8.船を求めて
港に来た俺たちだったが、何だか様子がおかしかった。
町での活気はこちらでは感じられなかった。
そして、そこには人だかり。
俺たちは人だかりに近づき話を聞いてみた。
「あの、どうかしたんですか?」
サラが真っ先に一人のおじさんに聞いた。
「ん?あぁ、何でか船が無くなっちまってね」
「船が無くなった?!」
船が無くなるとはどういうことだ?
波にでも拐われたとかじゃないだろうな。
「聞く話によると、船員が皆町に出掛けてたときに女の子が乗ってったとか…」
「はぁ?見張りはいなかったのかよ?」
「居たみたいだけど眠ってて、いや、正確には眠らされたのかもしれない」
何だよそれ、眠らされたのかもしれないって、……ん?かもしれない?
「かもしれないって、どういうことだ?」
「いや、その見張りのやつのそこんとこだけの記憶がなくてな」
記憶がないだと?
記憶を消されたとでも言うのか?
もしかして、サラの記憶喪失と何か関係が?
さらに女の子だと?
もしかしたらあの盗賊女かもしれないな。
何だかすんなり情報ゲットしちまったな。
「早く追いかけよう!」
「でも船が乗ってかれちゃって、今は他に無いみたいだよ」
「え…、マジかよ…」
グレンの言葉に俺は肩を落とした。
くそっ、せっかく情報をゲットしたというのに。
「何か、他に海をわたる方法は無いのか?」
「あるっちゃあるよ、少年」
すると俺にいきなり知らないじいさんが話しかけてきた。
「本当かじいさん!どんな方法なんだ!」
「それはのぅ、わしについてくれば教えてやろう」
そう言うとじいさんは歩き出した。
「行くぞ!二人とも」
「あ、ヤス待って!」
「どうするんだろう?」
その時グレンは他の人々が不安そうな顔をしているのに気付いていた。
俺たちはじいさんについていくと、港町の外れにある小屋に連れてこられた。
どうやらこのじいさんの家らしい。
俺たちは小屋に入った。
「まぁ座んなされ」
「は、はぁ……」
俺たちは座った。
おじさんはお茶を入れている。
おい、お茶なんて良いから早く教えてくれよ。
「あ、あの。海を渡る方法って何なんですか?」
「ん?あぁ、それはのぅ、わしの船で渡るのじゃ」
「じいさん!船を持ってるのか?!」
「あぁ、持っているとも」
じいさん、あんたって人は何て良い人なんだ。
「これで何とか海は渡れそうだね!……ってグレン?」
サラの言葉を聞きグレンを見ると、不安そうな顔をしていた。
「あの、貸してくれるんですか?」
グレンがじいさんにそう尋ねた。
「あぁ、貸してやる」
「グレン、何て顔してんだよ~。じいさんの好意ありがたく貰っとこうぜ」
「あ、あぁそうだね」
グレンは笑ってそう言った。
しかし、すぐに表情が戻る。
グレン、どうしたんだ?
「じゃあじいさん、船は何処にあるんだ?」
「まぁそう慌てない。こっちじゃ」
そう言うとじいさんは小屋を出ていく。
俺たちも続いていった。
じいさんについて行くと小屋の裏には小さな船着き場があった。
しかし、俺は目を疑った。
「あ、あのぅ。あれは何ですか……」
「何って船に決まっておろう」
「どこをどう見れば船に見えるんですかっ!」
そう、俺たちの目の前にあったのはぼろぼろになった船、いや、水に浮かぶ屍とでも言っとこうか。
「じいさん、一体どういうことだよ」
「わしゃあ嘘はつかんぞ。その船を直したら使ってよいぞ」
「それって……」
そうだよな、上手い話なんかそうそう無いよな。
しかし、騙された感があるよな。
もしかして、さっきのグレンの表情、薄々感じてたって訳か。
俺はサラとグレンを見た。
サラはヤル気満々、グレンも笑っている。
「仕方ない。分かったよ、俺たちが直すよ」
「そうかそうか。じゃあ早速だが材料調達からよろしくな」
そして俺たちは船の修理を始めた。