50.謎の生物
「よいしょっ…」
城の外に到着っと。
出てきた所はアーシャの言った通り、グラティアの門付近の壁であった。
俺は最後ということで、バレないように壁を閉める。
しかしまぁ、見ただけじゃあ本当分からないな、この隠し通路。
「遅かったね、ヤス♪待ちくたびれたよ♪」
「脱出したいと言ってた張本人のくせに、本当呑気ね」
ルミナはそう言った後、カエデが俺に対して愚痴っていた。
俺は軽く謝って、その場を軽く流した。
俺たちは門に近付き、辺りを見やる。
……門番は居ないみたいだな。
「これもアーシャの狙いだったりしてね」
グレンはそう言った。
本当、その通りかもな。
そして、ためらうことなくグラティアから俺たちは出ていった。
少し離れたリマーニ方面の街道。
全力疾走で逃げてきただけあって、俺たちは一息入れることにした。
さてと、とりあえず、この後どうするか……。
「別の大陸に行くのはどうかしら?」
すると、セツナがそう提案した。
てかセツナ、グラティアに残らなくて大丈夫なのか?
道場とかあるのに……。
「あぁ、修行の一環と考えれば大丈夫よ。それに……」
そう言ったセツナの視線は微かにサラに向いていたのが俺には分かった。
「まぁ、そういうことだから、気にしないで」
察したのか、セツナは微笑みながら俺にそう言ったのだった。
まぁ良いなら良いけどな。
とまぁ、話を戻してっと…。
確かに、この大陸に居たら捜しに来るかもしれない騎士たちに見つかって、城に戻されてしまうかもしれないからな。
「でも、今は夜中。大陸を渡ると言っても船はこの時間は出てないし……」
そこに、グレンの正論が唱えられた。
そうだよな、定期便に夜中の便は無いもんなぁ。
「しかし、だからと言って、朝まで待ってると言っても騎士に捕まってしまうかもしれないし……、難しいね」
グレンも俺と同じことを思っていた。
船かぁ……………って、ちょっと待て。
「じいさんから貰った船があるじゃないか!」「ゲンさんから借りた船はどう?!」
っと……、俺とサラの発言が重なった。
すると、カエデは俺たちの言葉に反応した。
「何々?あんたたち船持ってるの?」
「ん?あぁ、誰かさんが船を盗んでいってくれたお陰でな」
俺は、カエデの言葉に突っ掛かり、カエデの表情をムッとさせた。
てか、カエデが盗んだ船はどうしたんだよ?
「船?あぁ、陸地に降りた後、行方は分からないわ。多分、どっか海に流されちゃったんじゃない?」
おいおい、流されちゃったんじゃない……って。
リマーニの船乗りたち、同情するよ……。
「しかしまぁ、船があって良かったじゃない。じゃあ早速……」
「まぁ、船は壊れてるんだけどな」
「……はぁ?!」
カエデの言葉の途中に割って入った俺はそう言った。
そう、この大陸に来たとき、魔物に襲われて着陸に失敗し、浜に突っ込んでしまった時のあれだ。
「でも、船は壊れてても、隠れるには良いかも」
なるほど、そうかもな。
その後、サラの言葉にそう思った俺は、すかさず、船のところに行こうと皆に提案した。
そして、行く宛もない俺たちは反対する人も居なくヒドラの洞窟を通って向かうことにした。
そして、洞窟の入り口に到着した時だ。
「なぁ……、何だあれ?」
「さ、さぁ……」
俺とサラ以外の仲間も分からない。
宙に浮かぶ謎の物体、いや、生き物……か?
「気持ち悪いな……」
俺たちの前には謎の生物が洞窟の入り口を塞いでいたのだった。
おいおい、これじゃあ先に進めないじゃないか。
「何言ってんのよ。こんな奴、追っ払えば良いで…しょっ!」
すると、カエデは謎の生物に対してくないを投げた。
まったく、無理矢理だな。
とまぁカエデ、早くやっちゃってくれ。
「……あれ?」
ん?どうした?早く追っ払ってくれよ。
「当たらなかった」
「…何が?」
「くない」
見ると、くないは謎の生物の奥の岩壁に刺さっていた。
謎の生物は、未だにふわふわと宙を浮いていたのだった。