60.闘技大会終了
「どうでしたか?初の闘技大会は?」
あぁ、世界にはいろんな奴がいるんだなと、改めて思った。
しかし、驚いたな。
まさか、ロゴスがバルディール本人を捕まえてたなんてな。
「いえいえ。まぁ私は最初見たときから分かっていましたけど」
言ってくれるな、まったく。
闘技大会が終わり、闘技場内の選手待合室でロゴスと話している俺。
因みに闘技大会は俺が優勝となった。
俺が倒した訳では無いんだけど。
だから、素直に喜べない自分が居るのだ。
「優勝したんですよ。もっと喜びましょうよ」
「からかってんのか?」
すると、俺の言葉に対しロゴスは笑って過ごした。
まぁ、そうだよな。
ロゴスは嬉しいだろうな。
トイレの個室に隠れていたバルディール本人を見つけて、魔術で半殺しにした後、警備に引き渡したんだもんな。
「大袈裟です。遊んであげただけです」
遊んであげた、ね。
噂によると、意識が飛んでいて、体からは煙が上がっていたと聞いたんだけどな。
「そうなんですか?」
白をきるロゴス。
……もう良い、ロゴスには勝てない。
とりあえず、今は疲れた、休みたい。
「そうですね。じゃあ、また後で。受付前で待ってます」
そう言ってロゴスは待合室を出ていく。
そして俺は、ロゴスが待合室から出ていくのを見送り、その後ソファーに座った。
そして待つのだ。
「何だろうな」
そう、優勝賞品をね。
「あ!ヤス~!」
お、みんな集まってるな。
手を振るサラに俺は手を振り返した。
「おめでとう、ヤス!良い試合だったよ」
サラがそう言ってくれた。
まぁ、やられてばっかだったけどな。
「良い動きしてたわ」
「あぁ、ヤスらしい戦い方だったよ」
「そうだね♪かっこよかったよ、ヤスっち♪」
セツナ、グレン、ルミナと、俺にそう言った。
てか俺らしい戦い方って……、どんなだ?
「ねぇ!」
すると、カエデが大きな声で俺を呼んだ。
……なんだよ。
「優勝賞品!どうだった?!」
……やっぱりな、聞いてくると思った。
「金目の物?!それとも賞金?!」
おいおい……。
とまぁ、隠す事や勿体振る事でもない。
見せましょう、優勝賞品はこれです!
「……こ……これは?」
「チケット?」
そう、サラの言う通り、『年間無料入場券』だ。
「何よ、金じゃない!」
……カエデ、さっきからお前はそれしか考えられないのか。
「ねぇ、入場って?」
「確かに、何処で使うんだろうか」
「あぁこれは、ここの娯楽施設等で使えるんだってさ」
俺はサラとグレンの疑問にそう答えた。
「何?その娯楽施設って?」
すると、セツナの疑問が上がった。
娯楽施設、それはここ闘技場内に設置されるもので、大浴場からプールまで充実した施設であるらしい。
普通だったらかなりの高額料金を取られるところを、この券でタダというわけだ。
まぁ、お得な券だな。
しかし、一つ疑問があった。
それは、娯楽施設『等』だ。
他に何処で使えるのか詳細が書かれていないのだ。
一体他に何に使えるのか……。
「まぁ、そんなことどうでもいいじゃありませんか」
「そうだよ、ヤスっち♪早速行こうよ、ね?♪」
ロゴスは微笑みながら、ルミナは目を輝かせながらそう言った。
……まぁ、今はどうでもいいか。
それに丁度よい。
この施設を使って、疲れた体を休ませるとしますか……。
そして、俺たちは今後に備え、皆で施設を使うことにした。
まぁ、みんな喜んでるみたいだし、なんだかんだ優勝出来て良かったな。
「ゴニョゴニョ……」
ん?この声は……。
その時、俺の近くでぼそぼそと声が聞こえた。
そして俺は声がする方をちらっと振り向いた。
すると、カエデが何かぼそぼそ喋っていた。
何だろうか?
俺は、意識して聞いてみた。
すると……。
「これを売ればお金になるんじゃ……」
………………。
あぁ……、これは……。
聞かなかったことにしよう……。