7.いざ港町へ
「ここは何なんだ」
「何って街道だけど」
俺の独り言にグレンが突っ込む。
「いや、そうじゃなくて…」
俺たちは村を出て、次の町に向かう街道を歩いていた。
なんでもグレンが言うに、その町は港町らしく、俺は話でしか聞いたことのない港町にテンションが上がっていたのだが、今俺はイライラしていた。
何故かって?
「何でこんなにビバッチがいんだよ」
「ビッ!」
俺は鉱山で拾った騎士団の剣の鞘でビバッチを払っていた。
「でもビバッチは魔物だけど人にはあまり襲ってこないから大丈夫だよ」
グレンはご丁寧にビバッチを跨ぐ。
つか、それって魔物って言うのか?
「この動物可愛いね!」
「ビッ、ビー!」
サラはビバッチを抱き抱えていた。
よっぽど強く抱き締められてるのか。
……ビバッチが嫌がってる。
「サラ、仮にも魔物だ。いつ襲われるか分からないから放しとけよ」
「えぇ、こんなに可愛いのに」
……ごめん、俺には可愛いとは思えない。
前に追いかけ回されたしな。
「大丈夫だよ。巣を荒らしたり食料を取られたりしない限り襲ってきたりしないから」
あのなぁ、グレンそんなこと言うなよ。
俺はな、実は何故か苦しんでるビバッチのためを思ってだなぁ…。
「あ」
「あ?どうしたんだヤス?」
「レベルが上がった」
「おめでとう」
「ありがとう」
ビバッチを払ってたら経験値を貰ってたみたいだ。
って、なんという話をしてるんだ俺は。
「にして凄いよねビバッチは。木も登れるし、川も泳げるし」
「ん?川も泳げるのか?」
「あぁ、水掻きがあるしね」
……………。
じゃああの時のビバッチは一体何なんだったんだ?
「ビー!」
「あ、待って何処行くの~」
こらこら。
村を出発し、ビバッチ街道(自称)を進んだ俺たちは港町に着いた。
「うわ~、凄い活気だな」
港町は祭りのように盛り上がっていた。
いろんな出店があったりして聞いてた以上の光景に俺はまたもや見とれていた。
「やっぱりここに来ると自分までテンション上がっちゃうなぁ」
「そうか、グレンは来たことあるんだもんな。」
「あぁ、ここリマーニは港町だけあっていろんな品物が揃ってるんだ」
なるほど、となると情報量も多そうだな。
あの盗賊女も見たやつがいるかもしれない。
「とりあえず、船のチケットを買いに行こう。港町を見て回るのそれからだ」
「あぁ、…ってサラは?」
「あぁ、サラならあそこだよ」
俺はグレンが指差す方を見た。
サラは人だかりのところで何かを見ていた。
「サラ、何見てるんだ?」
「あ、ヤス!何かの見せ物みたいだよ」
俺も覗いてみた。
えっと、見せ物って、ただ舞台の上で人が少し前屈みになって腿上げしてるだけじゃないか、しかもビバッチ似の奴が。
「えっと、船のチケットを買いに行くから行くぞ?」
「そうか~、残念」
サラ、何が残念なんだ…。
とまぁ、俺たちは港の方を目指して歩いていた。
「そういえば、船に乗って何処にいくんだ?」
「えっと、隣の大陸に渡って、その大陸で一番でかい街に行こうと思ってる。俺も行ったことは無いんだけど、何でも一年中、木が紅葉してて綺麗な場所みたいだ」
へぇ、そりゃ楽しみだな。
出来れば何の問題も無いときに行きたかったが。
そんな話をしてるうちに港にやって来た。
しかし、何だか人が集まってて慌ただしかった。
「何かあったのかな?」
「おいおい、また厄介事じゃあないだろうな」
サラは少し心配そうな表情をしている。
俺は嫌な予感がした。
「とりあえず、行ってみよう」
俺たちはその場所に急いだ。
一体どうしたのだろうか。