《第二部》52.ポジティブ
「もうすぐ船だな」
船を求め、洞窟の中を歩く俺たち。
因みに俺は、戦闘により意識が朦朧として、一回は地面に膝を付いたものの、今は正常を取り戻していた。
そして考えるのだ、さっきの俺の体にまとった光は何だったのかと。
『一撃で仕留める』
これは、俺が言っていた言葉だ。
そう、言っていたのだ。
自分の意思ではなかった。
そして、謎の生物を倒した技。
『光華迅捷斬』
光の如く、相手を斬り裂く技。
こんな技、俺は一度も使ったことはないし、知らない。
だけど、今では知っている。
なぜ俺は知っているのか?
光をまとった時……。
全てはあの時だ。
俺はどうしてしまったのだろうか……。
「ヤス?」
とその時、サラが俺の顔を覗いていた。
因みにサラは謎の生物に攻撃を受けていたのだが、軽傷で済んだみたいだ。
大事に至らなくて良かった。
「ごめんね……私のせいで……」
「大丈夫、サラのせいじゃないよ」
とりあえず、光の事を考えるのは辞めよう。
てか、強くなったっと思えば良いのか。
……まぁ、そんなことより今は船の状態や今後の事を考えなくちゃな。
「お、見えてきた」
グレンがそう言った。
そう、洞窟の出口だ。
……この大陸での初めての場所。
海岸に戻ってきた。
潮風が気持ちいい。
まぁ中には、『ベタベタするから嫌』とか言うやつが居るけどな。
誰とは言わないけど。
「お♪あれがヤスっちたちの船だね♪」
そう言ったルミナが船の元に走って行く。
「乗り上げただけで、ほとんど壊れてはなさそうね」
まぁ、セツナの言う通りだ。
船の中などは大丈夫そうだし。
問題は船の底の状態、そして……。
「てか、どうやって海まで移動させるのよ」
そう、今カエデが言ったように船の移動だ。
俺たちは全員で6人。
その内女性が4人。
男性6人でも普通に考えて大変過ぎる。
隠れたとしてもそんなに時間は無い。
……もしかして、港に行った方が良かったか?
「今さら何言ってんのよ、まったく」
カエデはそう言った。
まぁ、自分たちの船があった方がいろんなところに行けるからな。
ポジティブに考えよう。
と、その時だ。
「ヤスっち大変だよ!船の中に人が倒れてる!」
「……はぁ?!」
ルミナが船の上から俺たちに向かってそう叫んできた。
「人が倒れてるってどういうことだよ?!」
俺たちは急いで船に向かった。
そして、船の中に入る。
すると……。
「……………」
一室の中に男性が一人、背を向けて倒れていた。
「ねぇ……もしかして……」
サラが俺の腕を掴んでそう言う。
てかサラ、冗談はよせよな。
「よし、俺が確かめてくる」
俺は、腕にくっつくサラを離し、ゆっくり男性の元へ近づく。
……まさか、本当に……。
そう思いながら一歩踏み出した次の瞬間。
「うわっ?!」
背を向けて倒れていた男性が、いきなりこちらに体を返したのだった。
……ん?体を返した?
俺はよく耳を済ました、すると……。
「……おいおい」
俺は男性に近づき体を揺さぶった。
「ヤ、ヤス?!」
「ん?あぁ、大丈夫だよ」
怖がるサラにそう答える、そして俺は倒れてる男性に指を指し……。
「寝てる」
と苦笑いをして言うのだった。
どこかで見たことあるような……。
俺はそんなことを思いながら、その場で立ち尽くすのであった。