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49.隠し通路

トントン。


ドアをノックする音が真夜中の部屋に響き渡る。


ソファーから腰を上げた俺は、ドアを開けた。


「どうも~こんばんは。とりあえず中に入らせてもらうね」


小声でもよく聞こえる。

そう、ただいまの時間午前二時。

約束通り、アーシャが部屋にやって来たのだった。

部屋に入り、皆に軽く自己紹介をしたアーシャ。

そして、


「早速だけど、話は聞いてるよね?」


「あぁそれなら、全く内容が分からない謎の計画を俺がちゃんと伝えたぜ?」


「う、ごめんごめん」


アーシャは頭を掻きながら謝った。

そして、一回咳払いをして、


「それじゃあ、簡単にちゃんと説明するね」


と言った。

アーシャの思い付いた計画。

それは、


「隠し通路を通って城から脱出してもらいます!」


「隠し通路?」


アーシャはどや顔をしていた。

…えっと、確かに簡単に説明したな。

んで、隠し通路だって?

この城にはそんなものがあるのか。


「隠し通路だけあって、上の人たちは知らない通路なんだ」


へぇー。

……って、それだったら、俺たちが侵入するために使った地下水路を使って脱出しても良いんじゃないのか?


「あ~、ダメダメ。実はあそこも侵入者対策がされてるの。そこだとすぐバレちゃうよ」


「マジか?あ~、だから警備ロボットがあんなに集まってきたのか」


「……ってそこから入ってきたの?!」


驚くアーシャ。

因みに俺たちが侵入した時は、やはり騎士団長の演説中だったみたいだ。


とまぁ、今そんなこと考えてる時じゃないか。


「今この静まり返った城だったら警備は薄い。だからこの時間帯ってわけだな」


「そういうこと!」


「だったら早くその隠し通路を使って、城の外へ出ようぜ」


「準備は良いみたいだね。じゃあ周りに感づかれないように、静かに私についてきて!」


というわけで、午前二時計画開始だ。






アーシャに案内され、真夜中の城の廊下を出来るだけ物音を立てずに進む俺たち。

目的の隠し通路に向かって一直線だ。

その隠し通路だが、アーシャを含む一部の騎士たちで勝手に作ったもので、お偉いさんにバレないように城の外へ出る為だそうだ。

城の外には自由に出入りができないのが現状らしく、それを突破する隠し通路。

因みに、外へ何しに行くのかと聞くと「いろいろあるのよ」とはぐらかされた。

説明がめんどくさかったのか、それとも人には言えないことでもしてるのか。

とまぁそんなこと考えてるうちに目的の隠し通路に到着したようだ。

城の端のいかにも人があまり行き来しなさそうな場所。

俺たちの目の前には壁が広がっている。


「さてと、ここをこうしてっと……」


到着して早速、アーシャは壁を触り始めた。

するとどうだろう。


「ここだよ」


壁が動いて、奥には人が一人歩けるぐらいの幅の道が現れた。


「ここを通っていけばグラティアの街の門付近に出れるよ」


しかし、こんな道よく作れたな。


「あぁ、そこら辺はスルーね。いろいろと大変だから」


いろいろ……と?

……まぁ良いけど。


「というわけで、一番貰った♪」


すると、いきなりルミナが隠し通路を走っていってしまった。

おいおい、勝手に動くなよ……。


「ったく。じゃあ私も先に行くわね」


そして、そう言ったカエデが後に続いた。

その後は何も言わずアーシャに一礼をしたセツナとグレンが順に進み始めた。


「じゃあヤス、私も先に行くね」


そしてサラも皆の後を追っていった。

残りは俺だけ。

そして俺は進む前に、アーシャに聞くのだった。


「何で俺たちの為にここまでしてくれたんだ?」


すると、アーシャは少し間を開けて、


「……ヤスにはヤスの信念を貫き通してもらいたかったから」


と言った。

信念……、自分が正しいと思ったことか……。


「そして、今の私の行為も正しいと思った行為」


「……アーシャ」


「……って、こんなことしてる場合じゃないよ!ほら、早く行かないと脱出出来なくなっちゃうかもよ?」


そう言ったアーシャは俺を隠し通路へと肩を押した。

俺は振り返り、


「ありがとうな、アーシャ。いつか時間がある時にでもこのお礼はちゃんとするから」


と感謝の意を表した。


「うん!その時までに何か考えとくよ!そうだなぁ~、私には手が出せない物とか……」


「おいおい」



満面の笑みを浮かべるアーシャ。


その笑みに俺も笑う。

そして、俺は「じゃあな」と別れの挨拶をし、手を振るアーシャを背に皆を追い、隠し通路を走って進みだした。


何だか最後までアーシャにはすまなかった。


アーシャか………。



「さっきの言葉……冗談だよな……」



とまぁ、そんなこんなで城から脱出するのだった。







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