死、そして転生
新作です!!
平穏な教師生活が崩れ去る音がした。
俺―――八神一が、いつもと変わらず数学の教師として教壇に立ち、授業をしているところだった。
ピンポンパンポン、と無機質なメロディーが鳴った。
(誰かの呼び出しだろうか)
俺はそう呑気に捉えていた。
しかし聞こえてきたのは耳を疑う事だった。
『敷地内に刃物を持った不審者が侵入しました。生徒の皆さんは落ち着いて、教師は生徒を守ってください』
放送では『繰り返します』と言っているが、一度聞こえた不安の残る情報を聞き、生徒の間に不安の渦が広がった。
「「「キャーーーーー!!!!!」」」
と、恐らく全部の教室から叫び声が聞こえた後、教師が生徒を落ち着かせるために声を出しているのが聞こえた。
だが俺はそれどころではなかった。
なぜなら先ほど腹痛でトイレに行った生徒がいるからだ。
それも女子だ。
恐らく放送が聞こえていたので、不安だろう。
「みんな!!俺はトイレにいる水上の所へ行ってくる!!俺が教室を出たら鍵を閉めて、慌てずに待っていてくれ!」
俺はそう言ってトイレへと駆け込んだ。
「水上!!俺だ!!八神だ!!聞こえたら出てきてくれ!!」
俺がトイレでそう叫ぶとすぐに一番奥の扉が開いた。
水上だ。
(良かった、無事だ!)
俺はすぐに側により、頭を撫でた。
「水上、急で悪いがここは安全とは言い切れない。だから急いで教室まで戻ろう」
水上は首を縦に振った。
俺は少しでも不安が和らげればと思い手を繋いで走った。
―――だが俺はここでいくつか間違った選択をしていた。
1つ、生徒のみを残して教室を離れた事。
2つ、その教室が階段から近いことを忘れていた事。
そのことが全て頭の中で繋がった俺は、最悪の事態を想定した。
もしかしたら教室に入る前に出くわしてしまうのではないだろうか。
そしてその予感は的中した。
階段を上りきった不審者は教師がいない俺のクラスの扉を開けようとしていた。
不審者は気配を感じたのか、扉を開けようとする手を止めた。
不審者のギラついた目がこちらを向いた。
そしてそのままナイフを振りかぶってこちらに走ってきた。
俺は、何としてでも生徒を守らなくては……!と思い、水上の前に立った。
ブシュッと皮膚が破れる音がした。
下を向くと根元まで刺さっているナイフが見えた。
そしてそれを抜こうとする不審者の腕。
俺は咄嗟にその手首をガッチリと掴み、2回目以降の攻撃をできないようにした。
どんどん血が出て、世界がゆっくりと見えてきた。
恐らく火事場の馬鹿力とはこのことなのだろう。
意識が朦朧としてきたが、手の力だけは全く抜けなかった。
不審者は段々と、焦りだし、ナイフを刺したまま逃げ出した。
だがその頃には応援が駆けつけており、逃亡は失敗に終わった。
そこまで見届けた後、俺はその場に倒れた。
直感的にこれはもう無理だなと、悟った。
水上がすぐに俺のそばに駆け寄り、何かを言っていたが、耳鳴りがすごくて、何も聞こえなかった。
俺は顔を青ざめながら、泣き叫ぶ水上に対して、
(これを間近で見てしまった水上のトラウマになりませんように……)
そう思いながら俺は命を落とした。
眩しい光をまぶたに感じた。
俺は目を開けると、どこまでも明るい空が見えた。
「ここがあの世かな?」
アニメで見たような風景だった。
(やっぱり死んだのか〜……教師になってまだすぐなのになぁ……)
俺はすぐに死んだことを察知して、落胆した。
(てかここって天国なのか?なんか奥にでっかい階段あるけど)
『聞こえますか〜?』
唐突に間延びした声がどこからか聞こえてきた。
周りを見渡して、声の主が分からず、気のせいかと思いもう一度前を向くと、先程までは無かった椅子があり、そこには、天使ですと、言わんばかりの羽と、神々しさの少女がいた。
「え、と……あなたは?」
俺は恐る恐るその少女に問いかけた。
『私は死者を導く神ですよ〜』
少女改め神様は、そう名乗った。
「なるほど……その……神様はいったいどうして俺の前に現れたのですか?」
『あ〜もう早速聞いちゃいますか〜?』
神様の喋り方がおっとりしているので、どうしても緩い雰囲気になってしまう。
『今のあなたには2つの選択肢があります〜』
「2つ?死んだのだから地獄か天国かってことですか?」
『違いますよ〜』
(違うのか?)
俺はそう疑問に思った。
が、そんなことはどうでもよくなる選択肢を提示された。
『人間として生まれ変わるか、異世界に転生するかよ2択ですよ〜』
俺はこの提案を聞いた瞬間、というかきっと誰もが思うことだろう。
(何言ってんの?この人)
と、素直に思った。
人間としてもう一度生きるか、異世界に行くか……
(恐らく異世界って危ないところだよな。漫画だったりアニメで見たことあるし。それなら人間と方が無難だよな……)
よし、決めた
「俺は人間に」
『あ、言い忘れましたが、今ならチート能力も特典で付いてきますよ〜』
「異世界に行きまーす!」
そうして俺は異世界に行くことになった。
その頃、地球でいうところの異世界にある都市、【シャルーズ】では、勇者の名を継ぐマーロン家に新しい命が宿った、というニュースで持ちきりになっていた。
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