ様が見えてきた。

 ピッグ様が通過する時は、平伏するのが常識である為スザクと私はそれに倣う。

 ピッグ様が通過する時、なんとも不思議な気分に陥った。    

 やはり、神というものは存在するのだと改めて感じる。


『私を過去に戻してくださりありがとうございます。ピッグ様にもう一度与えられた、この人生悔いのないようにしますわ』


 そう密やかにお礼を心の中で言う。

 そして、ピッグ様は私たちの前を完全に通過して行ってしまった。


「凄かったね! ピッグ様って、やっぱり神様なんだな……厳格な感じがしたね」

「そうね。ピッグ様は本当にとても神々しかったわ」


 そう会話していると、出店が具材を焼き始めた。

 お祭りは、始まっていないがピッグ様が通り過ぎたから料理の下準備を始めたのだろう。


「フィオーレは、何食べたい? まだ、ピッグ様が神殿に着いてないから購入は出来ない筈だけど」

「焼き肉がとても美味しそうだわ。あと、ホットドッグなんかもあるのね。凄いわ! 私としては、スザクが一番最初に食べたい物から食べたいわ」


 そう言うと、スザクは食べたい物が沢山ありすぎて困ってしまったようだ。


「うーん……難しいなぁ。⁉︎ ねぇ、フィオーレ。あのお店のアップルをコーティングしてる食べ物ってなんていう名前か知ってる?」


 スザクが指差した方向に目をやると、確かにアップルの周りには透明な何かが付いていた。


「ごめんなさい、スザク……私にも分からないわ。お店の人に聞いてみる?」

「フィオーレでも知らないなんて貴重な食べ物なのかな?」

「私でも分からないことくらいあるわよ?ましてや、平民の食べ物なんて知らないもの」


 スザクは、私が何でも知っているのだと勘違いしていそうだ。

 そう思って貰えるのは、嬉しいが今のように答えられなければ恥ずかしいものね……。


「じゃあ、お祭りが開始したらあの未知の食べ物から食べてみよう!」


 スザクは、興奮しているようで私もなんだか楽しくなってきた。


「そうね。あれから、食べましょう!」


 ピッグ様の行進は遅かったため、まだまだ神殿に到着するまで時間があると思う。

 死ぬ直前にスザクと話せなかったため、こんなにスザクと話せるのは大事な時間だ。

 今日だけは、マルエラのことを考えたくない。

 スザクとの一分一秒を大切にするのが一番よね。


「すみません、これはなんていう食べ物なんだい?」


 そう考えていると、スザクが積極的に出店の店員に話しかけていた。

 スザクのあまりの格好良さについて、店員も思わず口に出していた。


「あら〜こんなイケメンな子に話し掛けられるなんて嬉しいわ― これは、アップルキャンディと言うのよ」

「アップルキャンディ……教えてくれてありがとう。このコーティングは?」

「砂糖を熱したものをアップルにつけて乾燥させるとこうなるの」

「へぇ〜凄いね! これ砂糖水なんだ……! 知らなかったよ」

「まだ、祭りは始まっていないけどこれ食べてみる? 君イケメンだから無料であげちゃうわ! そこにいる彼女さんと一緒に二人で食べたらどう?」

「え⁉︎ 良いのかい? でも、無料は流石に悪いからお金は払うよ」


 そう言いスザクは、巾着から金貨を2枚取り出し渡していた。


「金貨なんていただけないよ! これは、一個銅貨5枚だから……お金を払ってくれるんなら銅貨10枚で充分だよ」

「え? 銅貨? ちょっと待っててね……フィオーレ、銅貨今持ってないかい?」

「持っていないわ。手持ちは……金貨しかないのよ。申し訳ないわね。ヘンリーさんは、持っていないのかしら?」

「いや……最初、彼が銅貨を持ってこようとしていたから止めてしまったんだよ。どのくらいの、金額なのか分からなくて……銅貨を沢山持ち歩くなら金貨を何枚か持てば良いと思っていたんだ……」


 それにしては、ヘンリーが金貨をじゃらじゃらと持っていたように感じるが……。

 金貨しか持ってきていない私が言えたことではないけれども、スザクは金銭感覚が鈍いのかしらね……。

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