53.目覚めた男
「……えっと」
戸惑う俺。
今、俺たちは眠っていた男と話をしている。
そう、彼は起きたのだった。
「この船を直していたんですよ」
彼はそう言った。
何だか突然だな。
あ、そういえば……。
「前に洞窟で会いましたよね?」
俺は彼にそう聞いた。
すると彼はすぐさま、
「ヒドラの時ですね」
と、答えた。
何処かで見たことあるなと思っていた。
そう、ヒドラに襲われた時に助けてくれた男だったのだ。
セツナの魔術を越えていると断言出来る程の威力を持った魔術を扱う男。
一体どの様な人なのかと頭の中で考えるが、とりあえず、そろそろ聞いときますか。
「ロゴスです」
彼はそう言った。
ここまで来たら聞くしかない。
そう、名前だ。
そして、とりあえず俺たちも自己紹介をする。
定番、いつもの流れだな。
「それで、船を直していたっていうのは?」
グレンがロゴスに聞いた。
「あぁ、船の底が傷付いていたものですから。それでは船が出せないでしょう?」
「それって」
ロゴスの言葉に俺は疑問を問い掛けた。
「実はですね、いろいろあって帰りの船賃が無くなってしまって。そしたらこんなところに船があって……」
あって……?
「これで地元まで帰ろうと思ったんですよ」
やっぱりそう来たか。
「あの~」
すると、サラが口を開いた。
「この船、私たちが借りているものなんです」
サラは申し訳なさそうに言った。
それに対してロゴスは、
「あなた方の船だとは知っています」
と言った後、
「大体予想はつきます。こんなところに船、ましてや人なんてそうそう来ませんからね」
と微笑みながらそう答えた。
…………って、ちょっと待て。
それを知ってて俺たちの船に乗っていこうとしたのか?
「それは違います。私は待っていたのです」
……え~と。
それは……一体?
「私は船の操縦が出来ません。ということは船を直すことが出来ても海に出ることは出来ない。そして、この船はあなた方の船」
「……、だから?」
「私が船を直す代わりに、あなた方に乗せてもらおうと思ったのですよ」
「はぁ?!」
思わず声を上げる俺。
俺たちに乗せてもらう……。
俺たちがここに戻ってくるかどうか定かではないのに待っていたというのか。
「いや、あなた方が帰ってくるって分かっていましたよ」
真面目な表情でロゴスは言った。
……まさか、超能力者か何かか?!
「何言ってんのよ」
カエデが俺に突っ込んできた。
……そんな真面目に突っ込むなよ。
「まぁそんなことは良いじゃないですか。こうしてあなた方は来たんですから」
真面目な表情から再び微笑みの表情に変わったロゴス。
何だかな、まぁ良いけど。
それで、簡単にまとめると、船は直したからロゴスの目的の場所へと連れていけと。
「そうです」
ロゴスは首を縦に振った後、そう言った。
まぁ、ちょうど良いか。
俺たちも逃げるところだったし、船も直してもらったみたいだし……、それに。
「ヒドラの時に助けてもらったしな」
「その様子だと、良いみたいですね」
「あぁ、お礼も兼ねてだ」
他の皆も異論は無かった。
となると早速、船を海まで運ばなくてはな。
「それなら、私にお任せください」
するとロゴスは、危ないからと俺たち全員外に出るようと言った。
そして、ロゴスも一緒に外に出てきた。
ロゴスは何をするんだろうか?
「こうするんです」
するとロゴスは、何やら詠唱を唱え始めた。
と、次の瞬間、船が宙に浮いたのだった。
俺たちはもちろん驚いていた。
そして、あっという間に船は海に移動したのだった。
凄い、どんな魔術だよ。
「ただ物を持ち上げて動かしただけですよ。何の実用性の無いただ疲れるだけの魔術です」
そういうロゴスは疲れてる風には見えないけどな。
「そうですか?」
まぁ、良いけどな。
とまぁ、これで何とか騎士から逃れることは出来そうだな。
そして、これも何かの縁だ。
俺たちはロゴスを加え、ロゴスが指定したまた新しい大陸に移動をすることになったのだった。