65.雪原を抜けて
地面が光の反射でキラキラ光っている。
まるで一面が宝石のようで綺麗だ。
「天気が良くて良かったです。吹雪なんて吹いていたら、たまったもんじゃありませんからね」
地面にしゃがみ、雪を手に取りながらロゴスは言った。
吹雪か、体験したことないからよく分からないが……、ただでさえ寒いんだ。
こんなところで雪が物凄い勢いで吹いたら相当寒いんだろうな。
「寒いだけじゃありません。前は見ずらくなりますし、ここの吹雪は結構痛いです」
「痛い……のか?」
ロゴスは俺の問いに微笑みながら頷いた。
周り一面が雪景色。
そう、俺たちはベリタス橋を渡りきり、雪原へ進んでいた。
真っ白な世界に俺は心を奪われ感動したが、それより何と言っても……。
「ささささ、寒いぃ~」
カエデ、ナイスタイミング。
そう、さっきも言ったが寒い。
めちゃくちゃ寒いのだ。
例を上げるとあれだな。
バナナで釘が打てるだとか、濡れたTシャツを振り回すとカチンコチンに凍ってしまうぐらい寒いのだ……って。
「イテッ!何すんだよ」
俺の後頭部は雪まみれになっていた。
すかさず振り向くと、ロゴスがニッコリ立っていた。
…………お前だな。
「雪合戦です」
はぁ?いきなり何なんだ?
「ここに住む子供たちの遊びの一つです」
雪合戦……、雪をぶつけ合う遊び。
てか、そんなのはどうでもいい。
「雪合戦は良いから早くアグライアに行こうぜ」
「そうですか、残念です」
おいおい、やるつもりだったのか?
今こんなところでやっても、慣れない俺たちは楽しめないぞ、きっと。
寒さに堪えるのだけでも精一杯だからな。
「じゃあ、アグライアに行きましょう。付いてきてください」
ロゴスは言った。
そうそう、早いところアグライアに行って暖まりたいぜ。
その後、魔物との戦いを交えながら、順調に雪原を進んでいく俺たち。
途中、カエデの忍術やロゴスの火の魔術で暖まるなどして休憩を取るという方法は画期的であった。
おかげで、かじかんでいて上手く剣を握れなかった手もなんとか大丈夫だった。
そして今だが、俺たちは雪原を抜けて、一本道を歩いている。
この先に左右の分かれ道があり、右に行って少し進めばアグライアに到着するらしい。
「あともう少しの辛抱です。皆さん頑張ってください」
ほらね。
とりあえず、魔物と雪と寒さに体力も結構やられたぜ。
休みはちょこちょこ取っていたが、やっぱりちゃんとした場所で休みたい。
それが、今の望みかな。
それにそろそろ夕方だ。
日が落ちる前に着きそうで良かったな。
暗い中、雪に囲まれてちゃあ、たまったもんじゃねぇしな。
とまぁ、いろいろ言ってるうちに分かれ道が見えてきた。
あぁ、本当何事も無くて良かったぜ。
「皆さん右です。行きましょう」
そして、俺たちはロゴスに続いた。
と、その時だ。
「ビー!ビー!」
「ビバッチちゃん?!」
サラとビバッチがじゃれあっていた。
「じゃれてるんじゃないよ!」
冗談だよ、サラ。
見ると、サラに抱き抱えられているビバッチが分かれ道の左に反応をしていた。
もう何も驚かない。
またいつもの駄々だろ?
早く静めてアグライアに行こうぜ。
「で、でもいつもと少し反応が違うような」
サラが言った。
そうか?……どれどれ。
「ビー!ビー!ビー!」
……いつもと変わらず『ビー』だけじゃないか。
気のせいだ、サラ。
「そうかな……?」
はぁ、仕方ない……、ほれ。
バシッ!
「ビッ?!」
「これで良いの?」
あぁ、良かったぜカエデ。
俺はカエデにビバッチを軽くどつかせた。
とまぁビバッチ、静かになったな。
「てか、何であんたの言うこと聞かなくちゃいけないのよ、まったく」
まぁまぁ、たまには良いじゃねぇか。
これで、アグライアに行けるってもんだ。
「終わりましたか?じゃあ行きましょう」
ロゴスが言った。
お願いします、ロゴス。
「う~、ビバッチがかわいそう……」
サラ……。
とまぁ、というわけでその後、俺たちはアグライアに着くのであった。