61.再び砂漠へ
娯楽施設の中は、前に言った通り大浴場やプールの他に、マッサージや飲食店、宿泊所等があり、とても有意義な時間を過ごせた。
そして、みんなも好きなように時間を過ごし、満足のようだった。
しかしまぁ、こんな良いところにこれから一年間無料で入れるなんて、改めて良かったなと思うな。
「楽しかったね♪」
「そうだね!」
ルミナとサラが話している。
因みに俺たちは今、宿泊所のロビーに集まっている。
「ヤス選手じゃありませんか?!試合観てましたよ!」
すると俺は受付の人にそう言われた。
俺も今じゃあ有名人?なんてな。
というわけで、今日はここで夜を明かす。
そして、豪華に一人一室、計七部屋を借りた。いつもはしないらしいが、俺が優勝したということで今日だけサービスらしい。
何だか、ここまでされると申し訳ない感が有ったり無かったり……。
「何言ってんのよ。きっちり使わせてもらうわ」
カエデ……、これは俺の優勝のおかげでだなぁ……。
まぁ……、俺もきっちり使わせてもらいますけどね。
そして俺たちは、自分たちの部屋に入る前に、明日の事をいつもの様に話し合う。
そうした方が明日が早く動ける、普通の事だな。
そして、話し合いを終えた俺たちは、明日に備えて、借りた自分たちの部屋に入り、各自眠りに付くのだった。
そして、朝。
はてさて、娯楽施設で羽を伸ばした俺たちは、次の目的地である橋……、えっと。
「ベリタス橋です」
そうそうそれだ、ロゴス。
大陸と大陸を結ぶベリタス橋。
なんでも全長一キロメートルある橋らしい。
今から、そこに向けて出発ってわけだ。
「今回はシュキオンに来る時と違って、距離も短いですし楽だと思いますよ」
ロゴスがそう言った。
と言っても、進むのは砂漠。
行きで辛さを味わっているから、そんなこと言われてもなぁ。
「でも短いって言ってるしさ」
あぁ……えっと、あんまロゴスの言葉を鵜呑みにしない方が良いぞ、グレン。
「どうして?」
知りたきゃロゴスにどのくらいの距離か『詳しく』自分で聞いてみな。
すると、グレンはどういうことだろうという表情をし、俺に言われるがままロゴスに聞きに言った。
そして、帰ってきた。
「ヤスの言った意味が分かったよ」
やっぱりな。
グレンは眉を傾け微笑していた。
因みにどのくらいだったんだ?
「前の距離の4分の3です」
すると、聞こえていたのかロゴスがそう言った。
「ね?短いでしょう?」
ねっ……て言われてもなぁ。
確かに短いの意味は間違っちゃいないが……。
「まぁまぁ、ヤス!張り切って行こう?!」
サラはやる気満々に言った。
まぁ、そりゃ分かってんだけどな……。
そんな俺は、相変わらずの涼しい表情であるロゴスを一目見た後、ため息を吐いた。
そしてシュキオンを後に俺たちは砂漠を進み始めた。
「しかし、本当暑いわね……。プールが恋しい……」
おいおい、早いぞカエデ。
まだ少ししか進んでないのに。
「だって暑いもんは暑いんだから仕方ないじゃない!」
「カエデっち♪そういう時は楽しいことを考えると、案外乗り越えられるものなのだよ?♪!」
すると、うるさいカエデに対し、ルミナがアドバイスをした。
そういや、ルミナも暑そうにはしてるけど、皆程ではないよな。
「楽しいことを考えているおかげで、お姉さんは乗りきれているのだ♪」
楽しいことかぁ……、何だろう?
……闘技大会を越える楽しみはあるのだろうか。
「あぁ、もう!何か楽しいことが起きないかしら?!」
カエデはムカムカしていた。
てか、楽しいことを考えるんだろう?
起きたら苦労しない……って、
「うわぁ?!」
「ヤス?!」
近くに居たサラが声を上げた。
何故か、それは……。
「イタタタ……」
俺は何かがぶつかってきたことによって倒されていたからだ。
一体何がぶつかってきたのか……。
俺は確かめるべく後ろを振り返った。
すると、そこには物凄く懐かしい生物が居たのだった。
「ビー」
そうそう、そういう鳴き声……って。
「え…………?」
俺は目を疑っていたのだった。