任命、そして
(予想以上にチートすぎんか……)
通常時の30倍でも異常なのに更に上乗せされるのかよ……
「おつかれ、サノス」
そうルーカスが言って、俺のことを労った。
「ところで、お前が授かった恩恵はどのような能力だったのだ?」
「えっ………とぉ」
俺はそのまま正直に答えようとしてやめた。
理由は分かりきっている通り、こんなチートをもらったと知られると色々面倒になりそうだからな。
どこにでも出兵させられる羽目になりそうだしな。
「無難に身体強化でしたよ。まぁ少し強めの……ですけどね」
俺は少しだけ嘘をついて答えた。
身体強化は凡庸的だし、若干の強化があってもバレはしないだろう。
「ほう……勇者としては文句はない恩恵だな」
「はい、運が良かったですよ」
とりあえずは誤魔化せてそうだな。
少しこの能力の強さを確かめたいところだが、守るべき対象がいないから今は我慢だな。
まあ、これを使わないでいられる世界が一番いいのだが……
儀式から5年が経って俺は成人となり、それと同時に正式に勇者に任命されることになった。
俺の住んでいるシャルーズを含む【マーマル王国】の王により、任命される。
そのため、俺はビシッとした服装に着替えて待機していた。
地球で言うとナポレオンが着てそうなイメージの服だな。
教師をしていた俺に「お前はナポレオンと同じ服を着ることになるぞ」とか言っても絶対に信用しないだろうな。
そんなどうでもいいことを考えるのをやめて、今日の流れを思い出した。
勇者が代々受け継ぐ聖剣を受け取ったらほとんど終わりだと聞かされている。
ちなみに親は2人ともシャルーズで待っている。
何もやらかさずに胸を張って帰ろう。
そこまで考えると、「サロス様。もうすぐ式が始まるのでこちらにお願いします。」と使用人らしき人物から言われた。
(いよいよか……)
そう実感して思った。
(もしかしてこれが終わったら俺ってすぐにパーティーとか組むんだよな……?てことは、異世界で学園生活できないの……?)
なんか……悲しくなってきたな……
特に滞ることもなく、式は順調に進行した。
次はいよいよ聖剣を受け取る最大の見せ場だ。
しっかりと両手で……絶対に落とすなよ……俺の手。
それは杞憂に終わり、国民に向けて俺が一言言う場面がやってきた。
『今、俺は勇者となり、これから国民の皆さんの安全を』
その時、『ドーーーン……』と、何かが爆発する音が聞こえた。
俺は護衛が動くより先にその音に向かった。
その瞬間、俺の中で何かが変わった。
本能的に能力が発動したことによる違和感だと思った。
(初めて使う場面がこんな時とはな……)
そんな事を思っても仕方がないので、普段の走る30倍の速さで民衆の間を走り抜けた。
その場にたどり着いた俺は騒動の原因だと思われる人物を見て凍りついた。
なぜならそこにいたのは
「……兄さん……?」
そう思ったのも束の間、兄さんは気づいたら俺の目の前に来ていて、俺が持つ聖剣を自分の胸、それも急所を外した場所に自分から刺した。
そこで俺は思い出した。
兄さんの能力、【超速移動】という能力を。
そしてこの騒動を起こした理由も分かった。
俺から刺されたと言い、勇者の名を剥奪するためだと。
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