55.最も熱い街
「暑い」
…………。
「暑い」
……うるさい。
「暑い」
「あぁ~!言うな!」
俺は怒鳴った。
ヤバい、体力を奪われる……。
因みに暑い暑い言っているのはもちろん予想はつくだろう。
「暑い」
そう、カエデだ。
ロゴスの後に続き、砂漠を進んでいる俺たち。
目的地である村に行く途中の最初の難関だ。
暑い、そんなのは分かっている。
しかし、言うなよ、もっと暑くなる。
「皆さん、大丈夫ですか?」
清々しい顔で俺たちにそう聞くロゴス。
ってか、暑くないのかよ。
「暑いですよ。でも慣れてますから」
だよな……、そうだよな。
因みにロゴス以外全員バテバテだ。
汗も滝のように流れていく。
……まぁ、まだ汗が出てるだけましか。
これで汗が出なくなったら……。
……よそう、考えるのは。
「ロゴス、どっか砂漠に休憩するところは無いのか?」
俺は声を振り絞り、聞いた。
するとロゴスは、
「オアシスがあります」
と、言った。
……って、オ、オアシス?!
行こう!すぐに行こう!
「でも行きません」
「何で?!」
と、俺が言う前にカエデがロゴスにそう言った。
すると、
「遠回りだからです」
と、ロゴスは答えた。
遠回りって……、少し位良いじゃないか。
「オアシスに向かうより、シュキオンの方が近いです」
「……シュキオン?何だそれ?」
俺は問った。
「砂漠にある街です」
「街?!街があるのか?!」
「はい」
すると、ロゴスは微笑みながら肯定した。
おいおい、だったら遠回しな言い方するなよ!
「すみません。ただオアシスもあるって言っておきたかったのです」
…………。
そうか、分かった、もう良い、行こう、シュキオンへ。
とまぁ、少し気持ちが楽になったぜ……。
「まぁ、ここよりも熱いところですけどね」
……え?
微笑むロゴスが謎の言葉を発した。
そして、シュキオンとやらに向かって歩いていくと、
「見えてきました」
ロゴスの言葉通り、俺たちの目の前にでっかい建物が見えてきた。
あれは何だ?
「あの建物は闘技場です」
なるほど、闘技場かぁ……。
「闘技場?!」
俺は驚いた。
闘技場ってあの闘技場か?!
「はい。人や魔物と戦う闘技場です」
マジかよ、こんなところに闘技場があったなんて!
「ヤス?」
「何だか急に元気になったわね……」
俺は、サラとカエデのことを気にせず一人で盛り上がっていた。
闘技場……、噂でしか聞いたことがなかったが、夢に見ていた場所だ。
各地のいろんな奴らと戦う、それは俺も挑戦したいと思っていた。
そんな場所が今、俺の目の前にあるのだ。
興奮せずにいられるかって話だ。
「とりあえず、あそこで休憩しましょう」
もちろんだ、早く行こう。
そして、そんなこんなで俺たちはシュキオンに着くのだった。
「何だかお祭りみたいだね!」
シュキオンはサラの言う通り、人で賑わっていた。
何だかリマーニを思い出すな。
まぁ、また違う雰囲気だけど。
「あぁ~、暑苦しいわね。早く宿屋に行きましょう」
駄々をこねるカエデ。
まぁ、宿屋に行くのは賛成だ。
にして、いろんな人が居るな。
そして何と言っても……。
「ここに居る人は皆強そうだね」
「そうね、見た目、そして雰囲気が凄いわ」
グレンとセツナがそう言った。
さすが闘技場があるだけある。
「闘技場だけではありません。ここは砂漠の中の街。そんなところに来る人たちですからね」
なるほどな。
俺はロゴスの言葉に頷いていた。
暑さを忘れてしまうほど興奮してしまっている俺。
しかし、闘技場は一先ず置いといて、俺たちは真っ先に宿屋に向かうのだった。