入学のために 1
俺は『マギア魔法学園』を受験することになった。
理由としては単純に魔法を使ってみたかったからである。
それだけならそこら辺の学校でも良かったのだが、頭の良いところのほうがこれからの人生で役に立ちそうだと思ったというのもある。
元は勇者になることが目標だったので、剣技だけは自信があるが、魔法はそんなに練習しなかったからな。
異世界に来てしまったのならできることは色々としておきたいしな。
そのためにも俺は勉強に励むことにした。
いわゆる過去問がこちらにもあったのでそれで勉強は出来るのだが、問題は実技試験だよな……
どうやら模擬戦をするらしいのだが、俺は剣のほうが得意だから、遠距離からやられる魔法とは相性悪いんだよな……
少しずつそういう戦い方にも慣れるために、とりあえず筆記を完璧にしておこう。
死ぬ前の知識が役立ちそうな試験だったから良かったものの、完全に知識問題だと詰んでたな。
俺は教員採用試験以来の試験勉強に取り組んだ。
それから何日か経ち、俺は筆記の方はほぼ完璧にまで仕上げることができたので実技の方に焦点を置くことにした。
まず前提として、相手は魔法を使ってくる。
だからこそ遠距離で戦うと圧倒的に魔法が得意ではない俺は不利になる。
俺は簡単な魔法なら使えるのだが、それだと射程で負けてしまう。
「そうなると一気に距離を詰める練習をするべき……か」
俺は一人そうつぶやいて、構えた。
知識として知っているだけなのだが、昔、剣道部の顧問の先生が足の付根を意識して踏み込めっ!って言ってるところを見たことがある。
確か人差し指と中指の間に力を込めてするんだったか。
「こうかっ!」
俺はすぐに実践してみたがうまく行かない。
いや、少しは速くなったのだろうがまだ遅い。
俺は1時間ほど試行錯誤してみたがそれほどうまく行かなかった。
「やっぱり教えてもらうのがいいよな」
俺はそう思い、"前"勇者の父に聞くことにした。
「なるほど……距離の詰め方を知りたいのか」
「はい。俺は短射程の魔法しか使えません。それで遠距離魔法に対抗するには一瞬で距離を詰めることが大事だと考えました」
「それなら喜んで教えてやる。裏の練習場に来なさい」
自分が壁にぶつかったとき、一人で考えるよりも誰かにアドバイスを貰ったほうがいいということを前世で何度も実感してるからな。
珍しく前世の経験が役に立ったな、と思いながら練習場に向かった。
そこには動きやすい服に着替えた父、ルーカスが立っていた。
「何を極めるにもまずは自分の体の構造を知ることが大事だ。自分の脚を通っている血の巡りを感じろ。筋肉の収縮を感じろ」
おおぅ……めっちゃ異世界っぽいな……でもやってみるか……
俺は父に言われたように目をつぶって足に意識を集中させた。
なんとなくだが意識はできた。……だけどまだ完璧ではない。
恐らく父が言っていることの足元にも及んでいないだろう。
「すみません父さん。一度お手本を見せてもらうことはできますか?」
百聞は一見に如かず、俺は一度見てみたいと思った。
「ああ、じゃあ今から向こうの打ち込み台に打ち込む。瞬きせずに見ていなさい」
「はい」
俺は元いた場所から一歩離れて凝視した。
次の瞬間、ルーカスの姿が見えなくなり、それと同時にルーカスがいた場所の地面がえぐれていた。
俺の頭がそれを理解するより前に打ち込み台に剣を打ち込むルーカスの姿を確認した。
「まじか……」
俺はその反応と同時にこの速さを欲しいと思った。
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