67.追行
雪がしんしん降る昼のアグライア。
サラの診察を終えて、一旦俺たちは外に出ていた。
さてと、どうするか。
皆も、考え込んでいた。
サラの脳にかかる霧。
優秀な医者が見たって言うのだ。
あるのは事実なんだろう。
「ロゴスは霧ってのは分からないのかい?」
「すいません、私にも分からないです」
グレンとロゴスの会話。
まぁ、分かってたら苦労しないよな。
とりあえず、ここには優秀な医者だけでなく学者もいるんだ。
まずは、いろいろ聞いたり調べていくしかないかな。
「なら早速行きましょう。案内します」
本当ロゴスは顔が広いな、助かるぜ。
「みんな……」
すると、サラが口を開けた。
「いろいろ迷惑かけて……。ありがとう」
申し訳なさそうにしゃべるサラ。
「気にすんなよ」
俺はその一言をサラに言った。
皆も同じだったのだろう。
サラに笑って見せていた。
それを見たサラも表情が徐々に微笑みに変わる。
俺はその表情を見て、絶対に治してやりたいと決心をした。
今まで以上に絶対に、ね。
と、その時だった。
「ビッ!ビ~!!」
「?!」
サラがびっくりする。
いや、皆もびっくりしていた。
今までおとなしかったビバッチが、急に態度一変、今までに無い鳴き声と共にサラの腕を払って逃げていったのだ。
唖然…………。
「一体どうしたのかしら」
セツナがサラに問った。
するとサラはポカーンとした表情から、
「分からない……、分からないけど」
と言った。
そして次の瞬間、
「ついて来いって……」
と言い、いきなりビバッチを追い始めたのだった。
「お、おい!サラ!」
俺はサラを追いかける。
もちろん後から皆もついてくる。
本当突然、ついて来い……だと?
そして、街を飛び出したビバッチとサラは、分かれ道に着く。
するとビバッチは迷い無く右に曲がった。
右とは、まだ行った事の無い方面だ。
そう、アグライアから見て、左が雪原、俺たちが歩いてきた道だ。
では右は?
「右には何も無いはずですが……」
ロゴスが言う。
そして、ビバッチに続き、サラ、俺たちと走っていく。
静かに降る雪に気にも止めず、ひたすら俺たちは追った。
そして……。
「ビー!」
「え……?」
俺たちはサラに追い付いた。
サラはこれまたポカーンと口を開けて驚いていた。
何故か?
問うまでも無い、俺は分かっていた。
「あれぇ?ビバッチは?こっちに逃げたはずなのに」
ルミナが辺りを見回す。
しかし、見回しても意味は無い。
なんたって……。
「周りは岩壁ね」
そう、セツナも言った通り、俺たちは岩壁に囲まれた道の行き止まりに着いたのだ。
そして、ビバッチの姿が見当たらないのだ。
では逃げてきたビバッチは何処へ?
……皆はどうか知らないが俺は見えていた。
そしてサラも間近に見たであろう。
「サラ」
「……うん」
俺とサラは、行き止まりである岩壁に手を伸ばした。
すると……。
「……っな?!」
カエデがまるで怪奇現象を見たかの様な表情で驚いた。
……てか、その通りそうなんだけどな。
「……壁にめり込んでる?!」
そう、グレンの言う通り、俺とサラの腕は岩壁をすり抜けていた。
「ヤス?!」
「あぁ、奥に何かあるみたいだな」
俺は頭も壁に入れ、中を確認した。
そこにはまだ道が続いていた。
そう、ビバッチはここを進んでいったのだった。
何のためらいも無く普通にすり抜けていったビバッチ。
これは何かあるかもしれないな。