6.旅
今回の話から会話文を『』から「」に変更します。
ご了承ください。
「ふぅわぁ~……」
窓のカーテンの隙間から朝日が溢れている。
俺は背伸びをし、深呼吸。
「よし!」
サラの治癒術のお陰か今日はいつもより好調な感じがした。
受付に移動するとサラが椅子に座っていた。
「あ、おはよう!」
笑顔で挨拶をするサラ。
サラの笑顔を見るとこっちまで笑顔になりそうだ。
元気を与えてくれるとはこの事だな。
「おはよう、調子はどう?」
「大丈夫だって!心配しすぎだよ~」
サラと会話をしているとグレンとおばさんが受付裏から出てきた。
「やぁ、お二人さん元気かい?」
「おはよう、二人とも」
グレンもおばさんも元気そうで何よりだ。
「そう言えば、村にいた騎士団の連中は帝都へ戻ったみたいだねぇ。何だか昨日の騒ぎで負傷者がかなり出たんだとか」
なるほど、だから騎士の姿が見えなかったのか。にしてもだらしねぇ。
まぁ新米騎士も居たみたいだし、ここの騎士団は全体的にも下級クラスってところか。
「ところで、あんた達はどうするんだい?」
「あぁ、そう言えばそうだな。サラはどうするんだ?」
「私?私は…旅に出ます」
「旅って、一人でかい?!」
おばさんは驚いていた。
「はい。私思ったんです。旅に出ていろんなことを経験すれば記憶も思い出すんじゃないかって。何もしなかったら何も得られませんし」
サラは真面目な顔でそう言った。
「でも危ないわよ…」
おばさんは心配そうな顔をする。
やれやれ。
「あのおばさん、俺を忘れてませんか?」
「ヤス?」
俺はサラと目があった。
俺はニコッと笑う。
「サラは一人じゃないですよ、俺もいますし」
「ヤス?!……いやでも…、悪いよ」
「じゃあ一緒に行ってくれないかな?まぁ、俺も旅に出るつもりだったし。ほら、俺一人だと危ないじゃん?だからさ」
俺がそう言うとサラはクスッと笑った。
「…ありがとう!」
「決まりだな。まぁそういう訳だ、おばさん」
「まぁあなたが一緒に行くなら安心だわ」
おばさんは胸を撫で下ろした。
その瞬間、おばさんは何か思い付いたようだった。
「グレン!あんたもついていきなさい!」
「お、俺?!」
グレンは意表を突かれ驚いている。
「グレンにはこの村の人達を助けてもらった代表としてついていきなさい!」
「代表って、おばさん一体」
俺は問う。
するとおばさんは胸を張っていた。
「これでも村の長なんだよ」
グレンがそう言い溜め息を一回。
てかおばさん村長だったとはな、驚いたぜ。
「でも村が心配だ」
「大丈夫!村のことは心配しないで!当分騎士団も帰ってこないだろうし……多分」
おいおい、ちょっと心配だな。
グレン、こんなんで良いの…、
「分かった、俺行ってくる!」
って良いのかい!
「二人とも、俺も一緒に言っても良いか?」
「もちろん!」
もちろん俺も良いけどな。
「ありがとう!あ、そう言えば今さらだけど自己紹介してなかったね。俺はグレン、よろしく」
「ヤスだ、よろしくな」
俺とグレンは固い握手を交わす。
「良いねぇ~、これぞ男同士の青春だね!」
そう言われると何か恥ずかしいな。
「サラもよろしく」
「うん、よろしくね!」
サラとグレンも握手を交わした。
「そうだ!サラちゃん、ちょっとおばさんについておいで!」
おばさんはいきなりそう言うと、サラの手を掴んで宿屋の奥へと連れ込まれた。
…ついておいで?
とまぁ十分ぐらいしてサラとおばさんは戻ってきた。
「えへへ、似合うかな?」
サラはドレス姿から、何て言うんだろう?
動きやすそうな女性ものの服に襞状のミニスカートにスパッツとでも言うのか?
まぁそんな感じの服に着替えていた。
言葉で説明するって難しいな。
んで髪は下ろしていたのがポニーテールになっていた。
「あ、ああ!似合ってるよ!」
俺は見とれていて返事が遅れた。
「それって姉さんの服か」
グレンが言う。
姉さんが居たのか。
「娘は嫁に行ったのよ。んで服を置いてっちゃったからね。その服はサラちゃんにあげるわ。あとコレ」
おばさんはサラに魔術師が使う杖を渡した。
「これは?」
「昔、治癒術師を目指しててね。その時使ってたものよ。結局私にはセンスが無かったみたいでね。んで今はもう使わないからあげるわ」
「あ、ありがとうございます!」
サラは大事そうに杖を抱き抱えている。
「さぁ、私が出来るのはここまで。あんたたち、頑張んなさいよ!」
「あぁ、泊めてくれてありがと、おばさん。さぁ、そろそろ行こう!」
俺たちは宿屋を出た。
サラの記憶を戻すため。
今世界はどうなっているのかを見るため。
あと母さんの形見のことも忘れちゃいないぜ。
今ここから旅が始まる。